令和8年度診療報酬改定では、大病院の外来機能分化と地域のかかりつけ医機能を担う医療機関との連携強化が、引き続き重要な政策課題となっています。現行の連携強化診療情報提供料には、算定対象の組み合わせが限定的であること、算定機会も患者1人につき月1回までであることなど、現場の連携実態を十分に反映できていないという課題がありました。
本記事では、令和8年度診療報酬改定における連携強化診療情報提供料の見直し内容を、実務者視点で掘り下げて解説します。3つの見直しポイントに加えて、現場運用への影響や留意点まで踏み込んで整理しました。音声で解説を聞きたい方は、LISTENのポッドキャストエピソードもあわせてご活用ください。
- 改定の背景:双方向・継続的な連携への転換
- 見直しポイント1:算定対象医療機関の拡大
- 見直しポイント2:共同治療管理の合意要件の新設
- 見直しポイント3:算定回数の「3月に1回」への統一
- 実務への影響と留意点
- まとめ:新しい病診連携のスタンダードへ
改定の背景:双方向・継続的な連携への転換
今回の見直しの背景には、医療機関の明確な役割分担と、双方向の情報共有を推進する狙いがあります。大病院が高度な専門治療や急性期治療に特化し、地域の診療所が日常的な継続管理を担うという機能分化の流れです。
これまでの制度では、大病院の専門医師と地域のかかりつけ医師が連携する際、情報提供の労力に対する評価が一方通行になりがちでした。具体的には、紹介された患者のみが算定対象であり、紹介した側(主に大病院側)の情報提供は評価されない構造だったのです。この状況を改善し、双方向の継続的な情報共有を制度として後押しすることが、今回の改定の出発点となっています。
見直しポイント1:算定対象医療機関の拡大
1つ目のポイントは、算定対象医療機関の拡大です。現行では特定機能病院等に限定されていた対象が、許可病床数200床未満の病院および診療所等まで拡大されます。
改定後の算定対象は、2つの類型に整理されます。1つは「診療所または許可病床数200床未満の病院」、もう1つは「特定機能病院、地域医療支援病院、外来機能報告対象病院等または許可病床数400床以上の病院」です。この2類型の間で患者の紹介が行われた場合、紹介元と紹介先の双方の医療機関で算定が可能となります。
ただし、後者の類型には留保条件が付されています。地域医療支援病院と400床以上の病院については一般病床200床未満のものを除き、外来機能報告対象病院等は都道府県が公表した基幹的な病院に限られます。該当可能性のある医療機関は、自院がどの条件を満たすか事前の確認が必要です。
この見直しにより、大病院から地域のかかりつけ医への逆紹介の場面でも算定が認められ、外来機能分化が報酬面から強力に後押しされます。
見直しポイント2:共同治療管理の合意要件の新設
2つ目のポイントは、共同治療管理の合意に基づく算定要件の新設です。医療機関間の連携の質を高めるための要件整備といえます。
現行の「他の保険医療機関からの求めに応じた情報提供」に加えて、病院の専門医師と地域のかかりつけ医師が、患者の治療管理を共同で継続的に行うことについて事前に合意し、それに基づく情報提供を行った場合にも算定が認められます。毎回個別の情報提供依頼を行う事務的な負担が軽減され、継続的な情報共有が評価される枠組みとなります。
合意要件の対象には一般の患者のほか、指定難病の患者、てんかんの患者、妊娠中の患者が含まれます。ただし患者種別ごとに、算定主体となる医療機関の施設基準が異なります。指定難病の患者については難病診療連携拠点病院または難病診療分野別拠点病院の指定が、てんかんの患者についてはてんかん支援拠点病院の指定が、妊娠中の患者については院内に十分な診療体制の整備が、それぞれ求められます。
見直しポイント3:算定回数の「3月に1回」への統一
3つ目のポイントは、算定回数が患者1人につき「3月に1回」に統一される点です。
現行制度では、注1から注4までが月1回、注5(妊娠中)のみ3月に1回と区分が分かれていました。改定後はすべての算定区分で「3月に1回」に統一されます。慢性疾患の長期的なケアや継続的な治療管理の実態に即した、合理的な算定機会の設定といえます。
実務への影響と留意点
ここからは、改定の全体像を踏まえた実務上の影響と留意点を整理します。
連携先の再確認が必要になります。算定対象が拡大されることで、自院が新たに算定可能となる連携先が増える可能性があります。紹介元・紹介先の双方の類型を把握し、どの連携パターンで算定できるかを整理しておくとよいでしょう。
共同治療管理の合意手順の整備が鍵となります。事前合意という新しい枠組みを活用するには、合意書の様式、合意の記録方法、合意に基づく紹介であることの確認フローなど、運用ルールの設計が必要です。個別の求めによる算定から合意ベースの算定に移行することで、事務負担の軽減が期待される一方、初期の仕組み構築には工数がかかります。
算定回数減少のインパクトにも注意が必要です。現行で月1回算定していたケースは、改定後に3月に1回となります。算定対象の拡大と相殺される部分はあるものの、個別患者単位では算定頻度が低下するため、収入への影響を試算しておくことが重要です。
例外規定の扱いは最終確認が必要です。現行の妊娠中の患者(注5)には、「頻回の情報提供が必要な場合は月1回算定できる」という例外規定がありましたが、改定案の本文には相当する記述が見られません。削除されたのか別の形で残るのかは、最終的な告示および関連通知での確認が求められます。
まとめ:新しい病診連携のスタンダードへ
令和8年度診療報酬改定における連携強化診療情報提供料の見直しは、「算定対象医療機関の拡大」「共同治療管理の合意要件の新設」「算定回数の3月に1回への統一」という3つの柱で構成されます。
これら3つの見直しは独立したものではなく、連動して機能します。双方向の連携ルートを開通させ、合意に基づく継続的な共同管理を新設し、実態に合った算定ペースを設定する。この一連の設計により、病院の専門医師と地域のかかりつけ医師が連携しながら、共同で継続的に治療管理を行う取り組みが推進されます。
断片的な情報提供ではなく、継続的につながった情報共有の仕組みが整備されることで、医療の質の向上が期待されます。各医療機関においては、自院の連携体制を改定の方向性に合わせて見直す好機といえるでしょう。