病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】オンライン診療の施設基準|追加された3つの要件と対応

令和8年度(2026年度)診療報酬改定では、オンライン診療(情報通信機器を用いた診療)の施設基準が見直されます。今回の改定の特徴は、医療機関に「初診で向精神薬を処方しない」という宣言だけでなく、遵守状況の証明とシステムによるチェックを求める点にあります。本記事では、新たに追加された3つの要件と、医療機関が取るべき対応を、実務の視点から整理します。

なぜオンライン診療の施設基準が見直されたのか(改定の背景)

今回の見直しの背景には、オンライン診療の普及と、向精神薬の処方をめぐる安全管理上の課題があります。スマートフォンなどで手軽に受診できる利便性が広がる一方で、複数のオンラインクリニックを短期間に受診し、向精神薬が重複して処方される多重受診のリスクが指摘されてきました。こうした不適切な処方を防ぐため、医療機関の安全対策を客観的に示す仕組みと、システムによる重複チェック機構の導入が求められるようになりました。

その結果、施設基準は「処方不可の宣言」から、「遵守状況の証明」と「システムによる物理的なブロック」へと一段引き上げられています。以下、追加された3つの要件を順に見ていきます。

オンライン診療の施設基準に追加された3つの要件

今回の改定で、オンライン診療の施設基準には3つの要件が新たに加わりました。いずれも、ウェブサイトの整備か、向精神薬の処方フローの見直しに関わるものです。

要件①:オンライン診療指針のチェックリストをウェブサイトに掲示

1つ目は、オンライン診療指針の遵守を確認するチェックリストの掲示です。現行の施設基準では、ウェブサイトへの掲示として「初診で向精神薬を処方しない旨」のみが求められていました。改定後はこれに加えて、当該保険医療機関での対応状況を記入したチェックリストの掲示が必要になります。自院の安全対策を客観的な様式で示すことで、患者に対する透明性の向上が期待されます。

要件②:医療広告ガイドラインの遵守

2つ目は、医療広告ガイドラインの遵守です。現行は施設基準としての要件化はされていませんでしたが、改定後はオンライン診療を行う医療機関に対し、自院ウェブサイトでの遵守が求められます。ウェブサイトを作成する際は、「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」を参照し、不適切な表現を排除することが必要です。

要件③:向精神薬処方時の重複投薬等チェック

3つ目は、向精神薬処方時の重複投薬等チェックです。現行は「初診での処方不可」が中心でしたが、改定後は向精神薬を処方する際に、電子処方箋管理サービスによる重複投薬等チェックの実施が必須となります。あわせて、向精神薬を適正に使用するために必要な体制の整備も求められます。これは単なるツールの導入ではなく、安全管理体制そのものの構築を意味します。

電子処方箋システム未導入の場合の経過措置

電子処方箋システムを導入していない医療機関には、経過措置が設けられています。期限は令和10年(2028年)5月31日までです。この期間中は、オンライン資格確認等システム、または医療機関間で電子的に医療情報を共有するネットワークのいずれかを代替手段として用い、薬剤情報を確認すれば差し支えありません。

ただし、経過措置はあくまで一時的な猶予です。期限後は代替手段が使えなくなるため、最終的には電子処方箋システムの導入が不可避となります。未導入の医療機関は、期限を見据えた導入計画の策定が欠かせません。

医療機関が取るべき対応のポイント

改定後の運用に向けて、医療機関が早期に着手すべき対応は次の3つです。

  1. 自院ウェブサイトの点検と改修:オンライン診療指針のチェックリスト様式を作成して掲示し、事例解説書をもとに既存の広告表現を総点検する。
  2. 電子処方箋システムの導入計画:未導入の場合は令和10年5月31日を最終期限とし、それまでの間はオンライン資格確認等システム等による代替確認フローを院内に確立する。
  3. 院内への周知徹底:向精神薬の適正使用ルールと新しい施設基準を、医師および全スタッフへ共有する。

よくある質問(FAQ)

令和8年度改定でオンライン診療の施設基準に追加された要件は何ですか?
追加されたのは3つです。1つ目はオンライン診療指針の遵守を確認するチェックリストのウェブサイト掲示、2つ目は医療広告ガイドラインの遵守、3つ目は向精神薬を処方する際の電子処方箋管理サービスによる重複投薬等チェックです。あわせて、向精神薬を適正に使用するために必要な体制の整備も求められます。
電子処方箋システムを導入していない医療機関はどう対応すればよいですか?
令和10年(2028年)5月31日までの経過措置が設けられています。この期間中は、オンライン資格確認等システム、または医療機関間で電子的に医療情報を共有するネットワークのいずれかを用いて薬剤情報を確認すれば差し支えありません。ただし経過措置は一時的な猶予であり、最終的には電子処方箋システムの導入が必要になります。
ウェブサイトに掲示するチェックリストには何を記載すればよいですか?
「オンライン診療指針」の遵守を確認するためのチェックリストで、当該保険医療機関での対応状況を記入した様式を掲示します。あわせて、初診において向精神薬の処方は行わない旨もウェブサイトに掲示する必要があります。

まとめ

令和8年度改定では、オンライン診療の適正な推進に向けて、チェックリストのウェブサイト掲示、医療広告ガイドラインの遵守、向精神薬処方時の重複投薬等チェックという3つの要件が追加されました。電子処方箋システムが未導入の場合も、令和10年5月31日までの経過措置があるとはいえ、いずれ導入は避けられません。オンライン診療を行う医療機関は、ウェブサイトの整備とシステムの準備を、改定後の運用に向けて早期に進める必要があります。

本記事の内容は、以下のポッドキャストエピソードでも詳しく解説しています。あわせてご活用ください。

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