病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】訪問看護医療情報連携加算とは|月1回1,000円の算定要件と施設基準を実務目線で解説

「医師の在宅医療情報連携加算は令和6年度改定で評価されたのに、訪問看護はなぜ評価されないのか」。そんな現場の声に応えるかたちで、令和8年度診療報酬改定では「訪問看護医療情報連携加算」が新設されます。本記事では、訪問看護ステーションの管理者・実務担当者の方が「自施設で算定できるのか」「届出に向けて何を準備すべきか」を判断できるよう、実務目線で要点を整理しました。

そもそも訪問看護医療情報連携加算とは何か

訪問看護医療情報連携加算とは、訪問看護ステーションの看護師等が他職種のICT記録情報を活用して計画的管理を行った場合に、月1回1,000円を所定額に加算できる新設評価です。算定対象は訪問看護管理療養費を算定する利用者に限られます。

ポイントは「ICT情報の活用」と「計画的管理への反映」の2つが揃って初めて算定できる点です。情報を閲覧するだけでは算定要件を満たさないため、訪問看護計画書への落とし込みまでを業務フローに組み込む必要があります。

なぜ今、この加算が新設されたのか

訪問看護ステーションの現場では、すでにICT連携が広く普及しています。令和5年(2023年)時点で、ICTを他事業所との連携に利用している訪問看護ステーションは87.8%に達しています。また別の調査では、ICTによる関係機関との平時からの連携体制を構築している訪問看護ステーションは58.1%に達しています。

一方で、令和6年度改定では医師側に「在宅医療情報連携加算」が新設されたものの、訪問看護側を評価する仕組みは存在しませんでした。現場の実態と診療報酬上の評価に大きな乖離があったわけです。この乖離を是正するため、令和8年度改定で訪問看護側にも新たな加算が新設される運びとなりました。

自施設で算定できるか?5つのチェックポイント

「自施設で算定できるかどうか」を判断するための5つのチェックポイントを整理しました。

チェック1:対象患者の要件を満たしているか

算定対象は「訪問看護管理療養費を算定する利用者」のうち、「在宅で療養を行っている通院困難な者」です。事前に患者本人の同意を得る必要があります。同意取得の手順を運用ルールに組み込んでおきましょう。

チェック2:算定する職員は「看護師等」か

ここは見落としやすい注意点です。算定できるのは「看護師等」であり、准看護師による業務は対象外とされています。シフト編成や記録の管理にあたっては、誰が情報活用と計画的管理を行ったかを明確にする必要があります。

チェック3:連携対象職種が利用者に関わっているか

連携対象となるのは、訪問看護ステーションと連携する保険医療機関の保険医、歯科訪問診療を実施している保険医療機関の保険医である歯科医師等、訪問薬剤管理指導を実施している保険薬局の保険薬剤師、管理栄養士、介護支援専門員、相談支援専門員等です。ただし「当該利用者に関わっている」ことが前提条件となります。

チェック4:ICTによる電子的手段で情報を取得しているか

電子情報処理組織やその他の情報通信技術による情報取得が要件です。電話、FAX、紙の情報提供書による情報共有は加算の対象外となります。すでに使用している連携ツールが「ICTによる電子的手段」に該当するかを確認しておきましょう。

チェック5:閲覧だけでなく計画的管理に反映しているか

情報を「見るだけ」では算定できません。取得した情報を訪問看護計画書に落とし込み、実際のケアに反映させることが絶対条件です。記録の様式にも工夫が必要です。

届出に必須となる4つの施設基準

加算を算定するには、地方厚生局長等への届出と、以下4つの施設基準への適合が必要です。

第1に、ICTによる常時確認体制の構築です。通院困難な利用者の診療情報等について、電子的手段を用いて常時確認できる体制を整える必要があります。

第2に、計画的管理を行うための十分な体制整備です。関係機関との平時からの連携体制を構築し、ICT情報を活用した計画的管理ができる業務体制を整えます。

第3に、施設内掲示です。連携体制を構築しているステーションであることを、施設内の見やすい場所に掲示します。

第4に、ウェブサイト掲載です。施設内掲示と同じ内容を、原則としてウェブサイトに掲載することが求められます。

なお、ウェブサイト掲載要件には、令和8年9月30日までの経過措置が設けられています。一方で施設内掲示には経過措置が設けられていないため、改定施行と同時に対応できるよう準備を進めてください。

最大の落とし穴:他加算との「併算定不可」ルール

実務担当者が最も注意すべきは、他の医療情報連携加算との併算定不可の取扱いです。算定漏れではなく「算定してはいけなかった月に算定した」という逆方向のミスが発生しやすいポイントです。

併算定不可となるパターンは2つあります。第1に、訪問看護側で「在宅患者連携指導加算」を算定している場合、本加算は算定できません。第2に、同一利用者に対して医師側が「在宅医療情報連携加算」(在宅時医学総合管理料の注15や在宅がん医療総合診療料の注9に規定する加算)を算定した月は、訪問看護側で本加算を算定できません。

したがって、実務上は医療機関側との月単位での算定状況の共有・調整ルートを事前に確立しておくことが不可欠です。月初に「今月、先生側で在宅医療情報連携加算を算定する予定はありますか」と確認するフローを業務に組み込むとよいでしょう。

令和8年度施行に向けた準備ステップ

最後に、令和8年度の施行に向けて、訪問看護ステーションが取り組むべき準備ステップを整理します。

まず、現状のICT連携体制を棚卸ししてください。どの医療機関・薬局・ケアマネジャーと、どのツールで情報共有しているかを一覧化することが出発点です。

次に、連携先の各機関との「平時からの連携体制」を文書化します。施設内掲示とウェブサイト掲載に向けて、連携内容を整理する作業が必要となります。

そして、業務フローの標準化を進めます。ICT情報の閲覧→訪問看護計画書への反映→記録というプロセスを、誰が担当しても同じように実行できる形に整えてください。

最後に、医療機関側との算定状況の確認ルートを確立します。これが併算定ミスを防ぐ最大の防波堤となります。

まとめ:ICT活用を「適正な評価」につなげるために

令和8年度診療報酬改定で新設される訪問看護医療情報連携加算は、これまで評価されてこなかった訪問看護ステーションのICT連携を、ようやく適正に評価する仕組みです。月1回1,000円という金額自体は大きくないかもしれませんが、地域医療における訪問看護ステーションの「情報ハブ」としての役割が認められたという意味で、制度的に重要な一歩といえます。

算定にあたっては、施設基準の整備、業務フローの標準化、医療機関側との連携ルート確立という3つの実装作業が必要です。施行までの限られた期間で、計画的に準備を進めていきましょう。

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