令和8年度診療報酬改定では、結核患者の受入体制を守るための見直しが行われます。結核の入院患者は減り続けており、結核病棟を単独で維持することが難しくなっているためです。本稿では、令和8年度診療報酬改定の個別改定項目「Ⅲ-6-③ 結核に係る入院医療提供体制の確保」を取り上げます。
見直しは3つの柱で構成されます。1つ目が、ユニット化病床における重症度、医療・看護必要度の評価対象からの除外です。2つ目が、モデル病床等における必要度と平均在院日数の算出対象からの除外です。3つ目が、結核病棟入院基本料の入院期間に応じた加算の増点であり、引上げ幅は最大200点に達します。
なお、本記事の内容はLISTENのポッドキャストエピソードでも詳しくお話ししていますので、併せてご活用ください。
改定の背景:患者減少と施設基準のミスマッチ
見直しの背景には、結核患者の減少と、施設基準との構造的なミスマッチがあります。
結核患者の減少は、統計にはっきり表れています。日本は2021年に結核低まん延国となり、2024年の罹患率は人口10万人当たり8.1まで低下しました。結核病床の利用率も、1984年の56.5%から2023年の26.8%へと下がっています。年間の菌喀痰塗抹陽性肺結核患者数が100人未満、結核病床数も100床未満という県が多くを占める状況です。
この減少に対応するため、都道府県は3つの類型を組み合わせて受入体制を築いてきました。1つ目が、小規模な結核病棟を一般病棟と併せて1看護単位とする「ユニット化病床」です。2つ目が、結核患者収容モデル事業で指定された一般病床または精神病床、いわゆる「モデル病床」です。3つ目が、他の患者と同室にしない条件のもとで結核患者を受け入れる「感染症病床」です。
ところが、この3類型に入院する結核患者は、一般病棟の施設基準と相性が悪いという問題を抱えていました。結核の入院は、排菌が続いている間の感染対策が中心となります。全身状態が落ち着いた後も入院を継続する期間があるため、日々の医療処置の密度は下がりやすくなります。実際、7対1の結核病棟における重症度、医療・看護必要度Ⅱの該当患者割合は5.6%であり、急性期一般入院料1の基準である20%を大きく下回ります。平均在院日数も、モデル病床の結核患者は59.5日と、基準の16日を大幅に超えています。
つまり、合併症を持つ結核患者を受け入れるほど、一般病棟の施設基準の達成が遠のく構造になっていました。今回の見直しは、この構造を是正するものです。
見直しの3つの柱
見直しは、評価の対象から結核患者を外す2つの規定と、点数を引き上げる1つの規定からなります。前者が施設基準のハードルを下げ、後者が体制維持のコストを補います。順に確認します。
柱1:ユニット化病床の必要度評価から結核患者を除外
第1の柱は、ユニット化病床において、重症度、医療・看護必要度の評価対象から結核患者を外す取扱いです。施設基準の通知では、従来から除外されていた産科患者と15歳未満の小児患者に、結核患者が加わりました。
ただし、この除外には条件が付きます。適用されるのは、一般病棟と結核病棟の両病棟全体で評価を行う場合だけです。7対1入院基本料の結核病棟のみでは必要度の基準を満たせないときに、両病棟全体での評価が認められており、その場合に限って結核患者を外せます。原則どおり2つの病棟を別々に評価しているのであれば、結核患者はこれまでどおり評価の対象です。
なお、ユニット化病床のその他の要件は変わりません。看護配置基準が同じ入院基本料を算定すること、結核病床を構造上区分するなど医療法の構造設備基準を守ること、平均在院日数を一般病棟のみで計算することは、いずれも従来どおりです。
柱2:モデル病床等の必要度と平均在院日数から結核患者を除外
第2の柱は、モデル病床等において、必要度と平均在院日数の双方から結核患者を外す取扱いです。合併症や精神疾患を抱えて入院が長引く患者が一般病棟の評価に含まれることで、基準の達成が難しくなっていた実態を踏まえた見直しといえます。
ここで押さえたいのが、2つの除外で判定の根拠が違うという点です。必要度の除外は、どの病床に入院しているかで決まります。対象となるのは、結核患者収容モデル事業を行う一般病床または精神病床に入院する場合と、感染症病床に入院する場合です。
これに対して、平均在院日数の除外は、患者の状態で決まります。施設基準の別表第二に新しく設けられた区分では、結核を主病とする患者であって、次の3要件のいずれかに該当することが求められます。1つ目が、合併症が重症または専門的高度医療若しくは特殊医療を必要とすること。2つ目が、合併症が結核の進展を促進しやすい病状にあること。3つ目が、入院を要する精神障害者であることです。あわせて、感染症病床に入院する結核を主病とする患者も、別の区分で除外の対象となります。
この見直しにより、平均在院日数59.5日という長期の患者が算出の対象から外れ、該当患者割合が6.1%という層が必要度の評価の対象から外れます。その結果、モデル病床等を持つ一般病棟でも、施設基準の達成が現実的な水準に近づきます。
