病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度改定】かかりつけ薬剤師指導料が廃止へ|新加算と薬局が今すぐすべき準備を解説

令和8年度診療報酬改定では、かかりつけ薬剤師の評価体系が大きく変わります。長年算定されてきた「かかりつけ薬剤師指導料(76点)」と「かかりつけ薬剤師包括管理料(291点)」が廃止されるという、保険薬局にとって大きなインパクトを持つ改定です。本稿では、令和8年度診療報酬改定で行われるかかりつけ薬剤師の評価体系の再構築と、保険薬局が今すぐ着手すべき準備について解説します。

なぜかかりつけ薬剤師指導料が廃止されるのか?改定の背景

背景には、従来のかかりつけ薬剤師制度が抱えていた構造的な課題があります。これまでは、かかりつけ薬剤師としての同意を得るだけで、自動的に高い点数(かかりつけ薬剤師指導料76点、かかりつけ薬剤師包括管理料291点)が算定される仕組みでした。

そのため、薬局側による業務のノルマ化や、患者にとっての実質的なサービス提供が伴わない形骸化が指摘されていました。今回の改定では、こうした実態のない算定を防ぐため、「同意を得れば算定できる」仕組みから、「実際にフォローや訪問を行った場合に評価される」仕組みへと、根本的に発想が転換されます

令和8年度改定の3つの変更点

今回の改定では、かかりつけ薬剤師の評価体系が大きく3つの観点から組み替えられます。

  1. かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止
  2. 服薬管理指導料への統合と新加算の創設
  3. 施設基準の見直し(個人要件の緩和と薬局要件の新設)

それぞれの内容を順に見ていきましょう。

変更点1:かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止

第1の変更点は、現行の評価体系の解体です。具体的には、以下の3つの点数が廃止されます。

  • かかりつけ薬剤師指導料(76点):処方箋受付1回につき算定する現行のメイン評価
  • かかりつけ薬剤師包括管理料(291点):地域包括診療加算等を算定する医療機関との連携評価
  • 服薬管理指導料の特例(59点):やむを得ない事情で他の保険薬剤師が連携対応した場合の特例

これらの廃止により、かかりつけ薬剤師の評価は服薬管理指導料の体系に一本化されます。ただし、「特定の保険薬剤師による一元的・継続的な服薬管理」という機能そのものは、新体系の基盤として継承されます。点数の名前が変わるだけで、かかりつけ機能が消えるわけではありません。

変更点2:新設される2つの加算

第2の変更点は、服薬管理指導料の中にかかりつけ薬剤師区分(イ)を新設したうえで、実際の行動に対する2つの加算を創設することです。

服薬管理指導料の各区分は、改定後にかかりつけ薬剤師か否かで分かれます。区分1(再来患者)では「イ」「ロ」とも45点、区分2(新規患者等)では「イ」「ロ」とも59点となります。点数自体は同額ですが、かかりつけ薬剤師区分(イ)で算定することが、後述する2つの新加算を算定するための前提条件となります。

新設される2つの加算は次のとおりです。

加算名 点数 算定要件
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算 3月に1回 50点 電話等で服薬状況・残薬状況を継続的に確認し、必要な指導を実施
かかりつけ薬剤師訪問加算 6月に1回 230点 患者・家族の求めに応じて患家を訪問し、残薬整理・服薬管理を指導

両加算とも、単に行動するだけでなく、その結果を医師などの保険医療機関に情報提供(フィードバック)することが要件として組み込まれており、医療機関との連携が必須となります。

なお、両加算には算定対象外となるケースが厳格に定められています。フォローアップ加算は調剤後薬剤管理指導料や在宅患者訪問薬剤管理指導料等を算定する患者が対象外、訪問加算は外来服薬支援料1や施設連携加算、服薬情報等提供料等を算定する患者が対象外となります。在宅医療系・施設系の既存点数との重複評価は、厳格に排除される設計です。

変更点3:施設基準の見直し

第3の変更点は、施設基準の再編です。薬剤師個人の要件が緩和される一方で、薬局全体の要件が新設されるという、これまでにない構造変化が起きます。

個人要件:緩和へ

薬剤師個人の要件は、多様な働き方を支援する方向で緩和されます。

  • 勤務時間:週32時間以上 → 週31時間以上
  • 在籍期間:1年以上 → 6か月以上
  • 休業復帰者の特例(新規):産休・育休・介護休業からの復職者は、休業前の在籍期間を合算可能

ただし、保険薬剤師として3年以上の勤務経験、研修認定制度による認定取得、医療に係る地域活動への参画といった「経験と質」に関わる要件は、現行から維持されます。緩和されるのは、あくまで時間と在籍の柔軟性に関する部分です。

薬局要件:新設(以下のいずれかを満たすこと)

一方で、薬局には新たに以下のいずれかの要件が課されます。

  • 常勤保険薬剤師の平均在籍期間が1年以上であること
  • 管理薬剤師が継続して3年以上在籍していること

このどちらかをクリアしなければ、かかりつけ薬剤師の施設基準を維持できません。個人の働き方の多様化を支援しつつ、薬局というチーム全体で患者を継続的にサポートできる体制を担保する設計です。

保険薬局が今すぐ着手すべき3つの準備

今回の改定は、点数の付け替えにとどまらず、薬局の経営構造そのものを問い直す内容です。令和8年4月の施行に向けて、保険薬局が着手すべき準備は大きく3つあります。

1. 算定戦略の見直し

これまでの「来局時の点数算定」というマインドセットから、新設加算を活用した「来局と来局の間のプロセスの収益化」へと発想を切り替える必要があります。フォローアップ加算と訪問加算は、これまで評価されてこなかった「薬局外での業務」を初めて評価する仕組みです。どの患者に対して、どのタイミングで、どの加算を算定するか。算定設計そのものを再構築する必要があります。

2. 人事・採用戦略の再構築

新設される「常勤平均1年以上」または「管理薬剤師3年以上」という薬局要件を見据えると、離職防止(リテンション)が単なる人事課題ではなく、算定要件の維持に直結する経営課題へと変わります。スタッフの短期離職が続けば、施設基準を満たせなくなり、減収に直結する構造です。採用時のミスマッチ防止、入職後のフォロー、管理薬剤師の長期定着策など、人事戦略の抜本的な見直しが求められます。

3. 業務フロー・システムの整備

薬局外でのフォローアップ記録、患家訪問の依頼受付、医師への情報提供。これらを漏れなく管理できるオペレーションとシステム体制の構築も急務です。特にフィードバックが算定要件に組み込まれている以上、医療機関への情報提供を確実に行える業務フローを設計する必要があります。

まとめ:R8改定で薬局経営はどう変わるか

令和8年度改定におけるかかりつけ薬剤師の評価体系見直しは、指導料・包括管理料の廃止、服薬管理指導料への統合と新加算の創設、施設基準の再編という3本柱で構成されています。

特に重要なのは、この改定が「点数の付け替え」ではなく「薬局経営の構造変化」を意味するという点です。算定戦略・人事戦略・業務フローの3つの観点から、令和8年4月に向けた準備を進めることが急務となります。真の意味で患者の生活に寄り添い、本質的な価値を提供する薬局運営が問われる改定といえるでしょう。

本記事の内容は、以下のLISTENエピソードでも詳しく解説しています。ぜひ音声でもご確認ください。 【令和8年度改定】かかりつけ薬剤師の評価体系を抜本見直し|指導料廃止・新加算創設・施設基準再編