病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度改定】外来医師過多区域の開業ペナルティとは|算定・届出不可になる5項目を解説

令和8年度診療報酬改定で、新規開業を検討する医師に大きな影響を与える新ルールが導入されます。外来医師過多区域で都道府県知事の要請に従わない場合、保険医療機関の指定期間が短縮され、機能強化加算など主要な5項目が算定・届出できなくなる仕組みです。

この記事では、「外来医師過多区域とは何か」という基本から、「自院が対象になる可能性はあるか」というチェックリスト、そして「よくある質問」までを、検索でこの記事にたどり着いた方向けにわかりやすく解説します。

この記事でわかること - 外来医師過多区域とはどのような地域か - ペナルティが発動する具体的な条件 - 算定・届出不可となる5項目の一覧 - 自院が影響を受けるかの判定方法 - よくある質問への回答

「外来医師過多区域」とは|まず知っておきたい基本

外来医師過多区域とは、改正医療法(令和7年12月12日公布、令和7年法律第87号)で新たに位置付けられた、外来医師が過剰に集中している地域として都道府県が指定する区域です。

簡単に言えば、「外来診療所が過剰に集中しているエリア」を指します。都市部や駅前など、診療所が密集している地域が対象になることが想定されています。

なぜこの区域が問題視されるかというと、医師が都市部に集中する一方で、医師少数区域では医療提供体制の維持が困難になっているからです。この医師の地域偏在を是正するため、改正医療法では外来医師過多区域における無床診療所の新規開業について、事前届出制や要請・勧告・公表、保険医療機関の指定期間の短縮といった対応強化策が導入されました。

💡 指定の基準について 「外来医師過多区域」の具体的な指定基準は、今後、厚生労働省から示される予定です。自院の所在地や開業予定地が対象になるかどうかは、各都道府県の公表情報をご確認ください。


ペナルティ発動の4ステップ|どこで「アウト」になるのか

ペナルティが発動するまでには、4つのステップがあります。順を追って確認しましょう。

ステップ1|開業6か月前の届出

外来医師過多区域で新規開業する場合、開業の6か月前までに都道府県への届出が必要となります。提供予定の医療機能などを記載した届出を行います。

ステップ2|都道府県知事からの「要請」

届出を受けた都道府県知事は、地域で不足する医療機能や、医師不足地域での医療提供を要請します。要請内容は、その地域の医療事情によって異なります。

ステップ3|要請への対応の判断

ここが分岐点です。要請に応じれば、通常通り6年間の保険医療機関指定を受けることができます。要請に応じない場合は、次のステップ4に進みます。

ステップ4|保険医療機関の指定期間が3年以内に短縮

要請に従わない医療機関は、保険医療機関の指定期間が通常の6年から3年以内に短縮されます。この「3年以内の指定」が、診療報酬上のペナルティ発動の引き金となります。


算定・届出不可となる5項目の一覧表

指定期間が3年以内に短縮された診療所では、以下の5項目が対象外となります。

区分 項目 内容
算定不可 機能強化加算 初診時の機能評価加算
算定不可 地域包括診療加算 慢性疾患患者への継続的医療への加算
算定不可 地域包括診療料 慢性疾患患者への継続的医療の包括料
算定不可 小児かかりつけ診療料 小児への継続的医療の料
届出不可 在宅療養支援診療所 24時間在宅医療を支える診療所の届出

これら5項目はいずれも、いわゆる「かかりつけ医機能」を担う医療機関として地域医療に貢献することを前提とした評価です。地域で不足する医療機能の提供要請に応じない医療機関には、これらの評価を与えないという制度設計になっています。


自院・自身がペナルティ対象になるか|判定チェックリスト

以下のチェックリストで、自院や検討中の開業計画がペナルティの対象になり得るかを判定できます。

✅ 新規開業を検討中の医師向けチェックリスト

  • [ ] 開業を検討している地域は外来医師過多区域に該当するか
  • [ ] 該当する場合、都道府県知事からどのような要請が想定されるか把握しているか
  • [ ] 要請に応じる場合、事業計画にどう組み込むか検討したか
  • [ ] 要請に応じない場合、5項目が算定・届出できない前提の事業計画を策定したか
  • [ ] 開業6か月前の届出スケジュールを把握しているか

✅ 既開業医向けチェックリスト

  • [ ] 既存の保険医療機関指定(通常6年)には、今回のペナルティは適用されない
  • [ ] ただし、移転・新規開設等で改めて指定を受ける場合は対象となる可能性がある
  • [ ] 自院が外来医師過多区域に所在するかは、念のため確認しておく

💡 外来医師過多区域の確認方法 各都道府県のウェブサイトで「外来医療計画」または関連の公表資料を確認することで、地域の指定状況や、今後の方針について情報を得ることができます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 既に開業している診療所も対象になりますか?

  1. 原則として対象外です。 既に通常の6年の指定を受けている保険医療機関は、今回のペナルティの直接的な対象ではありません。ただし、移転や新規開設で改めて指定を受け直す場合は、対象となる可能性があります。

Q2. 「3年以内」というのは、具体的に何年になりますか?

  1. 個別の事案に応じて都道府県が判断します。 法令上は「3年以内」と規定されており、必ずしも一律に3年というわけではありません。具体的な期間は、地域の医療事情や要請への対応状況を踏まえて決定されます。

Q3. ペナルティを受けても自由診療は可能ですか?

  1. 自由診療は可能ですが、保険診療の主要加算は算定できません。 機能強化加算、地域包括診療加算/料、小児かかりつけ診療料の算定と、在宅療養支援診療所の届出ができないため、保険診療を中心とした経営は厳しくなります。自由診療や専門特化型のビジネスモデルを構築する選択肢はあります。

Q4. いつから施行されますか?

  1. 令和8年度診療報酬改定の施行に合わせて適用されます。 改正医療法のうち、外来医師過多区域への対応に関する規定は令和8年4月1日施行となっています。

Q5. 要請に従って一度は応じたが、後から方針を変えることはできますか?

  1. 制度上の細則は今後の運用次第ですが、要請への対応は事業の根幹に関わります。 開業前の段階で、どの方向で進めるかを慎重に判断することが重要です。

まとめ|開業地の選定こそが最大の戦略的判断

令和8年度診療報酬改定における外来医師過多区域への対応は、単なる減算ルールではなく、改正医療法と診療報酬を連動させた「医師偏在対策の実効性を高める仕組み」です。

新規開業を検討する医師にとって、開業地の選定そのものが、これからの医療法人経営における最大の戦略的判断となります。「ただ開業すれば患者が集まる時代」から、「地域でどのような役割を担うのかが厳しく問われる時代」への明確な転換と言えるでしょう。

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