令和8年度診療報酬改定で、入院基本料や特定入院料の「患者割合の計算方法」が明確化されました。複数の入院料が混在する病棟で「この患者を計算に入れるべきか」と迷った経験のある方にとって、実務に直結する見直しです。
この記事では、改定のポイントを3つに整理し、見落とせない経過措置までを病院実務の視点で解説します。音声で概要をつかみたい方は、LISTENの解説エピソードもあわせてどうぞ。
なぜ患者割合の計算方法が見直されたのか
見直しの背景には、1つの病棟に複数の評価基準が混在する状況があります。入院基本料や特定入院料の施設基準は、平均在院日数や在宅復帰率などの達成を求めます。このうち在宅復帰率などの患者割合は、退院した患者を分母と分子に振り分けて計算します。ところが、1つの病棟で複数の入院料を算定すると、どの患者を計算に含めるかの解釈が分かれていました。
解釈のばらつきは、現場に2つの問題を生んでいました。1つは、病床ごとに基準を確認する事務負担の増大です。もう1つは、評価の公平性の問題です。たとえば、短期滞在手術等基本料を算定する短期入院の患者は、その多くが自宅へ退院します。こうした患者を急性期病棟の在宅復帰率に含めると、実態以上に数値が高く出る可能性があると指摘できます。今回の令和8年度診療報酬改定は、こうした計算上のノイズを取り除き、評価の公平性と現場の負担軽減を同時に図るものです。
入院基本料の患者割合計算|3つの明確化ポイント
明確化のポイントは、大きく3つです。在宅復帰率の計算対象、特定入院料の計算方法、そして1病棟あたりの種類数です。順に見ていきます。
①在宅復帰率の計算対象を明確化|他の入院料の患者を除外
1つ目は、在宅復帰率の計算対象の明確化です。他の入院料を算定する患者が、計算対象から除外されます。除外の対象は、病床単位で算定する特定入院料や、短期滞在手術等基本料を算定する患者です。
この除外は、急性期と療養病棟の双方に適用されます。急性期一般入院料1などの自宅等退院割合に加え、療養病棟の在宅復帰機能強化加算でも、分子と分母の両方から対象患者を除きます。なお、再入院や転棟、救急患者連携搬送料を算定しての転院、死亡退院などが従来から除外されてきた点は変わりません。
②特定入院料の計算方法を「通則」で統一
2つ目は、特定入院料の計算方法の通則化です。他の特定入院料や短期滞在手術等基本料を算定する患者を除く扱いが、共通ルールである「通則」として明文化されました。
通則化のメリットは、計算プロセスの一本化です。これまでは、回復期リハビリテーション病棟入院料や地域包括ケア病棟入院料など、入院料ごとに除外規定を確認する必要がありました。改定後は、すべての特定入院料で同じルールが適用され、入院料ごとに規定を追う手間がなくなります。
③1病棟あたりの特定入院料は最大2種類まで
3つ目は、1病棟あたりの特定入院料を最大2種類までとする制限です。従来は種類数の上限が明確でなく、病床ごとに異なる患者割合を管理する必要がありました。
背景にあるのは、病棟は1つの看護単位として機能すべきという原則です。種類数を絞ることで、病棟ごとの管理が簡素になり、現場の負担軽減が期待されます。
見落とせない2つの経過措置
今回の明確化には、移行のための経過措置が2つ設けられています。いずれも、令和8年3月31日時点で対象の届出を行っている病棟・病室が対象です。
1つ目は、在宅復帰率と在宅復帰機能強化加算に関する措置です。これらの計算は、令和9年5月31日まで従前の例によることができます。2つ目は、特定入院料の種類数制限に関する措置です。こちらは、当分の間、新基準に該当するものとみなされます。
自院で確認しておきたいこと
改定を受けて、まず確認したいのは自院の届出状況です。病棟ごとに、特定入院料の届出数と、令和8年3月31日時点のステータスを把握しておきましょう。
次に、在宅復帰率への影響を試算します。新しい除外ルールで計算し直すと、数値が変動する病棟が出る可能性があります。経過措置の期限から逆算し、必要なら病棟の機能再編や届出の整理を計画に落とし込んでおくと安心です。
よくある質問(FAQ)
- 在宅復帰率の計算から除外されるのは、どのような患者ですか?
- 退院時に他の入院料を届け出ている病床・病室の患者と、短期滞在手術等基本料を算定する患者が、新たに除外対象に加わりました。従来から除外されている再入院・転棟・死亡退院などとあわせて計算対象から外れます。この扱いは、急性期一般入院料1などの自宅等退院割合と、療養病棟の在宅復帰機能強化加算の両方に適用されます。
- 1病棟で届け出られる特定入院料は何種類までですか?
- 最大2種類までです。従来は明確な上限がありませんでしたが、病棟が1つの看護単位として機能すべきという原則から、令和8年度改定で2種類までと規定されました。なお、令和8年3月31日時点で届出を行っている病棟・病室については、当分の間、新基準に該当するものとみなす経過措置が設けられています。
- 経過措置はいつまで適用されますか?
- 措置の内容によって異なります。在宅復帰率と在宅復帰機能強化加算の計算は、令和9年5月31日まで従前の例によることができます。特定入院料の2種類制限は、当分の間、新基準に該当するものとみなされます。いずれも、令和8年3月31日時点で対象の届出を行っている病棟・病室が対象です。
まとめ
令和8年度改定による患者割合計算の明確化は、現場の事務負担を軽減し、評価の公平性を高める見直しです。ポイントは、在宅復帰率の除外対象、特定入院料の通則化、そして1病棟2種類までの制限の3つでした。経過措置を活用しながら、自院の届出状況と病棟戦略を早めに確認しておきましょう。