令和8年度の診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟の成果を測る「リハビリテーション実績指数」が見直されます。算出方法と、計算から除外できる患者の基準が、同時に変わります。ねらいは、機能改善が乏しいまま漫然と続くリハビリを防ぎ、質の高いアウトカム評価へ進めることです。
本記事では、この見直しを「4つのポイント」に整理し、病棟の経営層や実務担当者が押さえるべき変更点と対応を解説します。
なぜ今、リハビリ実績指数が見直されるのか
見直しの背景には、現行の仕組みでは一部の患者を計算から除外できるため、必ずしも病棟全体の改善力を反映しきれない、という課題があります。たとえば、年齢が高い患者は「回復が見込みにくい」として、実績の計算から除外できる扱いとなっていました。
今回の改定は、こうした除外のあり方を見直すものです。患者の生活機能がどれだけ回復したかという本来の成果を、より幅広い患者で問う方向へ進めるねらいがあります。
令和8年度改定で変わる4つのポイント
今回の見直しは、大きく4つのポイントに整理できます。順に見ていきます。
① 歩行・トイレ動作の「自立」到達に加点(評価のきめ細かさ)
1つ目は、患者の「自立」到達を高く評価する加点ルールの新設です。実績指数は、FIM(機能的自立度評価表)の運動項目の得点の伸び、つまり利得をもとに算出します。FIMは日常生活動作の自立度を点数化する指標で、6点以上が「介助なしで動作できる自立」を意味します。
新ルールの対象は、「歩行・車椅子」と「トイレ動作」の2項目です。これらの得点が入棟時に5点以下、退棟時に6点以上へ改善した場合、項目ごとに利得へ1点を加えます。介助が必要な状態から自立へ導いた成果が、これまで以上に数値へ反映される仕組みです。
② 合格ラインを27から30へ引き上げ
2つ目は、合格ラインの引き上げです。実績指数の基準値が、現行の27から30へ上がります。回復期リハ病棟では、実績指数が2回連続で基準値を下回ると、診療報酬の算定に制約がかかります。
制約の中身は包括化です。該当した月以降、1日6単位(1単位は20分)を超える疾患別リハビリテーション料は入院料に包括され、出来高で算定できなくなります。ただし、発症後60日以内の脳血管疾患等の患者へのリハビリは、この対象から除かれます。
③ 除外対象の厳格化と上限20%への縮小
3つ目は、計算から除外できる患者の要件と割合の厳格化です。変更点は次の4つです。
- 年齢要件の撤廃:「年齢が80歳以上のもの」という除外要件が削除されます。年齢を理由に除外できなくなります。
- 運動機能の条件追加:「FIM運動項目20点以下」は引き続き除外できますが、1日平均6単位を超えるリハビリを行った患者は算出対象に含めます。
- 認知機能の基準引き下げ:「FIM認知項目24点以下」という要件が「14点以下」へ厳格化されます。
- 除外割合の縮小:入棟患者数に対する除外の上限が、30%(100分の30)から20%(100分の20)へ縮小します。
④ 実績公開はウェブサイト掲載まで明確化
4つ目は、情報公開の強化です。回復期リハ病棟は、退棟患者数や直近の実績指数を、少なくとも3か月ごとに公開する義務を負います。改定後は、従来の院内掲示に加え、これらをウェブサイトに掲載することが明確化されます。なお、自らのホームページ等を持たない医療機関は、ウェブ掲載を求められません。
病棟運営・実務への影響と対応のポイント
これらの見直しは、病棟運営に具体的な行動の見直しを迫ります。実務で押さえたい対応は、次の3点です。
第1に、入棟時の見極めがより重要になります。年齢や認知機能だけを理由にした除外ができなくなり、除外枠も20%へ狭まるためです。限られた枠を誰に使うかを、入棟段階でシビアに判断する必要があります。
第2に、「自立」をチームの目標に据える運用が有効です。歩行・トイレ動作の介助脱却が加点につながるため、単位数を積み上げるより、自立到達を見据えた目標設定が成果に直結します。
第3に、実績指数30の維持を前提とした管理が欠かせません。包括化を避けるには、入棟時からの予後予測と目標設定の精度を高め、指数を継続的にモニタリングすることが求められます。
よくある質問(FAQ)
- リハビリテーション実績指数の合格ラインは何点に変わりますか?
- 27から30へ引き上げられます。実績指数が2回連続で30を下回ると、1日6単位を超える疾患別リハビリテーション料が入院料に包括され、出来高で算定できなくなります(発症後60日以内の脳血管疾患等の患者を除く)。
- 80歳以上の患者を実績指数の計算から除外できますか?
- 改定後は除外できません。「年齢が80歳以上のもの」という除外要件が削除されたため、年齢だけを理由に算出対象から外すことはできなくなります。
- 包括(ペナルティ)の対象になった後、出来高算定に戻れますか?
- 戻れます。別の月に「対象患者数が10名未満」「1日平均実施単位数が6単位未満」「実績指数が30以上」のいずれかを満たせば、再び6単位を超える分を出来高で算定できます。
まとめ
令和8年度の見直しは、回復期リハ病棟のアウトカム評価を質の高いものへ進める一歩です。歩行・トイレ動作の自立には加点される一方、合格ラインの引き上げと除外要件の厳格化により、現場にはシビアな数値目標が求められます。経営層と実務担当者は、変更点を正確に把握し、適切な病棟運営と質の高いリハビリの両立を進めることが重要です。
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