オンライン診療で電子処方箋を発行すると、令和8年度診療報酬改定から新たに点数を算定できるようになります。それが今回新設される「遠隔電子処方箋活用加算」です。この記事では、加算を算定するための具体的な要件と、医療機関がつまずきやすい実務上の注意点を中心に解説します。
なお、本テーマはポッドキャスト番組LISTENのエピソードでも取り上げています。耳で確認したい方は、あわせてご利用ください。
- 遠隔電子処方箋活用加算とは|月1回10点を加算
- 新設の背景|利便性の向上と処方の質の評価
- 算定要件|3つの要件をすべて満たす
- 施設基準と届出|算定の大前提となる体制
- 算定の注意点|引換番号付きの紙の処方箋は対象外
- まとめ|算定に向けた準備のポイント
- よくある質問(FAQ)
遠隔電子処方箋活用加算とは|月1回10点を加算
まず加算の全体像です。遠隔電子処方箋活用加算は、情報通信機器を用いた医学管理等を算定する患者に対し、オンライン診療で電子処方箋を発行した場合に算定します。点数は10点で、同一患者につき月1回が上限です。対面診療は対象に含まれず、オンラインで医学管理を受ける患者に限られる点が特徴です。
新設の背景|利便性の向上と処方の質の評価
この加算は、2つのねらいから設けられました。利便性の向上と、処方の質の評価です。
利便性の面では、処方箋のやり取りにかかる手間が減ります。これまでのオンライン診療では、処方箋の原本を患者へ郵送したり、希望薬局へFAXで送ったりする作業が発生していました。電子処方箋を使えば、こうした紙の送付が不要になり、患者と医療機関の双方で事務負担が軽くなります。
処方の質の面では、安全性の高い処方を後押しします。電子処方箋システムを使うと、他院分を含む最新の薬剤情報を確認できます。その情報をもとに重複投薬等のチェックを行えば、重複処方や危険な飲み合わせを避けやすくなります。本加算は、こうしたチェックを伴う処方を診療報酬で評価するものであり、単なるペーパーレス化への評価ではありません。
算定要件|3つの要件をすべて満たす
算定するには、通知で定められた3つの要件をすべて満たす必要があります。いずれかが欠けると算定できません。
第1に、薬剤情報の確認です。電子処方箋システムで薬剤情報を確認し、重複投薬等チェックを実施します。
第2に、調剤薬局の確認です。患者が調剤を希望する保険薬局を事前に聴取し、その薬局が電子処方箋に対応しているかを確かめます。対応していない薬局を選んでしまうと、データを受け取れず連携できないためです。
第3に、電子処方箋の発行です。電磁的記録、つまりデータとして処方箋を発行します。ここで注意したいのが、引換番号が印字された紙の処方箋は対象に含まれないという点です(詳しくは後述します)。
施設基準と届出|算定の大前提となる体制
要件を満たす前に、医療機関側の体制づくりが必要です。算定の前提となる施設基準は、「電磁的記録による処方箋を発行する体制」を備えていることです。これは、紙ではなくデータで処方箋を作成・発行できる仕組みを指します。
あわせて、地方厚生局長等への届出も欠かせません。届出をしていない医療機関は、たとえ毎回の要件を満たしても算定できません。施設基準は一度整えれば済む準備、要件は診察ごとに満たす運用、と切り分けて考えると進めやすくなります。
算定の注意点|引換番号付きの紙の処方箋は対象外
実務で最もつまずきやすいのが、電子処方箋の「発行」の解釈です。電子処方箋システムから引換番号を出力し、それを印字した紙を患者へ渡すだけでは、要件を満たしません。この紙は、本加算でいう電子処方箋から明確に除かれています。
求められるのは、データとして完結する発行です。処方情報を登録し、患者には引換番号などを伝えたうえで、薬局がデータで原本を受け取る流れを整える必要があります。算定の可否を分けるポイントなので、運用フローを設計する段階で確認しておくと安心です。
まとめ|算定に向けた準備のポイント
遠隔電子処方箋活用加算は、データに基づく安全な処方と、紙のやり取りを省く利便性を同時に評価する新しい加算です。算定をめざす医療機関は、まず電子処方箋の発行体制を整えて届け出ること、そのうえで薬剤情報の確認と薬局の事前確認を組み込んだ運用フローをつくることが出発点になります。「紙の処方箋は対象外」という点だけは、特に早めに共有しておくとよいでしょう。
よくある質問(FAQ)
- 遠隔電子処方箋活用加算は、1人の患者について何回算定できますか?
- 同一患者につき月1回に限り、10点を所定点数に加算できます。対象は、情報通信機器を用いた医学管理等を算定する患者です。対面診療は対象に含まれません。
- 引換番号が印字された紙の処方箋を交付した場合も算定できますか?
- 算定できません。要件では、引換番号が印字された紙の処方箋は除くとされています。電磁的記録(データ)として電子処方箋を発行することが必要です。
- 施設基準の届出をしていなくても、毎回の要件を満たせば算定できますか?
- 算定できません。電磁的記録による処方箋を発行する体制を満たし、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関であることが、算定の前提となります。