令和8年度診療報酬改定で、生活習慣病管理料(Ⅰ)及び(Ⅱ)が見直されます。生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進する観点から、評価と要件の両面で変更が行われます。この見直しは、「かかりつけ医機能等の評価」の個別改定項目に位置づけられており、医療機関の柔軟な治療管理と事務負担の軽減を両立するものです。
今回の改定は、大きく5つのポイントで構成されます。第1に、生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲が大幅に縮小されます。第2に、在宅自己注射指導管理料との併算定制限が一部緩和されます。第3に、眼科・歯科医療機関連携強化加算(各60点)が新設されます。第4に、生活習慣病管理料(Ⅰ)に血液検査等の実施要件が追加されます。第5に、療養計画書における患者署名が不要になります。本記事では、改定の背景とあわせて、これら5つの変更点を整理します。
なぜ見直されるのか:包括範囲と事務負担の課題
今回の見直しの背景には、3つの課題があります。
1つ目は、生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲が広すぎるという課題です。現行制度では、がんや認知症など生活習慣病とは直接関係の乏しい疾患の医学管理や、救急対応に関する評価まで包括されています。そのため、生活習慣病を主病とする患者が複雑な併存疾患を抱えている場合でも、これらの管理を別途評価できない構造がありました。
2つ目は、生活習慣病管理料(Ⅰ)における検査実施頻度の低下懸念です。管理料(Ⅰ)は検査費用が包括されているため、定期的な検査の実施頻度が低くなる可能性が指摘されていました。生活習慣病の管理において、ガイドラインが求める定期検査の実施をどう担保するかが課題となっていました。
3つ目は、療養計画書への署名をはじめとする形式的な事務作業の負担です。署名の取得にかかる手間が、医師と患者の対話時間を圧迫する要因となっていました。
これらの課題に対応するため、今回の改定では「疾病管理の質の担保」と「事務負担の軽減」の両立を目指した見直しが行われます。
令和8年度改定で変わる5つのポイント
5つの変更点を順に整理します。各ポイントの詳細な解説は、メルマガ記事をご覧ください。
ポイント1:生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲の縮小
生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲から、21項目の医学管理料等が除外されます。除外の趣旨は、総合的な治療管理の範囲を超える医学管理、生活習慣病と直接関係の乏しい疾患の管理、時間外・救急対応、情報提供等の4つの観点で整理されています。これにより、併存疾患の管理や救急対応を別途算定できるようになります。
ポイント2:在宅自己注射指導管理料との併算定制限の一部緩和
糖尿病を主病とする患者について、在宅自己注射指導管理料との併算定制限が一部緩和されます。糖尿病に対する適応薬剤(インスリン製剤、GLP-1受容体アゴニスト、インスリン・GLP-1受容体アゴニスト配合剤)を投与しており、かつ在宅自己注射指導管理料を算定している場合に限り、生活習慣病管理料の算定が制限されます。骨粗鬆症など糖尿病以外の疾患に対する在宅自己注射であれば、併算定が可能になります。
ポイント3:眼科・歯科医療機関連携強化加算の新設(各60点)
糖尿病の重症化予防を目的として、眼科医療機関連携強化加算(60点)と歯科医療機関連携強化加算(60点)が新設されます。糖尿病を主病とする患者に対して、患者の同意を得て眼科や歯科への受診に必要な連携を行った場合に、患者1人につき年1回算定できます。
ポイント4:生活習慣病管理料(Ⅰ)への血液検査等の実施要件の追加
生活習慣病管理料(Ⅰ)について、原則として必要な血液検査等を少なくとも6月に1回以上行うことが要件化されます。ガイドラインに沿った定期検査の実施を担保し、疾病管理の質を確保する目的です。
ポイント5:療養計画書における患者署名の不要化
生活習慣病管理料(Ⅰ)及び(Ⅱ)の療養計画書について、初回作成時の患者署名要件が撤廃されます。ただし、患者の同意を得ること自体は引き続き必要です。口頭での対話を通じた治療方針の共有がより重要になります。
まとめ:質の担保と事務負担軽減の両立
令和8年度診療報酬改定における生活習慣病管理料の見直しは、5つのポイントで構成されます。包括範囲の縮小と併算定制限の緩和により、現場の実態に即した柔軟な算定が可能になります。連携加算の新設と検査要件の追加により、疾病管理の質が担保されます。署名の不要化により、事務負担が軽減されます。これらの見直しは、いずれも生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進するという基本的な方向性に沿ったものです。
詳細な解説については、ポッドキャスト番組(令和8年度改定|生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)5つの見直しポイントを解説)でもお話ししていますので、あわせてご活用ください。