令和8年度診療報酬改定では、持続的な物価高騰により増加した医療機関等の物件費負担に対応するため、基本診療料の見直しと入院時の食費・食事療養に関する制度改正が行われました。この対応は、大きく3つの施策で構成されています。本記事では、初再診料・入院料の引上げから食事療養の見直しまで、物件費高騰への対応策を解説します。
改定の背景——物件費高騰と医療機関の経営悪化
背景には、医療機関が直面する人件費や医療材料費、食材料費、光熱水費などの高騰があります。特に全面委託の約7割、一部委託の約5割の医療機関が、委託事業者からの値上げの申し出に対応していたという実態や、光熱水費の基準額(総額)が平成18年の制度創設以来据え置かれていたという課題がありました。これらは医療システムの想定を超える変動であり、医療の質を維持するための対応が急務となっていました。
物件費高騰への3つの対応
1. 初再診料等・入院基本料等の引上げと物価対応料の新設
第1に、物件費の高騰を踏まえた対応として、初再診料等・入院基本料等の引上げと「物価対応料」が新設されました。
緊急対応として、医科では再診料が75点から76点に1点、歯科では歯科初診料が267点から272点に5点引き上げられ、急性期一般入院料1は1,688点から1,874点へ186点の増点となりました。さらに、将来の物価上昇を見越した「物価対応料」が新設され、令和9年6月以降に全区分で点数が2倍になる段階的な仕組みが導入されています。
詳しくは「【令和8年度改定】物価対応料の新設と初再診料・入院料の引上げを徹底解説」をご覧ください。
2. 入院時の食費及び光熱水費の基準の見直し
第2に、入院時の食費及び光熱水費の基準が見直されました。
具体的には、食費の基準額が1食あたり40円、光熱水費の基準額が1日あたり60円引き上げられます。食費は令和6年6月、令和7年4月に続く3回連続の引上げであり、光熱水費は制度創設以来初の基準額(総額)の増額です。これにより、食材料費や光熱費の高騰による医療機関の負担軽減が期待されます。
詳しくは「令和8年度改定|入院時の食費が1食40円・光熱水費が1日60円引き上げへ」をご覧ください。
3. 入院時の食事療養に係る見直し
第3に、入院時の食事療養に係る見直しが行われました。
嚥下調整食が特別食加算の対象として新たに追加されました。適切な嚥下調整食の提供は、患者のエネルギー摂取量の増加やADLの改善に寄与することが示されています。また、行事食やハラール食などの特別メニューの追加料金について、1食あたり17円の標準額が削除され、医療機関が柔軟に金額を設定できるようになりました。
詳しくは「【令和8年度改定】入院時の食事療養が変わる|嚥下調整食の新評価と特別料金の2つの見直し」をご覧ください。
まとめ——3つの対応と今後の留意点
令和8年度診療報酬改定における物件費高騰への対応は、初再診料等・入院基本料等の引上げと物価対応料の新設、食費・光熱水費の基準額引上げ、そして食事療養の質の向上という3段構えの施策となっています。各医療機関は、自施設に関連する改定内容を確認し、令和9年6月以降の物価対応料の倍増も見据えた対応が求められます。病院経営の安定が最終的に患者へのサービスに還元されるという視点を持ち、制度の適切な運用を図ることが重要です。
本記事の内容は、ポッドキャスト番組でも詳しく解説しています。音声で確認したい方は、ぜひLISTENのエピソードをお聴きください。