病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】かかりつけ医機能5項目の対応チェックリスト|機能強化加算・地域包括診療加算ほか

令和8年度診療報酬改定では、かかりつけ医機能の評価(個別改定項目Ⅱ-3)に関連する5項目が大きく見直されます。本記事では、診療所の実務担当者が「何を、いつまでに対応すべきか」という観点から、5項目の対応事項をチェックリスト形式で整理します。施行日までの即時対応と、令和9年5月31日までの中長期対応に分けて解説しますので、自院の対応漏れがないかご確認ください。

改定の背景|2つの方向性で読み解く

令和8年度改定のかかりつけ医機能の見直しは、「体制整備の強化」と「対象患者・疾患の適正化」という2つの方向性のもとで設計されています。

「体制整備の強化」とは、災害対応・データ提出・夜間休日対応など、診療所が地域医療で果たすべき機能の底上げを図るものです。機能強化加算へのBCP策定要件追加、地域包括診療加算等への外来データ提出加算新設、時間外対応体制加算の点数引き上げが該当します。

「対象患者・疾患の適正化」とは、実態に即して対象範囲を見直すと同時に、本当に評価すべき患者層へ対象を拡大するものです。生活習慣病管理料の包括範囲縮小、特定疾患療養管理料のNSAIDs除外、地域包括診療加算等の対象患者拡大が該当します。

この2つの方向性を意識すると、5項目の改定が「単発の要件変更」ではなく「診療所機能の設計図のアップデート」であることが見えてきます。以下、項目ごとに「いつまでに / 何をするか / 確認ポイント」を整理します。

機能強化加算|BCP策定が最優先課題

機能強化加算では、施設基準に3つの新要件が追加されます。点数(80点)に変更はありませんが、対応事項は5項目の中で最も多い加算です。

▶ いつまでに:令和9年5月31日(BCP策定の経過措置期限)

▶ 何をするか:

  • 業務継続計画(BCP)を策定する
  • 期限付き指定の有無を確認する(健康保険法第68条の2第1項)
  • 外来データ提出加算の届出体制を検討する(努力義務)

▶ 確認ポイント:

BCP策定は、計画書を作成するだけでは要件を満たしません。計画に従った措置の実施と、定期的な見直しまでが要件に含まれます。厚生労働省が公表する「医療機関(災害拠点病院以外)における災害対応のためのBCP作成の手引き」を参考に、自院の実情に合った計画を策定し、令和9年5月末までに運用体制を整える必要があります。経過措置終了後にBCPが整備されていない場合、算定要件を満たさなくなりますので、早めの着手が肝要です。

→ 詳細は【令和8年度改定】機能強化加算に3つの新要件|BCP策定・期限付き指定・データ提出をご参照ください。

生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)|包括範囲縮小で算定機会が拡大

生活習慣病管理料は、5項目の中で「算定機会が増える」最大のチャンスとなる項目です。包括範囲の大幅な縮小により、これまで算定できなかった医学管理料が併算定可能になります。

▶ いつまでに:施行日まで(算定フローの再構築)

▶ 何をするか:

  • 生活習慣病を主病とする患者で、併存疾患のある方をリストアップする
  • 包括範囲から除外される医学管理料(がん患者指導管理料、認知症専門診断管理料、救急外来医学管理料など)の算定フローを再構築する
  • 療養計画書のフォーマットから患者署名欄を削除する
  • 生活習慣病管理料(Ⅰ)算定患者の血液検査実施状況を確認する(原則6月に1回以上)

▶ 確認ポイント:

特に注目すべきは、糖尿病患者への眼科・歯科連携強化加算(各60点・年1回)の新設です。糖尿病の重症化予防を目的とした他科連携が、加算として明確に評価されます。すでに眼科・歯科への紹介を行っている医療機関は、年1回算定のフローに乗せる仕組みづくりが必要です。

→ 詳細は令和8年度改定|生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)5つの見直しポイントを解説をご参照ください。

特定疾患療養管理料|NSAIDs除外でレセコン更新が必須

特定疾患療養管理料は、対応漏れによる返戻リスクが最も高い項目です。胃潰瘍および十二指腸潰瘍について、NSAIDs投与中の患者を除外する条件が新たに設けられます。

▶ いつまでに:施行日まで(レセコン・電子カルテのロジック更新)

▶ 何をするか:

  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍を主病として算定中の患者をリストアップする
  • 該当患者のNSAIDs処方状況を確認する(他科処方を含む)
  • 他の対象疾患を主病とした算定可否を再点検する
  • レセコン・電子カルテの算定ロジックを更新する(システムベンダーへの連絡)

▶ 確認ポイント:

