令和8年度診療報酬改定では、外来や在宅医療など様々な場面でオンライン診療の推進が進められています。その一環として、これまで情報通信機器を用いた場合の評価がなかった2つの管理料に、新たな評価が設けられました。「在宅振戦等刺激装置治療指導管理料」と「プログラム医療機器等指導管理料」です。
本記事では、この2つの新評価について、どの患者が対象になるのか、算定にあたって何を届け出る必要があるのかという実務目線で整理します。「自院は算定できるのか」「準備として何が必要か」を判断する材料としてお役立てください。
- 新設された2つの評価の全体像
- 在宅振戦等刺激装置治療指導管理料(705点)の対象と要件
- プログラム医療機器等指導管理料(78点)の対象と要件
- 算定の前提となる施設基準と届出のチェックポイント
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
新設された2つの評価の全体像
今回新設されたのは、いずれも「情報通信機器を用いた場合」の評価です。どちらも所定点数を上乗せする加算ではなく、対面で算定する所定点数に代えて算定する点数である点に注意してください。まず全体像を表で確認します。
| 管理料 | 対象となる患者 | 新設点数 |
|---|---|---|
| 在宅振戦等刺激装置治療指導管理料 | 振戦などの不随意運動症に対して脳深部刺激療法(DBS)を受ける患者 | 所定点数に代えて705点 |
| プログラム医療機器等指導管理料 | ニコチン依存症や高血圧症などの治療用アプリを使用する患者 | 所定点数に代えて78点 |
以下、それぞれの管理料について、対象患者の具体像と算定要件を見ていきます。
在宅振戦等刺激装置治療指導管理料(705点)の対象と要件
1つ目は、脳深部刺激療法(DBS)の遠隔調整を評価する705点です。DBSとは、振戦などの不随意運動症に対して、患者の体内に刺激装置を植え込み、その刺激の設定を医師が定期的に調整する治療を指します。従来、この調整は患者が医療機関へ来院し、対面で行う必要がありました。
この来院による負担を変えるのが、遠隔プログラミングです。インターネット回線を介して刺激の設定を遠隔から変更する技術であり、令和8年度改定でこの遠隔プログラミングが評価対象となりました。具体的には、施設基準を届け出た保険医療機関が当該指導管理を情報通信機器を用いて行った場合に、所定点数に代えて705点を算定できます。背景には、対応するプログラム医療機器の薬事承認、海外臨床試験での有用性・安全性の確認、そして日本定位・機能神経外科学会による手引きの整備があります。
プログラム医療機器等指導管理料(78点)の対象と要件
2つ目は、治療用アプリの指導管理を評価する78点です。プログラム医療機器等指導管理料は、患者自らが使用する治療用アプリ等の指導管理を月1回評価する管理料で、ニコチン依存症治療補助アプリや高血圧症治療補助アプリなどが対象になります。今回、施設基準を届け出た保険医療機関が当該医学管理を情報通信機器を用いて行った場合に、所定点数に代えて78点を算定できることになりました。
この新設は、併算定する管理料との整合性を確保するためのものです。本管理料と併せて算定するニコチン依存症管理料や生活習慣病管理料(Ⅱ)には、すでに情報通信機器を用いた場合の規定がありました。一方で、本管理料自体には規定がなく、制度間の不整合が生じていました。今回の改定は、この空白を埋めるアップデートと位置づけられます。
算定の前提となる施設基準と届出のチェックポイント
実務上もっとも重要なのは、いずれの管理料も施設基準を満たして届け出ることが算定の前提になる点です。準備にあたっては、次の3点を確認してください。
- 共通要件:両管理料とも「情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されていること」を満たす必要があります。
- プログラム医療機器等指導管理料の追加要件:上記に加えて、従来からの「プログラム医療機器等の指導管理を行うにつき十分な体制」も求められます。つまり2つの体制を備える必要があります。
- 届出先:いずれも地方厚生局長等への届出が必要です。施設基準を満たしたうえで、算定開始前に届出を完了させておくことが求められます。
よくある質問(FAQ)
- 情報通信機器を用いた場合の705点・78点は、対面の点数に上乗せして算定できますか?
- いいえ、上乗せ(加算)ではありません。いずれも対面で算定する所定点数に「代えて」算定する点数です。情報通信機器を用いて指導管理・医学管理を行った場合に、所定点数の代わりに705点または78点を算定します。
- 施設基準の届出をしていなくても、情報通信機器を用いれば算定できますか?
- 算定できません。両管理料とも、施設基準を満たして地方厚生局長等に届け出ることが算定の前提です。とくにプログラム医療機器等指導管理料は、情報通信機器の体制に加えて、従来からのプログラム医療機器等の指導管理の体制という2つの体制を備える必要があります。届出は算定開始前に完了させておく必要があります。
- プログラム医療機器等指導管理料の対象となる治療用アプリには、どのようなものがありますか?
- 患者自らが使用する治療用アプリ等が対象で、代表例としてニコチン依存症治療補助アプリや高血圧症治療補助アプリがあります。これらの指導管理を情報通信機器を用いて行った場合に、所定点数に代えて78点を算定できます。
まとめ
令和8年度改定は、オンライン診療の推進の一環として、2つの管理料に情報通信機器を用いた場合の評価を新設しました。在宅振戦等刺激装置治療指導管理料は所定点数に代えて705点、プログラム医療機器等指導管理料は所定点数に代えて78点を算定できます。いずれも対面とオンラインの両方に対応できる体制を整え、施設基準を地方厚生局長等に届け出ることが算定の前提です。自院での算定を検討する際は、本記事の届出チェックポイントを起点に準備を進めてみてください。
本記事の内容は、以下のポッドキャストエピソードでも詳しく解説しています。ぜひお聴きください。