令和8年度診療報酬改定では、小児医療で使う高額な検査・薬剤の評価が見直されます。こうした項目が包括評価に組み込まれたままだと、その費用が診療報酬に反映されにくくなります。この記事では、今回の見直しの中身と、医療機関の実務への影響を、初心者にもわかりやすく解説します。
今回の改定は、必要性が高く高額な項目を包括から切り出し、出来高で算定できるようにする2つの見直しです。ひとつは、造血器腫瘍等のがんゲノムプロファイリング検査を、入院料の包括から除外する見直しです。もうひとつは、抗RSウイルス薬ニルセビマブの投与当日を、小児科外来診療料から除外する見直しです。どちらも、費用の実態を診療報酬に反映し、必要な小児医療を提供しやすくします。
- なぜ「包括除外」が必要だったのか|小児医療の構造的な課題
- 見直し①:造血器腫瘍のがんゲノム検査、5つの入院料で別途算定が可能に
- 見直し②:ニルセビマブ投与当日、小児科外来診療料の対象外に
- 2つの見直しが医療機関の実務にもたらす影響
- まとめ|小児の高額な検査・薬剤は「包括から出来高へ」
なぜ「包括除外」が必要だったのか|小児医療の構造的な課題
今回の見直しの背景には、包括評価と高額項目のミスマッチがあります。この課題を押さえると、2つの見直しの狙いがつかめます。
包括評価とは、日常的な医療をまとめて一つの点数で評価する仕組みです。この仕組みは、算定を簡素にする利点があります。一方で、包括された項目は、実施しても基本料と別に算定できません。
ここに高額な検査や新薬が加わると、問題が生じます。医療技術の進歩により、高額な項目は次々と登場しています。これらを包括に含めたままだと、実施するほど医療機関の持ち出し、つまり費用の未回収が膨らみます。その結果、必要な医療の提供がためらわれかねません。
見直し①:造血器腫瘍のがんゲノム検査、5つの入院料で別途算定が可能に
見直し①は、造血器腫瘍等を対象とするがんゲノムプロファイリング検査を、入院料の包括から除外するものです。対象を限定した理由は、この検査が高額でありながら、入院中に実施する必要性が特に高いためです。
がんゲノムプロファイリング検査は、腫瘍の遺伝子を一度に多数調べる検査です。医師は、その結果を治療方針の決定に使います。対象となる造血器腫瘍には、白血病やリンパ腫が含まれます。費用面では、検査そのものの検査料に加え、専門家会議での検討に対する評価提供料もかかります。
この高額な検査が、これまで対象の入院料に包括されていました。今回の改定では、造血器腫瘍又は類縁疾患を対象とする場合に限り、次の5つの入院料で検査料と評価提供料を別に算定できるようになります。
- 救命救急入院料
- 特定集中治療室管理料
- ハイケアユニット入院医療管理料
- 小児特定集中治療室管理料
- 小児入院医療管理料
これらはいずれも、高度な集中治療や小児専門ケアを担う病棟です。これらの病棟で、これまで生じていた検査費用の持ち出しが解消されます。
見直し②:ニルセビマブ投与当日、小児科外来診療料の対象外に
見直し②は、抗RSウイルス薬ニルセビマブの投与当日を、小児科外来診療料の対象から外すものです。これは、従来のパリビズマブと取扱いをそろえる見直しです。
小児科外来診療料は、外来の検査や処置、投薬などを1日単位でまとめて評価する点数です。ただし、高額な薬剤を使う日は、この包括では費用をまかないきれません。そこで従来から、RSウイルスの予防薬パリビズマブを投与する当日は、包括の対象外としてきました。
このパリビズマブと同じRSウイルス予防薬が、令和6年5月に薬価収載されたニルセビマブです。今回の改定では、ニルセビマブの投与当日も、パリビズマブと同じく対象外になります。あわせて、施設基準の対象薬剤が、個別の薬品名から「抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤」という分類へと整理されました。この整理により、今後、同じ分類の新薬が登場した際にも対応しやすくなると考えられます。
2つの見直しが医療機関の実務にもたらす影響
2つの見直しは、医療機関の実務に共通の影響をもたらします。ここでは、経営、医療提供、事務対応の3つの面から整理します。
経営の面では、高額な項目の持ち出しが解消されます。除外された検査・薬剤の費用は、そのまま診療報酬に反映されます。これにより、これらの項目にかかっていた経営上の負担が軽くなります。
医療提供の面では、コストという障壁が下がります。高額さを理由に検査や投与をためらう要因が減ります。その結果、必要な医療を適切なタイミングで届けやすくなります。
事務対応の面では、算定の切り替え準備が必要です。対象の5つの病棟と小児科外来では、包括から出来高へ移す項目が生じます。運用開始に向けて、算定フローやレセプトシステムの設定を見直しておくと安心です。
まとめ|小児の高額な検査・薬剤は「包括から出来高へ」
令和8年度診療報酬改定は、小児医療の高額な検査・薬剤を包括から切り出す2つの見直しを行いました。ひとつは、造血器腫瘍等のがんゲノムプロファイリング検査を、5つの入院料の包括から除外する見直しです。もうひとつは、抗RSウイルス薬ニルセビマブの投与当日を、小児科外来診療料から除外する見直しです。いずれも高額な費用を診療報酬に反映し、医療機関が必要な小児医療を届けやすくする狙いがあります。
改定の一次情報は、厚生労働省の令和8年度診療報酬改定のページで確認できます。制度の背景や現場目線の解説は、LISTENのポッドキャストでも取り上げています。あわせてご活用ください。