病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】難治性皮膚疾患の訪問看護|別表第八追加で週4日以上の算定が可能に

令和8年度診療報酬改定で、難治性皮膚疾患を持つ利用者への訪問看護が大きく変わります。本記事では、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受ける利用者が別表第八に追加される改定について、訪問看護ステーションと医療機関の実務者視点で、現場での連携ステップと経営的意義を解説します。本件に関する詳細な議論は、LISTENのエピソードでも配信しています。

なぜ「週3日の壁」が問題だったのか

難治性皮膚疾患患者の在宅ケアは、専門職による頻回な関与が必要な臨床ニーズと、週3日以内という制度上の制約の間で長年ジレンマを抱えてきました。

表皮水疱症や水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の患者さんは、先天的素因により、日常生活で外力が加わる部位に水疱やびらんが繰り返し形成されます。訪問看護の現場では、感染兆候の確認、新生水疱の穿刺、被覆材の選択など、潰瘍や水疱の発生に応じて繰り返し専門的な判断と手技が求められます。

しかし現行制度では、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理は、週4日以上の訪問看護が可能となる「別表第八」(特掲診療料の施設基準等)に規定されていませんでした。在宅自己腹膜灌流指導管理や在宅血液透析指導管理など10種類の在宅指導管理が列挙されているものの、難治性皮膚疾患は対象外だったのです。

この制度上の空白により、重症患者であっても訪問看護は原則週3日以内に制限されました。専門職が介入できない日のケアは家族が担うこととなり、過酷な介護負担が生じる構造となっていたのです。

改定の具体的な要件と算定可能な報酬

令和8年度診療報酬改定では、別表第八の項目二に「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」が追加され、対象が現行の10種類から11種類へ拡大されます。

対象となる利用者は、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料(1,000点)の算定要件を満たす表皮水疱症患者および水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症患者です。これらの患者に対して、以下の報酬を週4日以上算定できるようになります。

  • 訪問看護基本療養費
  • 退院後訪問指導料
  • 在宅患者訪問看護・指導料
  • 同一建物居住者訪問看護・指導料 等

改定後は、週4日目以降の専用点数が算定可能となります。具体的には、訪問看護基本療養費が6,550円、在宅患者訪問看護・指導料が680点等です。週3日目までの点数と異なる、頻回訪問に対応した区分が用意されています。

算定解禁の条件は「医療機関との連携」

ここで実務上の重要ポイントがあります。訪問看護ステーション単独では、この算定解禁は完結しません。

週4日以上の訪問看護を算定するためには、医療機関(主治医)側で在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料を月1回算定していることが前提となります。つまり、主治医側での指導管理料の算定が、頻回訪問のトリガーとなる構造です。

訪問看護計画を立案する際は、対象患者について主治医と算定状況を確認し、認識を揃えておくことが求められます。

訪問看護ステーションが得る経営的価値

本改定は、訪問看護ステーションの経営面でも見過ごせない影響をもたらします。

これまで週3日以内に制限されていた訪問について、利用者の状態に応じた週4日以上の柔軟な計画立案が可能になります。1人の利用者に対する算定機会が増えることは、収益構造の改善と、ケアの質向上の両立を意味します。

加えて、専門性の高い難治性皮膚疾患患者を受け入れられる体制は、地域における訪問看護ステーションの差別化要因にもなります。主治医や医療機関との連携実績を積むことは、将来的な紹介経路の確保にもつながるでしょう。

医療機関側にとっても、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料の算定が、訪問看護ステーションとの連携を強化する起点となります。地域医療における自院のポジショニング強化につながる改定といえます。

実務者が明日から取り組むべき3つのアクション

改定施行に向けて、訪問看護ステーションと医療機関が取り組むべき具体的なアクションを整理します。

第1に、対象患者のリストアップです。既存の利用者の中に、表皮水疱症または水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の患者がいないか確認しましょう。指定難病36の医療費補助を受けている患者が手がかりとなります。

第2に、主治医との算定状況の連携確認です。対象患者について、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料が算定されているかを確認します。算定されていない場合は、主治医と要件充足について協議が必要です。

第3に、訪問看護計画の見直しです。週4日以上の訪問を前提とした新たな計画を立案し、利用者・家族へ提案します。レセプト請求フローについても、週4日目以降の点数算定に対応できるよう、事前に確認しておくことが重要です。

まとめ|頻回訪問の解禁が在宅療養の新たな基盤に

令和8年度診療報酬改定における別表第八への在宅難治性皮膚疾患処置指導管理の追加は、単なる点数項目の追加ではありません。週3日という人為的な制度の壁を取り払い、必要なケアを必要な時に届けるための、シームレスなケア体制への転換点です。

医療機関と訪問看護ステーションの緊密な連携が、この新しい体制を支える基盤となります。改定施行に向けて、対象患者の把握と連携体制の構築を、今から着実に進めていきましょう。