令和8年度診療報酬改定では、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)と終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)の評価が見直されます。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療に関わる医療機関にとって、収益と業務フローの両方に影響する改定です。
本記事は、この改定を「自院は何をすべきか」という実務目線で整理します。点数の動きだけでなく、加算を取るための条件や、今すぐ確認したい対応ポイントまで解説します。
- なぜ見直されるのか|「実施」から「データと質」への評価転換
- 在宅CPAP指導管理料の変更点|充実管理体制加算15点と本体240点
- 終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)の変更点|実施方法で点数を細分化
- 医療機関が今すぐ確認したい3つの対応ポイント
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
なぜ見直されるのか|「実施」から「データと質」への評価転換
今回の見直しの背景には、治療効果に直結する管理体制が十分に評価されてこなかったという課題があります。
CPAP治療の効果は、患者が機器を毎晩どれだけ使用したか(アドヒアランス)に大きく左右されます。しかし従来の評価では、使用状況をデータで把握し、その結果に基づいて指導する体制が、点数に反映されにくかったという指摘があります。
そこで令和8年度改定は、評価の軸を「実施したかどうか」から「データと実施実態に基づく医療の質」へと移します。手間をかけてでも確かな結果を出す医療機関を評価する、という方向性です。
在宅CPAP指導管理料の変更点|充実管理体制加算15点と本体240点
在宅CPAP指導管理料の見直しは、指導管理料2を対象に、本体の引き下げと加算の新設をセットで行うものです。指導管理料1(2,250点)に変更はありません。
点数はこう変わる
指導管理料2の本体は、250点から240点へ10点引き下げられます。あわせて「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算」15点が新設されます。
収益は「体制の有無」で分かれる
収益への影響は、モニタリング体制の有無で明確に分かれます。体制を満たす医療機関は本体240点に15点を加えた255点となり、改定前の250点より5点の増点です。体制を満たさない医療機関は240点にとどまり、改定前より10点の減点となります。
| 区分 | 点数 | 改定前(250点)との比較 |
|---|---|---|
| モニタリング体制【あり】 | 240点+15点=255点 | +5点 |
| モニタリング体制【なし】 | 240点のみ | −10点 |
加算の施設基準
加算の算定には施設基準があります。機器の使用時間等をモニタリング可能な体制を有し、適切な指導管理を行っていることが条件です。つまり、データを取得して指導に活かす運用が整っているかどうかが問われます。
終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)の変更点|実施方法で点数を細分化
PSGの見直しは、CPAP導入前の診断データの質を担保するため、検査の実施方法に応じて点数を分けるものです。
従来「その他のもの」として3,570点だった区分が、2つに分割されます。保険医療機関内での実施、または医療従事者が患家を訪問して検査装置を装着する場合は、3,570点が維持されます。これら以外の、患者自身が装着する場合などは、新たな「その他のもの」として2,000点に引き下げられます。
あわせて、検査に要した交通費を患家の負担とする注記が新設され、取扱いが明確化されました。
なお、携帯用装置の720点、多点感圧センサーを有する睡眠評価装置の250点、安全精度管理下で行う4,760点は、いずれも変更ありません。
医療機関が今すぐ確認したい3つの対応ポイント
改定への対応として、医療機関が早期に確認したいポイントを、実務的な一例として3つ挙げます。いずれも公式に定められた手順ではなく、改定資料をふまえた準備の目安です。
1. モニタリング体制の整備
使用時間データを取得・記録し、指導に活用できる体制が整っているかを確認します。加算の前提となるため、機器メーカーのデータ連携や記録の運用フローを点検しておくと安心です。
2. PSGの実施フローの見直し
院内実施・訪問装着・患者の自己装着の割合を把握します。どの区分で算定するかが点数を左右するため、専門職が関与する実施方法を増やせるかを検討します。
3. 施設基準の届出準備
充実管理体制加算の届出に必要な要件を満たしているかを確認します。要件を満たす場合は、書類と運用の準備を早めに進め、算定漏れを防ぎます。
よくある質問(FAQ)
- 充実管理体制加算(15点)を算定するための条件は何ですか?
- 機器の使用時間等をモニタリング可能な体制を有し、適切な指導管理を行っていることが施設基準です。対象は在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2で、要件を満たすと本体240点に15点が加算され、合計255点となります。
- モニタリング体制がない場合、点数はどうなりますか?
- 加算は算定できず、本体の240点のみとなります。改定前の250点と比べて10点の減少です。一方、体制を満たせば255点となり、改定前より5点増えます。体制の有無で評価に差がつく仕組みです。
- 終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)が2,000点に下がるのはどんな場合ですか?
- 保険医療機関内での実施や、医療従事者が患家を訪問して検査装置を装着する場合は3,570点が維持されます。これら以外の、患者自身が装着する場合などが新たな「その他のもの」2,000点に該当します。専門職の関与が点数を左右します。
まとめ
令和8年度改定は、在宅CPAPとPSGの評価を、データと実施実態に基づく「医療の質」へと寄せる内容です。CPAPでは使用状況のモニタリング体制が、PSGでは専門職の関与が、それぞれ点数を左右します。
医療機関に求められるのは、サービスを提供して終わりにせず、データ管理体制と適切な実施フローを整えることです。自院のモニタリング体制と検査フローを早めに見直し、新たな施設基準への対応を進めましょう。
詳細な改定内容は、令和8年度診療報酬改定(厚生労働省)の資料もあわせてご確認ください。
音声での解説は、こちらのエピソードでもお話ししています。令和8年度改定|在宅CPAP指導管理料の見直しと加算15点を解説 - LISTEN