令和8年度診療報酬改定で、機能強化加算の施設基準が見直されました。点数は80点のまま変更ありませんが、届出を維持するための条件が強化されています。本記事では、改定の背景にある国の意図と、医療機関が今から取り組むべき実務対応を解説します。各要件の告示・通知レベルの詳細や対象となる区分番号の一覧は、メルマガで解説していますので、あわせてご参照ください。
- 機能強化加算の見直しの背景|なぜ要件が追加されたのか
- BCP策定|作成して終わりではない3つのプロセス
- 期限付き指定の除外|自院の所在区域を確認する
- データ提出体制の整備|努力義務の今が準備のタイミング
- 機能強化加算の見直し|今から取り組む3つのアクション
機能強化加算の見直しの背景|なぜ要件が追加されたのか
今回、機能強化加算の施設基準に追加されたのは、BCP(業務継続計画)の策定、期限付き指定診療所の算定除外、外来データ提出加算の届出の努力義務化の3点です。いずれも、かかりつけ医に対して従来よりも高度な役割を求める改定の方向性を反映しています。
BCP策定の義務化は、災害等の危機的状況下でも医療提供を継続できる体制を、個々の医療機関に整備させる狙いがあります。近年の自然災害や感染症の経験を踏まえ、地域の医療提供体制を途切れさせないための基盤づくりが求められています。
期限付き指定診療所の除外は、地域の医療ニーズに応じた連携体制を重視する姿勢の表れです。かかりつけ医機能の体制整備が適切に行われている医療機関のみを評価する仕組みが強化されました。
外来データ提出加算の努力義務化は、医療の質をデータで可視化し向上させるための布石です。現時点では「望ましい」という位置づけにとどまりますが、施設基準に明記されたことの意味は大きく、データに基づく医療の質の評価が今後さらに重視される方向性を示しています。
BCP策定|作成して終わりではない3つのプロセス
3つの変更点のうち、既届出医療機関が最も早急に対応すべきなのがBCPの策定です。
重要なのは、BCPは計画書を作成すればよいのではなく、策定・実施・見直しの3つのプロセスを継続的に回すことが要件とされている点です。厚生労働省の手引きを参考に計画を策定し、計画に沿った措置を実際に講じ、定期的に見直して改善するサイクルが求められます。
既届出医療機関には経過措置が設けられており、対応期限は令和9年5月31日です。改定施行日から約1年2か月の猶予がありますが、計画の策定だけでなく措置の実施と見直し体制の構築まで含めると、早期に着手する必要があります。
期限付き指定の除外|自院の所在区域を確認する
期限付き指定による算定除外は、該当する診療所が限定的であるため、多くの医療機関には直接影響しません。ただし、自院が「外来医師多数区域」に所在するかどうかは確認しておくべきポイントです。
外来医師多数区域に所在する診療所で、都道府県知事の要請や勧告に応じなかった場合、健康保険法に基づき最長3年の期限付き指定を受ける可能性があります。この指定を受けると、機能強化加算の算定対象外となります。自院が該当区域にある場合は、都道府県からの通知や連絡に注意を払ってください。
データ提出体制の整備|努力義務の今が準備のタイミング
外来データ提出加算の届出は、現時点では努力義務です。届出がなくても機能強化加算の算定に影響はありません。
しかし、施設基準に「望ましい」と明記されたことは、データ提出が今後の医療機関の評価において重要な指標になるシグナルです。準備には、電子カルテやレセコンの対応状況の確認、ベンダーとの協議、データの抽出・提出フローの構築といった作業が必要になります。義務化されてから慌てるより、努力義務の段階で体制を整えておく方が、実務的な負荷を分散できます。
機能強化加算の見直し|今から取り組む3つのアクション
今回の改定で追加された3つの新要件に対応するため、以下の3つのアクションを推奨します。
1つ目は、BCPのプロジェクト化です。厚生労働省の「BCP作成の手引き」をダウンロードし、院内の担当者を決めてください。令和9年春までの完成・運用開始をターゲットにスケジュールを組み、策定・措置・見直しの3プロセスを計画に組み込むことが重要です。
2つ目は、所在区域のステータス確認です。自院が外来医師多数区域に該当するかどうかを、都道府県の公表情報で確認してください。該当する場合は、期限付き指定のリスクがないか、あわせて確認します。
3つ目は、データ提出に向けたシステムの棚卸しです。外来・在宅データ提出加算の対象要件を確認し、自院の電子カルテやレセコンがデータ抽出・提出に対応しているかをベンダーと協議してください。
本件に関するより詳しい解説や、制度の裏側にある狙いについては、以下のLISTENエピソードでもお話ししています。ぜひお聴きください。 【令和8年度改定】機能強化加算に3つの新要件|BCP策定・期限付き指定・データ提出