病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度改定】大病院の逆紹介基準が約2倍に|年12回以上の再診患者も減算対象へ

令和8年度診療報酬改定では、大病院の外来機能分化をさらに推進するため、初診料・外来診療料の減算規定が大きく見直されます。特に注目すべきは、逆紹介割合の基準が約2倍に厳格化されることと、「年12回以上通院する患者」が新たに減算対象に追加される点です。本記事では、改定の背景から実務上の論点まで、医療機関の経営・運営に直結する視点で整理します。

なぜ今、逆紹介の推進が強化されるのか

改定の背景には、大病院への患者集中という長年の課題があります。本来、大病院は高度な専門医療を担い、日常的なケアは地域のかかりつけ医が担うという役割分担が想定されています。しかし実態としては、軽症患者や状態が安定している慢性疾患患者が大病院に通い続けるケースが後を絶ちません。

中医協の資料によれば、特定機能病院等の再診患者のうち、直近1年間に10回以上外来診療料を算定した患者が約24%、20回以上の患者が約5%存在するというデータも示されています。こうした実態を踏まえ、大病院から地域医療機関への患者紹介、いわゆる「逆紹介」を制度的に一層推進する方向性が、今回の改定で打ち出されました。

改定のポイント①:逆紹介割合の基準が約2倍に

今回の改定では、対象医療機関の種別ごとに逆紹介割合の基準が約1.7〜2倍に引き上げられます。ここで使われる単位「‰(パーミル)」は1,000分の1を示す単位で、「初診+再診の患者数1,000人あたり何人を逆紹介したか」を意味します。

特定機能病院・地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関については、逆紹介割合の基準が30‰未満から50‰未満に引き上げられます。許可病床400床以上の病院については、20‰未満から40‰未満への引き上げです。いずれも、紹介割合の基準(特定機能病院等は50%未満、400床以上病院は40%未満)は変更されません。

基準を下回った場合の地方厚生(支)局長への報告義務も、この新基準に連動して変更されます。つまり、減算の対象となる病院は、同時に報告義務も発生する構造です。

改定のポイント②:「年12回以上」の再診患者が減算対象に

減算対象患者の見直しも、今回の改定の大きな柱です。従来は、他院への文書による紹介申出にもかかわらず自院での受診を継続した患者のみが減算対象でした。改定後は、これに加えて「当該病院において過去1年間に12回以上、外来診療料を算定した患者」が新たに減算対象となります。

月1回ペースの通院で年12回に達するため、慢性疾患で定期的に大病院に通う患者の多くが対象となりうる、インパクトの大きな改定です。

ただし、患者の状況に配慮した除外規定も併せて設けられています。以下の3つのいずれかに該当する場合、減算対象から除外されます。

  1. 過去1年間に、紹介を行った医療機関との連携により、遠隔連携診療料または連携強化診療情報提供料を算定している
  2. 緊急その他やむを得ない事情がある
  3. 専門性の高い医学管理を要するなどの理由で他院への紹介が困難であり、自院での継続通院が必要と医師が認めた

特に3つ目の「医師の判断による除外」については、診療報酬明細書の摘要欄への記載が必要となるため、院内での判定・記録フローの整備が求められます。

実務で押さえるべき3つの論点

改定対応を進めるうえで、現場で特に注意が必要なのは以下の3点です。

1つ目は、レセプトシステム側での患者抽出ロジックの整備です。「過去1年間に12回以上」という条件を自動判定できる仕組みを、レセコンや電子カルテで構築する必要があります。手作業での抽出では現場負担が大きく、抽出漏れも生じやすいため、システム側での対応が現実的です。

2つ目は、医師への除外規定の周知と記録運用です。医師が「継続通院が必要」と判断した患者については、摘要欄への記載が必須となります。現場で迷わず判定・記録できるように、判定基準の院内ガイドラインと記録テンプレートを事前に整えておくことが望まれます。

3つ目は、地域医療機関との逆紹介ネットワークの強化です。基準を満たすには、受け皿となる地域のクリニックとの関係構築が欠かせません。特定の診療科に頻回再診患者が集中している場合は、その診療科を起点として、地域の診療所との連携拡大を進める戦略が効果的です。

経過措置は「猶予」ではなく「準備期間」

令和8年3月31日時点で現行の逆紹介割合基準を満たしていた病院には、令和9年3月31日までの1年間、新基準を満たすものとみなす経過措置が設けられています。

1年という期間は一見長く感じられますが、地域連携ネットワークの構築や院内運用の整備には相応の時間がかかります。特に逆紹介の推進は、相手先の医療機関との信頼関係の構築が前提となるため、短期間で一気に実績を積むことは困難です。経過措置を「猶予期間」ではなく「準備期間」と捉え、早期に現状分析と行動計画の策定に着手することが重要です。

まとめ

令和8年度診療報酬改定では、逆紹介割合基準の引き上げと頻回再診患者の新規追加により、大病院と地域医療機関の役割分担が一層強く推進されます。対象となる病院には、レセプトシステムの整備、医師への周知、地域連携の強化という3つの実務対応が求められます。経過措置期間を有効に活用し、新基準への移行を計画的に進めていきましょう。

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