病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】時間外対応体制加算|名称変更と全区分での点数引き上げ

令和8年度診療報酬改定では、かかりつけ医機能の評価の一環として、診療所における休日・夜間等の対応体制に関する加算が見直されます。本記事では、名称が「時間外対応加算」から「時間外対応体制加算」へと変更され、全区分で点数が引き上げられる本改定の全容について解説します。あわせて、診療所が改定後に検討すべき具体的なアクションも整理します。

時間外対応体制加算とは|改定の全体像と3つのポイント

今回の改定の全体像として、主に3つの変更が行われます。1つ目の変更は、名称が「時間外対応加算」から「時間外対応体制加算」に変更される点です。2つ目は、加算1から加算4までの全区分で点数が引き上げられる点です。3つ目は、これらの変更により、診療所が休日・夜間の対応体制を整備する取組がさらに推進されることが期待される点です。

名称に「体制」という文字が加わったことで、改定の趣旨がより明確になりました。個別の対応行為だけを評価するのではなく、いつでも対応できる体制を整備していること自体を評価する方向性が打ち出されています。

改定の背景|なぜ時間外対応体制加算が充実されるのか

今回の見直しの背景には、休日・夜間における軽症患者の病院受診と、それに伴う病院勤務医の負担という大きな課題があります。

現在、軽症の患者が休日や夜間に病院の救急外来へ集中し、病院勤務医が疲弊している現状があります。この状況に対し、地域の身近な診療所が患者からの問い合わせや受診に対応する「防波堤」となることで、病院を受診する軽症患者が減少し、病院勤務医の負担軽減につながることが期待されます。

しかし、夜間も電話が繋がるようにするなどの体制整備には、診療所側にも相当なコストと労力が求められます。そこで、防波堤としての役割を担う診療所を支援し、体制維持を評価する仕組みとして、今回の点数引き上げが実施されることとなりました。

改定の具体的な内容|名称変更と新旧点数の比較

具体的な要件と変更点は、名称・点数・算定要件の3つに整理できます。

1つ目は、名称の変更です。「時間外対応加算」から「時間外対応体制加算」へと変更され、これは加算1から4の全区分に適用されます。

2つ目は、点数の引き上げです。改定前後の点数を以下に整理します。

区分 改定前(現行) 改定後(新) 増減
加算1 5点 7点 +2点
加算2 4点 5点 +1点
加算3 3点 4点 +1点
加算4 1点 2点 +1点

最も引き上げ幅が大きいのは加算1であり、最も手厚い体制を整備している取組を強く評価する意図がうかがえます。一方で、加算4は1点から2点への倍増となっており、より幅広い診療所の参加を促す意図があるとも考えられます。

3つ目は、算定要件です。対象医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長等に届け出た診療所に限定されます。算定のタイミングは「再診時」のみであり、初診時には算定できません。

診療所が検討すべき3つのアクション

改定を踏まえ、診療所が検討すべきアクションは大きく3つあります。第1に、自院の現在の区分における収益インパクトの試算です。第2に、上位区分への移行を検討するかどうかの判断です。第3に、名称変更に伴う事務手続きの準備です。

第1のアクションは、自院の区分と新点数の確認です。現在届け出ている区分を確認し、増点分(プラス1点~2点)が再診回数に応じてどの程度の収益増となるかを試算しておくことをお勧めします。たとえば加算1を届け出ている診療所であれば、再診1回あたり2点の増点が、月間の再診件数に比例して積み上がります。

第2のアクションは、上位区分への移行検討です。引き上げ幅が最大となった加算1の施設基準を満たすために、どのような体制整備投資が必要かを試算する価値があります。投資額と増収見込みのバランスを踏まえ、自院の体制を1段階引き上げるかどうかを判断する材料となります。

第3のアクションは、名称変更に伴う事務手続きの確認です。「時間外対応体制加算」への名称変更に伴い、地方厚生局への新たな届出や、院内掲示物の更新が必要となる可能性があります。各局の疑義解釈や通知が出るタイミングで、必要な対応を漏れなく確認しておきましょう。

まとめ|地域医療のバランスと診療所が取るべきアクション

令和8年度診療報酬改定における時間外対応体制加算の見直しは、診療所における休日・夜間の対応体制の整備を推進し、病院勤務医の負担軽減を目指す重要なアプローチです。

患者が支払うわずかな負担が、地域医療全体のセーフティーネットを構築し、医療崩壊を防ぐ土台となります。一方で、防波堤となる地域の診療所の医師に負荷が集中した場合のケアなど、地域医療全体のバランスをどう保っていくかという構造的な課題も残されています。

届出を行っている診療所は、名称変更に伴う事務手続きの確認を進めるとともに、本記事で示した3つのアクションを踏まえ、自院の体制整備のあり方を改めて検討することが求められます。

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