病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】訪問看護管理療養費の見直し|機能強化型4新設・2軸マトリクス・施設基準撤廃を解説

令和8年度診療報酬改定では、訪問看護管理療養費が3つの方向で大きく見直されます。月の初日の評価充実、月の2日目以降の統合・細分化、施設基準の届出不要化です。本記事では、令和8年度診療報酬改定における訪問看護管理療養費の見直し内容を、改定の背景から経営者・管理者が押さえるべき視点まで解説します。

改定の背景:なぜ訪問看護管理療養費が見直されるのか

今回の改定の背景には、訪問看護現場の業務負担軽減と、持続可能な医療提供体制の構築という二つの課題があります。

24時間対応や重症患者の受け入れが可能な体制は、地域医療を支える社会インフラとして定着させる必要があります。一方で、日々の訪問業務には、スケールメリットを活かした効率化も求められています。今回の改定では、限られた医療資源を適切に配分しながら制度全体を長期的に維持するために、評価体系の再構築が図られました。

訪問看護管理療養費の見直し3つのポイント

今回の訪問看護管理療養費の見直しは、大きく3つのポイントに整理されます。

ポイント1:月の初日は機能強化型の評価を充実

月の初日の訪問看護管理療養費では、機能強化型1から3までの点数が引き上げられ、新たに機能強化型4が新設されます。

  • 機能強化型1:13,230円 → 13,730円(500円引き上げ)
  • 機能強化型2:10,030円 → 10,430円(400円引き上げ)
  • 機能強化型3:8,700円 → 9,000円(300円引き上げ)
  • 機能強化型4:9,000円(新設。詳細は改定項目「Ⅱ−5−2④」を参照)

一方、機能強化型以外の場合は、7,670円から7,680円への10円の引き上げにとどまります。この差は、質の高い訪問看護管理体制を持つステーションへの明確な評価メッセージといえます。

ポイント2:月の2日目以降は2軸マトリクスで細分化

月の2日目以降の訪問看護管理療養費では、現行の訪問看護管理療養費1(3,000円)と2(2,500円)が統合されます。新たな評価軸は、「単一建物居住者の人数」と「1月当たりの訪問日数」の2軸です。

  • 単一建物居住者が20人未満:訪問日数にかかわらず3,000円
  • 単一建物居住者が20人以上49人以下:訪問日数に応じて2,200円〜2,500円
  • 単一建物居住者が50人以上:訪問日数に応じて2,000円〜2,400円

訪問日数は「15日以下」「16日以上24日以下」「25日以上」の3区分で、訪問日数が多くなるほど点数が低くなる設計です。同一建物への訪問や頻回訪問による移動時間・事務コストの削減を、報酬体系に適正に反映させたものといえます。

ポイント3:月の2日目以降の施設基準は届出不要

月の2日目以降の訪問看護管理療養費について、これまで求められていた施設基準の届出が不要となります。

現行では、同一建物居住者の割合(7割未満・以上)の管理、別表第七・第八に掲げる疾病等の者への訪問看護実績、GAF尺度40以下の精神科訪問看護利用者数(月5人以上)の要件管理など、複雑な基準が設けられていました。これらがすべて削除され、月の2日目以降は届出なしで算定可能となります。

ただし、月の初日の機能強化型の評価については、引き続き施設基準の届出が求められます。事務手続きの完全撤廃ではない点に注意が必要です。

経営者・管理者が押さえるべき3つの視点

訪問看護ステーションの経営層・管理者には、改定内容を踏まえた具体的なアクションが求められます。

視点1:機能強化型への移行は経営の生命線

引き上げ幅が大きい機能強化型1〜4の取得・維持が、今後のステーション経営の生命線となります。月の初日における機能強化型1と機能強化型以外の点数差は、6,050円にまで拡大しました。機能強化型の届出要件をクリアする戦略が、これまで以上に重要になります。

視点2:患者層と訪問頻度のシミュレーションが急務

新マトリクスに基づき、自ステーションの患者構成と訪問頻度を当てはめ、収益への影響をシミュレーションすることが急務です。特に、単一建物居住者が多いステーションや、訪問日数が多い利用者を抱えるステーションは、収益への影響が大きくなる可能性があります。

視点3:解放された管理リソースを質の高いケアへ

月の2日目以降の届出管理から解放されたリソースは、月の初日の機能強化要件のクリアや、質の高いケア提供に再配分することが求められます。事務作業の負担軽減を、攻めの経営に転換する視点が重要です。

よくある疑問(FAQ)

Q1. 機能強化型4とは何ですか?

令和8年度改定で新設された4段階目の評価区分です。点数は9,000円で、月の初日に算定します。詳細な要件は、別途の改定項目「Ⅱ−5−2④」で示されています。

Q2. 月の2日目以降の施設基準は完全に撤廃されますか?

月の2日目以降については完全に撤廃されます。ただし、月の初日の機能強化型の評価については、引き続き施設基準の届出が必要です。

Q3. 同一建物居住者の「7割ルール」はどうなりますか?

月の2日目以降の評価における7割ルール(同一建物居住者の割合管理)は、今回の改定で削除されます。同様に、別表第七・第八の疾病実績やGAF尺度40以下の精神科利用者数の要件も削除されます。

Q4. 訪問日数が多いほど点数が低くなるのはなぜですか?

同一建物への訪問や頻回訪問では、移動時間や事務コストが軽減されるためです。スケールメリットを報酬体系に反映させた設計といえます。

まとめ:高度ケアへの投資・訪問効率の適正評価・事務負担の軽減

令和8年度診療報酬改定における訪問看護管理療養費の見直しは、3つの明確な方向性を示しています。3つの方向性とは、高度なケア体制への重点的な投資、訪問効率の適正な評価、事務負担の大幅な軽減です。

医療機関や訪問看護ステーションの経営層・実務担当者には、改定内容を正確に把握し、自施設の運営方針や人員配置の見直しに反映させることが求められます。特に、機能強化型への移行検討と、新マトリクスに基づく収益シミュレーションは、早急に着手すべき優先課題です。

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