NSAIDsには、ロキソプロフェン、ジクロフェナク、イブプロフェンなど多くの薬剤が含まれます。自院の処方だけでなく、整形外科や内科など他科からの処方も含めて確認する必要があります。改定の背景には、胃潰瘍関連で算定中の患者(約18.5万人)のうち約6.5%にNSAIDsが処方されていたNDBデータの実態があり、行政側の問題意識が強い領域です。

→ 詳細は令和8年度改定|特定疾患療養管理料の対象疾患にNSAIDs除外ルールが追加をご参照ください。

地域包括診療加算等|対象患者拡大で要介護患者の確認を

地域包括診療加算等は、5項目の中で変更点が最も多い項目です。対象患者の拡大により、算定対象が大幅に増える医療機関も見込まれます。

▶ いつまでに:施行日まで(対象患者のリストアップ)

▶ 何をするか:

  • 「慢性疾患1つ+要介護被保険者等」に該当する患者をリストアップする
  • 認知症加算の統合に伴う届出区分の見直しを行う
  • 連携薬局の24時間対応体制を再確認する(院内処方体制があれば緩和)
  • 外来データ提出加算(10点)の届出体制を検討する
  • 医療資源の少ない地域に該当する場合、医師配置要件の緩和(2名以上→1.4人以上)を確認する

▶ 確認ポイント:

最大の変更は対象患者の拡大です。これまでは「6疾病のうち2つ以上」が必須でしたが、改定後は「高血圧症のみを有する要介護認定患者」でも算定可能になります。介護保険の認定情報を持つ患者リストとカルテを照合し、新たに算定対象となる患者を漏れなく把握することが重要です。

→ 詳細は【令和8年度改定】地域包括診療加算等の6つの見直しポイント|対象患者拡大と認知症加算統合を解説をご参照ください。

時間外対応体制加算|名称変更による院内表記の更新を

時間外対応体制加算は、5項目の中で最も対応がシンプルな項目です。届出済み医療機関は、名称変更に伴う表記更新が中心となります。

▶ いつまでに:施行日まで(院内掲示・ホームページの更新)

▶ 何をするか:

  • 院内掲示の名称を「時間外対応加算」から「時間外対応体制加算」に変更する
  • ホームページ・パンフレット等の患者向け案内を更新する
  • 改定後の点数(加算1:7点、加算2:5点、加算3:4点、加算4:2点)をレセコンに反映する

▶ 確認ポイント:

名称変更は形式的な変更に見えますが、院内掲示や患者向け案内に旧名称が残っていると、患者からの問い合わせや厚生局の調査で指摘される可能性があります。施行日までに、院内のあらゆる表記を網羅的にチェックすることをお勧めします。

→ 詳細は【令和8年度改定】時間外対応体制加算とは?名称変更と点数引き上げの全容を解説をご参照ください。

実務対応の優先順位|即時対応と中長期対応の整理

ここまでの5項目を、対応期限と作業領域の2軸で整理します。優先順位を明確にし、自院のリソース配分にお役立てください。

▶ 最優先(中長期対応・体制整備):

  • BCP(業務継続計画)の策定・運用体制構築【令和9年5月31日まで】

▶ 施行日までの即時対応(システム・事務業務):

  • 特定疾患療養管理料のNSAIDs除外ロジック実装
  • 療養計画書フォーマットの更新(署名欄削除)
  • 時間外対応体制加算の名称変更に伴う院内表記更新

▶ 施行日までの即時対応(算定フロー再構築):

  • 生活習慣病管理料の併存疾患・他科連携の算定フロー整備
  • 地域包括診療加算の「慢性疾患1つ+要介護」患者リストアップ

▶ 中長期対応(検討・準備):

  • 外来データ提出体制の検討(機能強化加算・地域包括診療加算)

最優先はBCP策定です。経過措置期限(令和9年5月31日)までの猶予はあるものの、計画策定から運用体制構築までに最も時間がかかる項目です。施行日後すぐに着手することをお勧めします。

まとめ

令和8年度改定のかかりつけ医機能5項目への対応は、「施行日までの即時対応」と「令和9年5月31日までの中長期対応」に分けて進めることが効率的です。即時対応では、レセコン・電子カルテの更新、患者リストアップ、院内表記の変更が中心となります。中長期対応では、BCP策定が最優先課題です。

各医療機関では、本記事のチェックリストを活用し、自院の対応漏れがないかをご確認ください。なお、5項目の全体像をコンパクトに把握したい方は、以下のメルマガでも総まとめを配信しています。

メルマガ:令和8年度改定|かかりつけ医機能の5大見直し総まとめ

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