病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】地域包括診療加算等の見直し|対象患者拡大と認知症加算統合

令和8年度診療報酬改定では、地域包括診療加算および地域包括診療料について大幅な見直しが行われます。本記事では、改定の背景から6つの見直しポイントの概要、実務上の注意点までを解説します。

なぜ見直されるのか――ポリファーマシーと医療資源の偏在

今回の見直しの背景には、2つの課題があります。

1つ目は、多剤併用(ポリファーマシー)の深刻化です。高齢化に伴い、複数の医療機関から薬を処方される患者が増加しています。薬の多剤併用は、副作用による転倒・骨折や認知機能の低下を招くおそれがあります。医療は薬の足し算から引き算へと転換することが求められています。

2つ目は、医療資源の偏在への対応です。地方では医師不足が続いており、地域包括診療加算等の届出要件を満たすことが難しい医療機関も少なくありません。あわせて、エビデンスに基づく医療を推進するためのデータ収集基盤の整備も急務となっています。

こうした課題を踏まえ、今回の改定は「要介護高齢者への継続的かつ全人的な医療の推進」と「適切な服薬管理の実施」を2本柱として実施されます。

6つの見直しポイント

見直しの内容は、以下の6つに整理できます。

①対象患者の拡大――慢性疾患1つ+要介護でも算定可能に

従来の「6疾病のうち2つ以上」に加え、慢性疾患(脂質異常症・高血圧症・糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病)のいずれか1つを有し、かつ要介護被保険者等である患者が新たに対象となります。たとえば、高血圧症のみを有する要介護認定患者も算定できるようになります。

改定後は、「認知症を有する患者等」と「その他の慢性疾患等を有する患者」の2類型に分けて規定されます。「認知症を有する患者等」には多剤投薬の制限(内服薬5種類以下かつ向精神薬3種類以下)が課される点に注意が必要です。

②認知症地域包括診療加算・料の統合

認知症地域包括診療加算・料が廃止され、地域包括診療加算・料に統合されます。統合後は、患者の類型に応じた2段階の点数が設定されます。認知症患者への手厚い評価(旧加算と同等の点数)は維持されたまま、届出が一本化されます。

③連携薬局の24時間対応要件の緩和

院内で解熱鎮痛剤等の緊急処方が可能な体制が整備されていれば、連携薬局の24時間対応要件が免除されます。診療所(地域包括診療加算)だけでなく、病院(地域包括診療料)にも適用されます。

④認知症患者の診断後支援に係る案内の明記

担当医が地域包括支援センター等と連携し、ピアサポート活動や本人ミーティングなどの認知症診断後支援について、患者・家族に案内を行うことが「望ましい」旨が明記されます。現時点では努力義務ですが、次期改定での要件化の布石とみることもできます。

⑤薬剤適正使用連携加算の対象拡大

従来は入院・入所患者に限られていた薬剤適正使用連携加算(30点)の対象に、外来で他院に通院する患者が追加されます。他院へ処方内容を情報提供し、3月以内に薬剤の種類数が減少した場合、3月に1回算定できます。

⑥外来データ提出加算の新設と医師配置要件の緩和

外来診療データを継続して厚生労働省に提出する体制を評価する「外来データ提出加算」(月1回10点)が新設されます。また、医療資源の少ない地域では、常勤換算の医師配置要件が2.0人以上から1.4人以上に引き下げられます。

改定への対応に向けて

今回の見直しは、対象患者の拡大や要件の緩和など、実務上のインパクトが大きい内容です。算定対象の患者数が増加する医療機関も多いと見込まれます。具体的には、既存患者の中から「慢性疾患1つ+要介護」に該当する未算定患者の洗い出し、院内緊急処方体制の確認、データ提出体制の準備を早めに進めることが望まれます。

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