令和8年度診療報酬改定では、質の高い臨床検査を適切に評価する観点から、新規に保険適用された検査に専用の検査料が新設されます。ねらいは、最新の検査技術を価値に見合った水準で評価し、医療機関が持続的に検査を提供できる体制を整えることです。本記事では、改定の背景にある「準用点数」の課題から、具体例であるアスペルギルスIgG抗体の新設、そしてこの見直しが現場にもたらす意味までを順に整理します。
- なぜ見直しが必要だったのか:「準用点数」の限界
- 何が変わるのか:E3区分の新規検査に専用の検査料
- 具体例で見る:アスペルギルスIgG抗体390点の新設
- この改定が持つ意味:医療現場と患者にとって
- まとめ
なぜ見直しが必要だったのか:「準用点数」の限界
今回の改定の出発点は、「準用点数」という暫定的な評価の限界にあります。準用点数とは、新しい検査に専用の点数がないとき、性質の近い既存検査の点数を借りて算定する仕組みです。新規検査をすばやく保険診療に乗せられるため、患者が新しい検査を早期に受けられるという大きな利点があります。
一方で、準用点数には検査の価値を正確に反映しにくいという弱点があります。借りてきた点数は、あくまで別の検査のために設定されたものです。新規検査に固有の試薬や手技にかかる手間やコストは、必ずしも準用元の点数と一致しません。この差が解消されないまま暫定評価が長期化すると、検査の実際の価値が点数に反映されないまま固定化してしまいます。
この課題がとりわけ大きいのが、「E3区分」と呼ばれる検査です。E3区分とは、既存の検査と測定する項目が異なる、まったく新しい検査を指します。測定項目そのものが新しいため、準用するのにふさわしい「性質の近い既存検査」が見つかりにくいのです。比較対象のない検査を既存の点数で評価し続けることは、新規検査の導入をためらう要因にもなりかねません。
何が変わるのか:E3区分の新規検査に専用の検査料
今回の改定では、E3区分で保険適用された新規体外診断用医薬品等を対象に、専用の検査料が新設されます。これまで準用点数で算定されてきたE3区分の検査が、その手間やコストに見合った水準の専用点数へと切り替わります。暫定的な「借りものの評価」から、検査そのものの価値に応じた評価へと移行するわけです。
専用の検査料は、いわば恒久的で専用的な評価です。準用点数のように別の検査の事情に左右されることなく、その検査の価値を直接反映できます。これにより、質の高い臨床検査が、その価値に応じて正当に評価される土台が整います。
具体例で見る:アスペルギルスIgG抗体390点の新設
今回の新設をもっとも分かりやすく示すのが、感染症免疫学的検査の「アスペルギルスIgG抗体」です。アスペルギルスIgG抗体は、真菌の一種であるアスペルギルスへの体の反応を調べる検査で、慢性肺アスペルギルス症などの診断に用いられます。E3区分のまったく新しい測定項目であるため、これまで専用点数がなく、長らく準用点数で算定されてきました。
この検査に、390点の専用検査料が新設されます。診療報酬は1点を10円として計算するため、検査料の総額は3,900円です。ただし、この3,900円は検査料の総額であり、患者がそのまま支払う金額ではありません。患者が窓口で支払うのは、このうち自己負担割合(1〜3割)に相当する分です。
この改定が持つ意味:医療現場と患者にとって
この検査料の新設は、単なる点数の調整にとどまりません。新規検査の導入ハードルを下げ、医療機関が持続的に質の高い検査を提供できる体制づくりにつながります。採算の見通しが立てば、現場は最新の検査をより導入しやすくなります。
その効果は、最終的に患者へと還元されます。質の高い臨床検査が普及すれば、アスペルギルス症などの早期で正確な診断につながります。価値に応じた適切な評価は、検査の担い手と受け手の双方を支える好循環の起点になるのです。
まとめ
令和8年度診療報酬改定における検査料の新設は、質の高い臨床検査をその価値に応じて評価する重要な転換点です。準用点数という暫定評価の限界を踏まえ、E3区分の新規体外診断用医薬品等に専用の検査料が設けられました。具体例として、アスペルギルスIgG抗体には390点が新設されています。適正な評価を通じて、医療機関が持続的に最新の検査を提供できる仕組みが整うことが期待されます。
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