令和8年度診療報酬改定では、適切な訪問診療の提供と安心・安全な医療提供体制の確保を目的に、在宅時医学総合管理料等及び在宅療養支援診療所等の要件が見直されます。この見直しは、限られた医療資源を重症患者へ重点的に配分するとともに、外部資源を活用した持続可能な24時間体制を構築するためのものです。本記事では、改定の背景、新要件の内容、医療機関に求められる実務対応を解説します。なお、本テーマの背景にある医療現場の実情については、ポッドキャスト番組LISTENのエピソードでも詳しく掘り下げていますので、あわせてご視聴ください。
なぜ在宅医療の要件が見直されるのか|背景にある2つの課題
在宅医療の要件見直しの背景には、医療ニーズの急増と医療資源配分の課題という2つの構造的問題があります。今回の改定は、これらの課題に正面から向き合うものです。
第一の課題は、在宅医療ニーズの急増に伴う医療現場の負担増大です。在宅医療の現場では、日中の診察に加え夜間の急変対応も担っており、医師の勤務負担が継続的に重い水準にあります。今後さらに高齢化が進展するなか、現行体制のままでは持続可能性に懸念が生じています。
第二の課題は、医療資源配分の最適化です。これまでの制度では訪問回数に応じて高い報酬が算定可能であったため、患者の重症度と評価の関係に十分な仕組みが整っていない側面がありました。末期悪性腫瘍や難病などの重症患者を担う医療機関に医療資源を重点配分する仕組みが、改定の核心となります。
改定の2本柱|重症患者割合と24時間体制の見直し
今回の改定は、評価の適正化と体制の透明化という2本柱で構成されます。評価の適正化は重症患者割合要件の新設として、体制の透明化は第三者活用時の24時間体制要件の明確化として、それぞれ具体化されました。
柱1:重症患者割合要件の新設
在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料に、重症患者割合の要件が新設されます。月2回以上の訪問診療を行う患者のうち、別表第8の2(末期の悪性腫瘍や神経難病等)又は別表第8の3(重症度や医療依存度の高い状態)に該当する患者の割合が一定以上であることが求められます。基準を満たさない場合、医療機関はより低い点数の区分(各区分の(4)又はニ)を算定することになります。
新要件は「または条件」で構成されており、「月2回以上訪問する患者数が一定数未満」または「重症患者割合が一定以上」のいずれかを満たせば施設基準クリアとなります。これにより、重症患者を担う医療機関が適切に評価される構造が整備されます。
柱2:第三者活用時の24時間体制要件の明確化
在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院では、第三者(株式会社等)を活用した24時間体制確保の要件が明確化されます。明確化のポイントは次の3点です。
ポイント1:24時間連絡担当者の範囲拡充
24時間連絡を受ける担当者について、告示(基本診療料の施設基準等)上の記載が、従来の「保険医又は看護職員」から「保険医又は看護職員等」に改められます。「等」が追加されたことで、看護職員以外の医療従事者を含めた柔軟な体制構築が可能となります。
ポイント2:コールセンター利用時の体制要件
連絡先をコールセンター等とする場合、患者や家族への事前説明が義務付けられます。あわせて、医療機関側はコールセンターからの連絡を24時間受ける体制を確保する必要があります。連絡経路を外部化しても、最終的な医療判断の責任は医療機関が持つことが明確化されました。
ポイント3:事前に氏名を提供していない往診医の取扱い
やむを得ない事由により事前に氏名を提供していない往診医が往診を行う場合、当該往診医は往診日以前に当該医療機関の在宅医療担当の常勤医師と面談し、診療方針等を共有していなければなりません。面談を経ていない医師による往診は、体制確保に該当しないと明記されました。これにより、外部医師を活用する場合でも医療の質と継続性が担保されます。
まとめ|医療機関が今すぐ取り組むべき2つのこと
今回の改定への対応として、医療機関には2つのアクションが求められます。第一に、患者の重症度構成の把握とモニタリング体制の整備です。第二に、第三者活用時の運用フローの見直しと記録整備です。
患者の重症度構成については、月2回以上訪問診療を行う患者のうち、別表第8の2と別表第8の3に該当する患者をリスト化し、その割合を継続的にモニタリングする体制を整えましょう。具体的な基準値は今後の告示で示される見込みであるため、最新情報の確認も欠かせません。
第三者活用時の運用フローについては、コールセンター利用時の事前説明書類、24時間受信体制の社内整備、事前に氏名を提供していない往診医との事前面談記録、これらを順次整備していく必要があります。改定施行までに体制を整え、質の高い在宅医療を継続できるよう、本日から準備を進めましょう。