令和8年度診療報酬改定で、退院時リハビリテーション指導料の対象患者が限定されます。これまで対象患者に制限はありませんでした。改定後は、入院中にリハビリ関連の点数を算定した患者だけが対象になります。本記事では、この見直しで「算定漏れがなぜ連鎖するのか」という実務のリスクと、退院前に押さえるべき確認フローを中心に解説します。
制度の趣旨や対象加算の網羅的な一覧は、別途公開しているメルマガ記事で詳しく整理しています。本記事は、現場で「目の前の患者を算定できるか」を判断するための実務ガイドとしてお読みください。
- この記事の要点(3行まとめ)
- 何が変わるのか:対象患者の「入り口」が狭くなる
- なぜ算定漏れが「連鎖」するのか
- 退院前の算定判定フロー(3ステップ)
- 確認すべき「対象3グループ」の加算コード
- 変わらない点:現場スタッフの業務は維持される
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
この記事の要点(3行まとめ)
- 対象患者が「入院中にリハビリ関連点数を算定した患者」に限定される
- 入院中の算定を1つ忘れると、退院時の指導料まで連鎖して算定できなくなる
- 指導の内容と併算定ルールは現行のまま。変わるのは「対象者の入り口」だけ
何が変わるのか:対象患者の「入り口」が狭くなる
今回の改定で変わるのは、対象患者の条件です。指導の中身や併算定ルールは変わりません。つまり、退院時リハビリテーション指導料の「入り口」だけが狭くなる改定だと理解すると整理しやすくなります。
具体的には、入院中にリハビリ関連の点数を算定したかどうかが、新たな判定基準になります。算定実績のある患者は、これまで通り対象です。一方、入院中にリハビリ関連の点数がない患者は、自動的に対象から外れます。退院後の在宅生活に向けた指導は、入院中のリハビリ実績があってはじめて成り立つ、という制度の考え方が反映されています。
なぜ算定漏れが「連鎖」するのか
今回の改定で最も注意すべきは、算定漏れが連鎖する点です。入院中のリハビリ関連点数の算定漏れが、退院時の指導料の算定不可に直結するためです。
患者が実際にリハビリテーションを受けていても、対象項目を入院中に算定し忘れると、退院時の指導料まで対象外になります。たとえば、早期離床・リハビリテーション加算の算定を入院初期に失念したとします。この一つの漏れが、退院というゴール地点での算定にまで影響を及ぼします。退院時に過去の履歴を慌てて確認しても、入院中の算定そのものを後から作り出すことはできません。
だからこそ、対応は退院時ではなく入院時から始める必要があります。入院した段階で、どのリハビリテーションを行い、どの点数を算定していくのかを病棟全体で共有することが求められます。事務作業の問題ではなく、患者の回復プロセスを正確に記録し証明するチーム医療の問題だと捉えることが重要です。
退院前の算定判定フロー(3ステップ)
目の前の患者を算定できるかは、3つのステップで判定できます。退院前に、上から順に確認してください。
- ステップ1:退院後、在宅生活への移行を予定しているか。予定していれば次へ。
- ステップ2:入院中に「対象3グループ」のいずれかを算定したか。算定があれば次へ。なければ対象要件外で算定できません。
- ステップ3:同一日に退院時共同指導料2を別に算定していないか。重複がなければ算定可能です。重複があれば、いずれかを選択します。
確認すべき「対象3グループ」の加算コード
ステップ2で確認する対象項目は、3つのグループに分かれます。いずれか1つでも入院中に算定していれば条件クリアです。医事課・会計担当者は、これらのコードが入院会計データに存在するかを退院前に照合してください。
| グループ | 該当する加算・区分 |
|---|---|
| ① 連携体制の加算 | A233 リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算 A304注10 リハビリテーション・栄養・口腔連携加算 |
| ② 早期離床・リハビリテーション加算 | A301注4 / A301-2注3 / A301-3注3 / A301-4注3 |
| ③ 疾患別リハビリテーション | 第7部リハビリテーション 第1節の各区分のいずれか |
変わらない点:現場スタッフの業務は維持される
対象者の条件は厳しくなりますが、現場の業務そのものは変わりません。変わるのは入り口の事務的な確認だけです。
指導の内容は現行どおりです。基本的動作能力、応用的動作能力、社会的適応能力の回復を図る訓練の指導が、これまで通り対象になります。併算定ルールも現行どおりです。同一日に退院時共同指導料2を別に算定できない取扱いは維持されます。理学療法士や作業療法士など、現場スタッフの介入内容に変更はありません。
よくある質問(FAQ)
- 入院中にリハビリを実施していれば、退院時リハビリテーション指導料は算定できますか?
- リハビリを実施しただけでは不十分です。対象となる3グループ(連携体制の加算、早期離床・リハビリテーション加算、疾患別リハビリテーション)のいずれかを入院中に「算定」していることが要件です。実施していても算定が漏れていると対象外になるため、入院中の算定状況の確認が重要です。
- 指導の内容や、退院時共同指導料2との併算定ルールは変わりますか?
- 変わりません。在宅での動作能力や社会的適応能力の回復を図る訓練の指導という内容は現行どおりです。また、同一日に退院時共同指導料2を別に算定できない取扱いも維持されます。今回の改定で変わるのは対象患者の条件のみです。
- 退院が決まってから対象になるかを確認しても間に合いますか?
- 間に合わない場合があります。要件は入院中の算定実績であり、退院時に過去の算定をさかのぼって作ることはできません。入院初期から、どのリハビリ関連点数を算定するかを病棟全体で共有し、漏れを防ぐ体制が必要です。
まとめ
令和8年度改定では、退院時リハビリテーション指導料の対象患者が、入院中にリハビリ関連点数を算定した患者に限定されます。算定漏れは退院時まで連鎖するため、入院時からの確認体制が欠かせません。指導内容や併算定ルールは変わらず、変わるのは対象者の入り口だけです。退院前には、本記事の3ステップフローで算定可否を確認してください。
本記事の内容は、ポッドキャスト番組でも詳しく解説しています。音声での解説は、以下のリンクからお聴きいただけます。