病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】歯科矯正の保険対象拡大|連続3歯以上の先天性欠損歯と算定3要件

令和8年度診療報酬改定で、歯科矯正の保険給付の対象が広がります。新たに加わるのは、18歳未満の患者における「連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常」です。あわせて、歯科矯正相談料の対象と説明書の様式も見直されます。本記事では、医療機関の経営層と実務担当者に向けて、令和8年度診療報酬改定における算定の判定基準と、医院で必要になる準備を解説します。

本記事で分かることは3つです。1つ目が、保険適用となるための3つの必須要件です。2つ目が、既存の「6歯以上」規定との使い分けです。3つ目が、学校歯科健診を起点とした患者導線の変化です。

新たに保険適用となる患者の3要件

新たに保険給付の対象となるには、3つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると対象外となるため、診断の段階で確認してください。

  • 病態:連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常であること
  • 年齢:患者が18歳未満であること
  • 施設:歯科矯正診断料に係る施設基準を満たし、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関であること

このうち最も見落としやすいのが、病態の「連続」という要件です。欠損が3歯あっても、それぞれが離れていれば今回の規定には該当しません。隣接する歯が3歯以上続けて欠損している状態が求められます。

対象追加の根拠は、欠損歯数と顔面骨格の関係にあります。中央社会保険医療協議会(中医協)の資料では、先天性欠損歯が多いほど顔面骨格への影響が大きく、3歯以上の欠損は2歯以下と比べて影響が有意に大きいことが示されました。隣接歯が連続して欠損する状態は、長期的かつ多科的な治療を要する重篤な症状と位置づけられています。歯並びだけでなく、顎の成長という土台に影響が及ぶため、早期の専門的な介入が必要になります。

なお、今回の告示の改定案では「原発性低リン血症性くる病」と「ロイス・ディーツ症候群」も対象疾患に加わっています。これらは他の改定項目に由来する可能性がありますが、対象疾患が増える点は押さえておいてください。

「6歯以上」と「連続3歯以上」はどう使い分けるか

先天性の歯の欠損に関する規定は、改定後も2つ並存します。今回の追加規定は既存の規定を置き換えるものではなく、補うものです。

判定項目 今回の追加規定 既存の「六歯以上の先天性部分無歯症」
必要な歯数 3歯以上 6歯以上
欠損の連続性 必要 問わない
年齢制限 18歳未満 なし

この表から、判定の分かれ目が見えてきます。欠損が散在している場合は、6歯以上そろって初めて対象となります。欠損が連続している場合は、3歯以上で対象となりますが、18歳未満という制限がかかります。

つまり、4歯が散在している18歳未満の患者は、先天性の歯の欠損に関する2つの規定のいずれにも該当しません。一方、3歯が連続している18歳未満の患者は、今回の追加で新たに対象となります。年齢が18歳以上であれば、6歯以上に該当するかどうかが判断の分かれ目です。

ただし、告示には外胚葉異形成症をはじめ多数の疾患が対象として並んでいます。上記の2規定に当てはまらない場合でも、基礎疾患があれば欠損歯数と関係なく対象となることがあります。歯数だけで判断せず、全身的な所見とあわせてご確認ください。

学校歯科健診から治療までの導線が変わる

歯科矯正相談料の対象にも、同じ咬合異常が加わります。歯科矯正相談料は、学校保健安全法に基づく健康診断の結果を受けて、咬合異常などが疑われる患者に検査と説明を行った場合に算定する項目です。

改定前の疑い病態は3つでした。改定案では、ここに「連続した3歯以上の先天性欠損歯に起因した咬合異常」が4つ目として加わります。こちらも18歳未満に限られます。

この追加により、相談の入口と保険給付の対象が一致します。学校歯科健診で咬み合わせを指摘された子どもが、相談を経て保険診療にたどり着くまでの導線が、切れ目なくつながる形です。

なお、告示では「先天性欠如歯」、歯科矯正相談料の通知では「先天性欠損歯」と表記されています。指している状態は同じです。

検査についても記載が改まります。撮影は単純撮影と特殊撮影による画像として算定区分が特定され、これらを「必要に応じて行い」と明示する内容に変わります。全例で一律に実施する必要はありません。

医院が今から準備できる3つのこと

改定に向けた準備は、対象・体制・様式の3方向で進められます。いずれも正式な告示を待たずに着手できる内容です。

対象の周知として、判定基準をスタッフ間で共有してください。 「連続する3歯以上」と「18歳未満」という2つの条件は、初診時の問診と口腔内診査で確認する項目です。上記の判定表を院内に掲示しておくと、見落としを防げます。

体制の確認として、施設基準の届出状況を点検してください。 歯科矯正診断料の届出がなければ、要件を満たす患者を診ても保険給付の対象になりません。届出が未了の場合は、基準の充足状況から確認が必要です。

様式の準備として、説明の記録方法を見直してください。 説明書には標準様式が定められ、その写しを診療録に添付する取扱いに変わります。この標準様式は、令和7年6月に日本矯正歯科学会と日本小児歯科学会が示した結果報告書の様式を踏まえたものです。従来の診療録への記載要件は削除され、対応は写しの添付に一本化されます。ただし、様式の番号は正式な通知の発出時に確定するため、フローの確定はその後になります。

よくある質問(FAQ)

先天性欠損歯が3歯ありますが、連続していません。保険適用の対象になりますか。
今回追加される規定は、欠損が連続していることを要件としています。3歯が離れて欠損している場合は、この規定には該当しません。ただし、欠損が合計6歯以上あれば、従来からある「六歯以上の先天性部分無歯症」の規定に該当し、こちらは連続性を問わず対象となります。3歯から5歯が散在している場合は、先天性の歯の欠損に関する2つの規定のいずれにも当てはまりません。なお、外胚葉異形成症など告示に掲げられた疾患がある場合は、歯数と関係なく対象となることがあります。
18歳以上の患者は、連続3歯以上の欠損があっても対象外ですか。
今回追加される規定は18歳未満の患者に限られるため、18歳以上の方はこの規定では対象になりません。ただし、年齢制限は今回の追加規定に固有のものです。「六歯以上の先天性部分無歯症」をはじめとする既存の対象疾患に該当する場合は、年齢にかかわらず保険給付の対象となります。
歯科矯正診断料の届出をしていない医院でも、この患者を保険で治療できますか。
できません。告示では、歯科矯正診断料に係る施設基準を満たし、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関で行う場合が対象と定められています。病態と年齢の要件を満たしていても、届出がなければ保険給付の対象外です。該当する患者が来院する可能性がある場合は、施設基準の充足状況と届出の有無を早めにご確認ください。

まとめ

令和8年度診療報酬改定では、歯科矯正の対象患者の追加と、説明の標準化が同時に進みます。新たに対象となるのは、連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常で、18歳未満かつ歯科矯正診断料の届出医療機関という条件がかかります。既存の「6歯以上」規定は改定後も残るため、欠損の連続性と患者の年齢で使い分けてください。歯科矯正相談料の対象にも同じ咬合異常が加わり、学校歯科健診を起点とした治療へのアクセスが確保されます。

なお、本記事の内容は答申時点で示された改定案に基づいています。様式番号を含む詳細は、正式な告示および通知の発出をお待ちください。

本記事の内容は、以下のポッドキャストエピソードでも詳しく解説しています。あわせてご活用ください。

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