病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】歯科の評価見直し・明確化とは|新設3項目と施設基準撤廃を解説

令和8年度診療報酬改定では、歯科点数表について、歯科診療の実態を踏まえた整理が行われます。個別改定項目Ⅲ-7の⑫「歯科診療の実態に応じた評価の見直し・明確化」がそれにあたります。新しい加算が並ぶ項目ではありませんが、レセコンのコード更新、届出業務の停止、カルテ記載の追加など、改定当日から院内の運用に影響する内容が含まれています。本稿では、何がどう変わり、誰が何をすべきかという視点で整理します。

なぜ今、歯科点数表の整理が必要なのか

見直しの背景には、点数表と診療実態とのずれが積み重なってきたことがあります。

ずれの1つ目は、解釈が示されていない項目の存在です。画像診断で2枚目以降をどう算定するか、病理診断で口腔をいくつの臓器として数えるかといった判断が、これまで現場に委ねられてきました。

2つ目は、内容が重複する項目や、算定実績のない項目の残存です。暫間的な装置は複数の項目に分かれており、在宅医療に関する一部の項目は歯科では算定されない状態が続いていました。

3つ目は、名称と実態の乖離です。う蝕処置のようにう蝕以外でも行われている処置が、名称上はう蝕を前提としたままになっていました。

今回の⑫は、これらを「明確化」「統廃合と新設」「算定要件の見直し」の3方向で整理します。

明確化:判断が分かれていた3つのルールが示される

明確化の対象は、画像診断、病理診断、歯肉剥離掻爬手術です。

画像診断では、2枚目以降の算定方法が通則に一本化されます。第1の診断は所定点数、第2の診断以後は所定点数の100分の50という考え方自体は現行どおりです。変わるのは、これまで示されていなかった用語の定義が留意事項通知に新設される点です。「同一の部位」「同時に」「2枚以上」「同一の方法」の4つが定義され、なかでもデジタル撮影とアナログ撮影を同一の方法として扱う旨が明記されます。また、処置後や手術後の評価を目的とした撮影は「同時に」に該当しません。なお、100分の50となるのは診断料の第2の診断以後であり、撮影料は現行どおり第2枚目から第5枚目までが100分の50、第6枚目以後は算定できません。第1枚目では診断が困難な異なる疾患を診断する目的で撮影した場合は、所定点数により算定できます。

病理診断では、医科点数表のN000からN002までについて、口腔を1臓器として算定する取扱いが示されます。例外は、別の原因で病変が独立して生じ、組織学的形態が異なる場合です。この場合は2回を限度として算定できます。

歯肉剥離掻爬手術では、算定の前提となる術式が示されます。歯肉弁の剥離、明視下での不良肉芽の除去、汚染歯根面のスケーリング・ルートプレーニング、歯肉弁の復位縫合という一連の手技を、歯周ポケットの除去または減少を目的として行った場合が対象です。実施内容がこの流れに沿っていることを、カルテからも読み取れるようにしておく必要があります。

統廃合と新設:暫間歯冠補綴装置48点と新たな3項目

統廃合の中心は、暫間的な装置の一本化です。テンポラリークラウン(34点)、歯周治療用装置(冠形態)、リテーナー、レジン連続冠固定法による暫間固定が、暫間歯冠補綴装置(1歯につき48点)に統合されます。印象採得、咬合採得、仮着、調整指導、修理、除去などの基本的な技術料と保険医療材料料は所定点数に含まれ、別に算定できません。これに伴い、暫間固定装置修理(70点)と暫間固定装置の除去(30点)は削除されます。なお、歯周治療用装置のうち床義歯形態のものは、口腔内装置に位置付けられます。

一方、算定実績のない項目は歯科点数表から削除されます。救急搬送診療料、退院前在宅療養指導管理料、在宅麻薬等注射指導管理料、在宅腫瘍化学療法注射指導管理料、在宅悪性腫瘍患者共同指導管理料が対象です。歯髄切断は、失活歯髄切断(72点)が削除され、生活歯髄切断(233点)のみが残ります。

名称の見直しもあわせて行われます。う蝕処置は単純処置(18点)、う蝕歯即時充填形成は即時充填形成(128点)、う蝕歯インレー修復形成はインレー修復形成(120点)になります。点数は据え置きで、名称のみの変更です。