柱3:結核病棟入院基本料の入院期間加算を増点
第3の柱は、結核病棟入院基本料の入院期間に応じた加算の増点です。4つの期間区分すべてで点数が引き上げられます。
- 14日以内の期間:400点 → 600点(+200点)
- 15日以上30日以内の期間:300点 → 480点(+180点)
- 31日以上60日以内の期間:200点 → 360点(+160点)
- 61日以上90日以内の期間:100点 → 120点(+20点)
特別入院基本料等を算定する場合も、同様に引き上げられます。14日以内が320点から500点へ、15日以上30日以内が240点から400点へ、31日以上60日以内が160点から300点へと変わります。なお、61日以上90日以内には、特別入院基本料等の区分が設定されていません。
引上げ幅を倍率で見ると、設計の意図が読み取れます。60日目までが1.5倍から1.8倍であるのに対し、61日目以降は1.2倍にとどまります。長期入院を促すのではなく、隔離体制の構築や感染対策でコストがかさむ受入れの初期から中期を、集中的に支える形です。
間違えやすい3つのポイント
ここまでの内容には、読み違えやすい箇所が3つあります。届出や日々の評価に直結するため、個別に確認します。
第1に、ユニット化病床であれば必ず結核患者を除外できる、というわけではありません。除外できるのは両病棟全体で評価する場合だけです。自院が現在どちらの方法で評価しているかを、まず確認してください。
第2に、加算の増点は結核病棟入院基本料のものです。モデル病床や感染症病床に入院する結核患者は、一般病棟や精神病棟の入院基本料等を算定するため、この加算の対象になりません。増点の効果を試算する際は、どの病床で算定しているかを取り違えないようにしましょう。
第3に、資料上、感染症病床に関する引用条項が2か所で食い違っています。平均在院日数側は医療法施行規則第10条第5号、必要度側は同条第4号と記載されています。正式な告示や通知が発出された際に、条項を確認することをおすすめします。
4月までに進めたい実務対応
実務では、3つの作業を順に進めることになります。病床類型の確認、記録方法の整備、収支の再試算です。
まず、自院の結核病床がどの類型に当たるかを確認します。ユニット化病床、モデル病床、感染症病床のいずれかによって、適用される除外規定が変わるためです。ユニット化病床の場合は、必要度の評価方法もあわせて確認しておきます。
次に、除外対象となる患者の判定基準と記録方法を整えます。必要度の除外は入院している病床の類型を根拠とし、平均在院日数の除外は結核を主病とすることと3要件への該当を根拠とします。根拠が異なる以上、どちらの除外に当たるのかを患者ごとに記録しておく必要があります。
最後に、増点を織り込んで収支を試算します。入院期間の区分ごとに点数が変わるため、レセプトコンピュータのマスタ更新が欠かせません。経営層への報告では、施設基準を維持できることによる減収の回避と、加算増点による増収を分けて示すと、改定の効果が伝わりやすくなります。
よくある質問(FAQ)
- ユニット化病床であれば、結核患者は必ず重症度、医療・看護必要度の評価対象から外れますか。
- 外れるとは限りません。除外できるのは、一般病棟と結核病棟の両病棟全体で必要度の評価を行う場合に限られます。原則どおり一般病棟と結核病棟を別々に評価している場合は、結核患者は従来どおり評価の対象に含まれます。自院がどちらの方法で評価しているかを確認してください。
- モデル病床や感染症病床に入院する結核患者も、入院期間加算の増点の対象になりますか。
- 対象になりません。今回増点されるのは結核病棟入院基本料の入院期間に応じた加算です。モデル病床や感染症病床に入院する結核患者は一般病棟や精神病棟の入院基本料等を算定するため、この加算は算定できません。増点の効果を試算する際は、どの病床で算定しているかを確認してください。
- 重症度、医療・看護必要度の除外と平均在院日数の除外は、同じ基準で判定してよいですか。
- 判定の根拠が異なるため、分けて判定する必要があります。必要度の除外は、モデル事業を行う一般病床や精神病床、感染症病床といった入院先の病床類型で決まります。一方、平均在院日数の除外は、結核を主病とすることに加え、合併症が重症または専門的高度医療若しくは特殊医療を必要とすること、合併症が結核の進展を促進しやすい病状にあること、入院を要する精神障害者であることのいずれかに該当するかで決まります。
まとめ
令和8年度診療報酬改定は、評価の物差しと点数の両面から、結核患者の受入体制を支えます。ユニット化病床では両病棟全体で評価する場合に結核患者を必要度の対象から外し、モデル病床等では必要度と平均在院日数の双方から外します。あわせて、結核病棟入院基本料の入院期間加算を最大200点増点します。患者減少が続くなかでも結核医療を提供し続けられるよう、自院の病床類型を確認し、記録と試算の準備を進めておきたいところです。