令和8年度診療報酬改定で、「迅速フィブリノゲン測定加算(150点)」が新設されました。手術室などで迅速にフィブリノゲンを測定した場合に、所定点数へ150点(1,500円相当)を上乗せできる加算です。この記事では、実際に算定する医療従事者・医療事務の方に向けて、算定に必要な3つの要件と従来との違い、つまずきやすいポイントを整理します。
制度の全体像をやさしく知りたい方はポッドキャストでの解説を、改定の一次情報は厚生労働省の令和8年度診療報酬改定ページをあわせてご確認ください。
迅速フィブリノゲン測定加算とは(結論)
迅速フィブリノゲン測定加算は、フィブリノゲン製剤の適正使用を後押しするために新設された加算です。ポイントは次の3点に集約されます。
- 点数:所定点数に+150点(1,500円相当)
- 対象検査:フィブリノゲン半定量・フィブリノゲン定量
- 算定の鍵:手術室等で「迅速に」測定すること
以下で、新設の背景と算定要件を順に見ていきます。
なぜ新設された?手術室の「待ち時間」という課題
新設の背景には、大量出血時に検査結果を待つ「タイムロス」の問題があります。
フィブリノゲンは、血液を固めて止血するために欠かせないタンパク質です。手術中の大量出血などでこのフィブリノゲンが不足すると(後天性低フィブリノゲン血症)、フィブリノゲン製剤の投与を検討します。その投与判断の出発点になるのが、フィブリノゲン値の測定です。
ところが従来は、採取した検体を中央検査室へ送り、結果を待つのが一般的でした。出血が進行する手術室では、この移動と分析の待ち時間が課題になりやすいと考えられてきました。近年は現場で測定できる迅速検査の技術も広がっていますが、その場で測る行為そのものを評価する仕組みはありませんでした。そこで、迅速な測定を後押しし、適正使用につなげる狙いで今回の加算が設けられました。
従来フローと新フローの違い
今回の改定で何が変わるのかを、従来フローと比較すると分かりやすくなります。
| 項目 | 従来フロー | 令和8年度 新フロー |
|---|---|---|
| 実施場所 | 中央検査室 | 手術室等 |
| スピード | 結果待ちによる遅延 | その場での即時判断 |
| 診療報酬 | 所定点数のみ | 所定点数 + 150点 |
※「令和8年度 新フロー」の診療報酬と実施場所は改定内容にもとづく記載です。「従来フロー」は一般的な検査運用をもとにした説明で、改定文書に明記されたものではありません。
実施場所が現場へ移り、判断が速くなり、その迅速さが診療報酬として評価される――この3点がセットで変わるのが本加算の特徴です。
算定の3要件チェックリスト
迅速フィブリノゲン測定加算は、次の3要件をすべて同時に満たした場合に算定できます。
- [ ] 患者要件:後天性低フィブリノゲン血症の患者である(大量出血などで後天的に不足した状態。先天性の欠乏症は対象外)
- [ ] 目的要件:フィブリノゲン製剤の適応の可否を判断する目的で測定している
- [ ] 場所要件:手術室等の場所で実施している(その場での迅速性が前提)
加えて、対象となるベース検査は「フィブリノゲン半定量」または「フィブリノゲン定量」です。半定量はおおよその量を、定量はより正確な量を測定します。
算定前に確認したいよくある疑問(FAQ)
実務で迷いやすい点を、本改定の内容にもとづいて整理します。細かい取扱いは、正式な告示・通知や疑義解釈での確認をおすすめします。
Q. クリオフィブリノゲンも加算の対象になりますか? A. 対象はフィブリノゲン半定量と定量の2つです。同じ出血・凝固検査の項目でも、クリオフィブリノゲンは加算の対象に含まれていません。
Q. 先天性のフィブリノゲン欠乏症でも算定できますか? A. 対象は「後天性」低フィブリノゲン血症です。先天性(遺伝的)の欠乏症は対象外と読めます。
Q. 手術室以外で測定した場合はどうなりますか? A. 要件は「手術室等」です。その場で迅速に結果を出せる場所が想定されており、対象となる場所の具体的な範囲は通知等での確認が必要です。
Q. 算定回数などの細かいルールは? A. 算定回数や併算定の取扱いなど詳細は、正式な告示・通知や疑義解釈で公表される情報に従ってください。
まとめ
迅速フィブリノゲン測定加算は、単なる点数の上乗せではありません。手術室等での迅速な測定を評価することで、必要な患者に必要なタイミングで製剤を届ける適正使用を支える制度設計です。算定にあたっては、患者・目的・場所の3要件をすべて満たすことが前提となります。医療機関では、この要件を正しく理解し、手術室等での迅速な検査体制を整えておくことが求められます。