病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度改定】歯科3管理料の見直しと医療機関に求められる対応

令和8年度診療報酬改定では、かかりつけ歯科医による口腔機能管理を推進する観点から、歯科疾患管理料、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料の3つの管理料が見直されます。本記事では、個別改定項目「Ⅱ-3 かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価」に基づき、医療機関の経営層や実務担当者に向けて、改定の背景、3つの管理料の変更内容、そして医療機関に求められる実務対応を解説します。

改定の背景:診断はあるのに管理されない「埋もれた患者」の存在

今回の見直しの背景には、口腔機能発達不全症や口腔機能低下症と診断されているにもかかわらず、算定要件を満たさないために適切な管理を受けられない患者が多数存在するという課題があります。

NDBデータ(令和5年5月時点)によれば、小児においては、口腔機能発達不全症の病名で歯科疾患管理料のみを算定している件数が約13万件にのぼります。一方、小児口腔機能管理料の算定件数は約7,000件にとどまっており、診断件数と算定件数の間に大きな乖離が生じています。

成人や高齢者においても同様の構図が見られます。口腔機能低下症の病名で歯科疾患管理料のみを算定している件数が約7.7万件あるのに対し、口腔機能管理料の算定件数は約7,400件に留まっています。

医学的な必要性がありながらも、制度のハードルによって口腔機能に特化した管理が提供されていない現状を改善することが、今回の改定の主な目的です。

改定の内容:3つの管理料における変更点

今回の改定における主要な変更点は3つです。順に解説します。

歯科疾患管理料:初診月減額の廃止と90点への一本化

現行の歯科疾患管理料は100点ですが、初診月に算定する場合は所定点数の80/100(80点)に減額される規定がありました。今回の改定では、この初診月の減額規定が廃止され、初診月・再診月を問わず一律90点に変更されます。

点数の増減を整理すると、現行の初診月80点・再診月100点に対し、改定後は一律90点となるため、初診月は10点の増加、再診月は10点の減少となります。

この一本化により、受診月による評価の差がなくなります。在宅患者を対象とする歯科疾患在宅療養管理料にはもともとこのような減額規定がありませんでしたので、それと整合性が取れる形になります。

小児口腔機能管理料:2区分化と評価項目2項目該当への拡大

現行の小児口腔機能管理料は1区分(60点)ですが、改定後は評価項目の該当数に応じて2区分(管理料1:90点、管理料2:50点)に細分化されます。あわせて、対象患者の表現が「口腔機能の発達不全を有する18歳未満の児童」から「口腔機能発達不全症の18歳未満の患者」に改められ、病名に基づく管理がより明確になります。

現行では評価項目3項目以上に該当する患者のみが管理対象とされていましたが、改定後は2項目該当の患者も管理料2(50点)として算定できるようになります。具体的には、3項目以上に該当する者が管理料1(90点)、2項目に該当する者が管理料2(50点)の対象です。

情報通信機器を用いた場合の点数は、管理料1が78点、管理料2が44点に2区分化されます。

口腔機能管理料:検査実施の有無による2区分化

口腔機能管理料も小児と同様に、現行の1区分(60点)から2区分(管理料1:90点、管理料2:50点)に細分化されます。対象患者の表現は「口腔機能の低下を来しているもの」から「口腔機能低下症の患者」に改められます。

改定後の区分は、検査の実施状況によって分かれます。口腔細菌定量検査(2に限る)、咀嚼能力検査(1に限る)、咬合圧検査(1に限る)、口腔粘膜湿潤度検査、舌圧検査のいずれかを実施した患者が管理料1(90点)の対象となり、それ以外の口腔機能低下症の患者が管理料2(50点)の対象となります。

検査機器を持たない医療機関でも基本的な管理を提供できるセーフティーネットを広げつつ、客観的データに基づく管理にはより高い点数で誘導する設計です。情報通信機器を用いた場合の点数は、小児と同様に管理料1が78点、管理料2が44点です。

医療機関に求められる実務対応

今回の改定を踏まえ、医療機関には3つの実務対応が求められます。

第1に、問診フローの見直しです。小児口腔機能管理料では、評価項目の該当数によって管理料1と管理料2が分かれます。評価項目のカウント漏れがあると、本来算定できる患者を取りこぼすことになります。問診票や評価シートを見直し、すべての評価項目を確実に把握できる仕組みを整備することが重要です。

第2に、検査オペレーションの整備です。口腔機能管理料では、指定された検査の実施有無で点数が90点と50点に分かれます。検査機器が院内にある場合は、対象患者に対して確実に検査を実施するフローを構築することが収益化の鍵となります。検査機器が未導入の場合でも、管理料2(50点)として算定できるため、対象患者を取りこぼさない体制づくりが求められます。

第3に、レセプト事務の見直しです。歯科疾患管理料の90点一本化により、初診月の80/100減額処理が不要になります。レセプトコンピュータの設定変更や、事務スタッフへの周知を改定施行までに済ませておく必要があります。

まとめ

令和8年度改定における歯科疾患管理料、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料の見直しは、患者の医療へのアクセス拡大と、提供される医療の質の両立を狙った戦略的な変更といえます。医療機関においては、新たな算定要件を正確に把握するとともに、問診フロー、検査オペレーション、レセプト事務の3点について改定施行前に体制を整備することが求められます。

本記事で解説した内容の背景や、制度変更が現場に与える影響についてのより詳しい考察は、以下のLISTENエピソードでも配信しています。ぜひ合わせてお聴きください。 【令和8年度改定】歯科疾患管理料・口腔機能管理料の3つの変更点を解説