病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】入院時の食費・光熱水費|1食40円・1日60円の引き上げ

令和8年度診療報酬改定では、食材料費や光熱・水道費の継続的な上昇を踏まえ、入院時の食費および光熱水費の基準額が引き上げられます。食費は令和6年6月(30円)、令和7年4月(20円)に続き、直近で3回連続の引き上げとなります。光熱水費は平成18年の制度創設以来、初めての基準額(総額)の引き上げです。本記事では、改定の全体像と具体的な変更点について解説します。

食材料費・光熱費の高騰と介護保険との均衡

第1に、食材料費の継続的な高騰です。米の価格高騰などにより、従来の1食当たり690円という基準額では限界を超えているとの声が医療現場から上がっていました。実際に、病院給食の委託事業者からの値上げ交渉が相次いでおり、全面委託の約7割、一部委託の約5割の医療機関が値上げの申し出に対応せざるを得ない現状があります。

第2に、光熱・水道費の高騰と制度の硬直性です。光熱水費の基準額は平成18年の制度創設以来、総額としては据え置かれてきました。近年の著しいエネルギー価格の変動に対し、公定価格が実態に追いついておらず、病院経営に大きな影響を及ぼしていました。

第3に、介護保険制度との均衡です。令和6年度介護報酬改定において、多床室の居住費(光熱水費に相当)がすでに60円引き上げられていました。医療と介護の間で利用者の負担の公平性を保つため、医療保険側でもこれに合わせた調整が求められていました。

食費1食40円・光熱水費1日60円の引き上げ内容

第1に、食費の基準額の引き上げです。入院時食事療養および入院時生活療養の全区分において、通常の食事療養と流動食のみの提供の両方で、1食当たり40円が引き上げられます。

管理栄養士等による適切な栄養管理が行われている「入院時食事療養(Ⅰ)」の場合、通常の食事療養が690円から730円に、流動食のみの提供が625円から665円に変更されます。(Ⅰ)の基準を満たさない「入院時食事療養(Ⅱ)」の場合、通常の食事療養が556円から596円に、流動食のみの提供が510円から550円に変更されます。

療養病床に入院する65歳以上の患者を対象とする「入院時生活療養(Ⅰ)」の食費は、通常の食事提供が604円から644円に、流動食のみの提供が550円から590円に変更されます。「入院時生活療養(Ⅱ)」の食費は、470円から510円に変更されます。

第2に、光熱水費の基準額の引き上げです。入院時生活療養(Ⅰ)・(Ⅱ)ともに、1日当たり60円が引き上げられ、398円から458円に変更されます。この引き上げ幅は、前述の介護報酬改定における多床室の居住費の引き上げ幅と同額に設定されています。

入院時の食費・光熱水費の基準見直しのポイント

令和8年度診療報酬改定における食費および光熱水費の引き上げは、単なるコストアップへの対応にとどまらず、物価高騰という経済状況と、長年据え置かれてきた制度の歪みを是正するための重要な見直しです。医療機関においては、質の高い食事や療養環境を維持するための基盤として、この改定内容を正確に把握し、適切な経営管理に繋げることが期待されます。

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