新設される評価は次の3項目です。

項目 点数 主な要件
ディスキング 1歯につき40点 叢生に対して歯の隣接面を削除した場合
補綴前処置 1装置につき40点 義歯の製作・修理に伴う鉤歯等の削除。行った日に1装置1回。診療録への要点記載が必要
歯の破折片除去 1歯につき30点 非観血的または簡単な切開による除去。う蝕除去に伴うものは対象外

いずれも従来は咬合調整の一部、または他項目の準用で算定していた行為です。独立した項目になることで、算定漏れが起きやすくなる点に注意が必要です。

算定要件の見直し:麻酔薬剤料の拡大と届出の廃止

算定要件の見直しは3点あります。

麻酔薬剤料については、算定できる項目が広がります。処置の部では、従来の生活歯髄切断と抜髄に歯髄保護処置(1または2)が加わります。歯冠修復及び欠損補綴の部では通則11が新設され、歯冠形成(1に限る。)を行う場合の麻酔薬剤料を算定できるようになります。

施設基準については、口腔細菌定量検査、咀嚼能力検査、咬合圧検査の3検査で撤廃されます。地方厚生局長等への届出なしに算定できるようになる一方、算定回数の上限は現行のまま維持されます。

併算定については、在宅歯科医療情報連携加算(月1回100点)を算定する場合に、在宅患者連携指導料(C007)を別に算定できない旨が明記されます。同じ取扱いは、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料および小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の情報連携加算にも適用されます。

改定に向けて何をすべきか:担当者別の対応

今回の変更は、担当する業務によってやるべきことが分かれます。

レセコン・システム担当は、コードの入れ替えが中心です。暫間歯冠補綴装置への統合、新設3項目の追加、削除項目のマスタ更新、そして名称変更の反映を行います。

医療事務・受付担当は、運用ルールの更新が中心です。口腔機能3検査の届出業務を停止し、画像診断の50%算定のロジックを確認し、情報連携加算とC007の併算定チェックを組み込みます。

歯科医師・歯科衛生士は、記録と算定漏れの防止が中心です。歯肉剥離掻爬手術の4工程をカルテに残し、補綴前処置では前処置の要点を記載し、歯髄保護処置や歯冠形成での麻酔薬剤料を確実に算定します。

よくある質問(FAQ)

暫間歯冠補綴装置に統合されると、装置の修理や除去は別に算定できますか。
別に算定できません。印象採得、咬合採得、仮着、調整指導、修理、除去などの基本的な技術料と保険医療材料料は、暫間歯冠補綴装置(1歯につき48点)の所定点数に含まれます。これに伴い、暫間固定装置修理(70点)と暫間固定装置の除去(30点)は削除されます。ただし、広範囲顎骨支持型補綴の「1 ブリッジ形態のもの(3分の1顎につき)」を行う患者にリテーナーを製作した場合は、所定の期間内に1回に限り算定でき、スクリュー、アバットメント、シリンダーに限り特定保険医療材料料を別に算定できます。
口腔機能に係る検査の施設基準が撤廃されると、算定回数の上限も変わりますか。
算定回数の上限は変わりません。撤廃されるのは、口腔細菌定量検査、咀嚼能力検査、咬合圧検査における地方厚生局長等への届出です。算定回数は現行どおりで、口腔細菌定量検査は月2回または3月に1回、咀嚼能力検査と咬合圧検査は3月に1回が上限です。顎変形症に係る手術を実施する患者では、手術前は1回、手術後は6月に1回となります。
新設される歯の破折片除去は、う蝕除去に伴う場合も算定できますか。
う蝕除去に伴うものは対象外です。歯の破折片除去(1歯につき30点)は、一部残存した歯の破折片を非観血的あるいは簡単な切開で除去した場合に、歯数に応じて算定します。従来は口腔内軟組織異物(人工物)除去術の「1 簡単なもの」で準用算定していた行為です。浸潤麻酔のもとで除去した場合は、浸潤麻酔料と使用麻酔薬剤料をそれぞれ算定できます。

まとめ

令和8年度改定の⑫は、歯科点数表を診療の実態に合わせて整える見直しです。新しい加算は少ない一方、コードの統合、届出の停止、カルテ記載の追加など、院内の運用に直接効く変更が並びます。改定前に担当者別の対応を割り振っておけば、施行後の混乱を避けられます。

なお、本稿の内容は個別改定項目(改定案)に基づくものです。最終的な取扱いは、今後の告示および留意事項通知でご確認ください。

詳細な背景や現場への影響については、LISTENのポッドキャストエピソードでも解説していますので、ぜひお聴きください。