病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】地域支援体制加算の見直し|5区分再編と一律27点上乗せ

令和8年度診療報酬改定で、地域支援体制加算は「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へと生まれ変わります。名称だけでなく、区分の数も、点数も、算定要件も変わる全面的な再編です。この記事では、答申で示された内容を薬局の実務目線で整理し、自局が改定後にどの区分へ移るのかを判断できる形にまとめます。

最初に結論をお伝えします。今回の見直しで押さえるべきは3点です。区分が4つから5つに増え、現行の区分番号が1つずつ後ろにずれること。新設の加算1(27点)が全区分の土台となり、既存の区分はいずれも27点上乗せされること。そして後発医薬品の数量割合85%以上が、すべての区分の前提条件になることです。

地域支援体制加算が「地域支援・医薬品供給対応体制加算」に変わる理由

名称変更の背景には、評価の物差しを入れ替えるという狙いがあります。これまでの地域支援体制加算は、薬局の立地と規模に応じて要件が定められていました。この仕組みでは、地域で医薬品がどのように供給されているかという実態を、十分に評価できませんでした。

そこで今回の改定は、地域での医薬品供給を通じた医療提供体制の構築を促進する観点から、要件を組み替えます。新しい名称に「医薬品供給対応」という言葉が入ったのは、この方針を端的に示すためです。薬局に求められる役割が、立地や規模ではなく供給機能そのものへと移ったことを、名称が物語っています。

新旧の区分はどう対応する?番号が1つずつずれる

区分の再編でまず確認すべきは、現行の区分が改定後のどこへ移るかです。改定後は加算1から加算5までの5区分になりますが、増えた1つは先頭に挿入されます。その結果、現行の4区分は番号が1つずつ後ろへずれます。

自局の現在の区分から見ると、対応は次のとおりです。

  • 現行の加算1(32点)を算定 → 改定後は加算2(59点)
  • 現行の加算2(40点)を算定 → 改定後は加算3(67点)
  • 現行の加算3(10点)を算定 → 改定後は加算4(37点)
  • 現行の加算4(32点)を算定 → 改定後は加算5(59点)

この対応関係を確認せずに番号だけで比較すると、判断を誤ります。たとえば「加算3」は現行10点で改定後67点ですが、これは別物同士の比較です。現行の加算3を算定している薬局が移る先は、37点の加算4です。

先頭に挿入される加算1は、地域医療への貢献を評価しません。評価するのは医薬品の供給体制だけです。施設基準は2つで、地域における医薬品の安定供給を確保するために必要な体制を有すること、そして後発医薬品の数量割合が85%以上であることです。この加算1は、今回の改定で廃止される後発医薬品調剤体制加算の受け皿にあたります。

なお加算2から加算5までは、調剤基本料の区分によって進む道が分かれます。調剤基本料1を算定する薬局は加算2と加算3、それ以外の薬局は加算4と加算5が実際の選択肢になります。ただし特別調剤基本料Bを算定する薬局は、いずれの区分も算定できません。それぞれの組で下位の区分は「十分な実績」を、上位の区分は「相当の実績」を求めます。

点数は全区分で27点上乗せ|ただし増収とは限らない

点数の見直しは、加算1の27点を全区分に積み上げる形で行われます。前掲の対応を見ると、改定後の点数はいずれも現行の点数に27点を足した額と一致します。59点も、67点も、37点も、この計算で説明がつきます。

ただし、この27点を素直に増点と受け取るのは早計です。今回の改定では後発医薬品調剤体制加算が廃止されるためです。つまり、これまで2つに分かれていた加算が1つに統合された形になります。したがって収入への実際の影響は、これまで後発医薬品調剤体制加算のどの区分を算定していたかによって変わります。

このほか、特別調剤基本料Aを算定する薬局では、これらの点数の10分の1が加算されます。特別調剤基本料Bを算定する薬局は、従来どおりこの加算を算定できません。いずれの取扱いも現行から変更ありません。

後発医薬品85%要件が全区分の前提になる

算定要件で最も影響が大きいのは、後発医薬品の数量割合85%以上という条件です。この条件は加算1の施設基準ですが、影響は加算1にとどまりません。加算2から加算5までの施設基準が、いずれも「加算1の施設基準を満たすこと」を最初に置いているためです。

結果として、次のことが起こります。後発医薬品の数量割合が85%に届かない薬局は、地域医療への貢献実績がどれだけあっても、加算2から加算5を一切算定できません。実績を積み上げる前に、まずこの条件を通過する必要があります。

この85%要件には経過措置が用意されています。令和8年3月31日の時点で後発医薬品調剤体制加算1、2または3の届出を行っている薬局は、令和9年5月31日までの間に限り、85%要件を満たすものとみなされます。ただし、みなしの対象は85%要件だけです。加算1のもう一方の要件である医薬品の安定供給体制には、経過措置がありません。

調剤基本料1以外の薬局は体制要件が厳しくなる

要件の見直しには、もう1つ見落としやすい変更があります。調剤基本料1以外の薬局に対する、体制要件の引き上げです。

現行の加算3は、体制面では地域医療への貢献に係る「必要な体制」が整備されていれば足りていました。これに対し、移行先となる改定後の加算4が求めるのは「十分な体制」です。この水準は、調剤基本料1を算定する薬局向けの加算2と同じです。つまり体制要件のハードルが、調剤基本料1の薬局と同一まで引き上げられます。現在、地域支援体制加算3を算定している薬局はとくにご注意ください。

施設基準通知で追加予定の要件

施設基準通知では、体制と実績それぞれについて新たな規定が予定されています。答申の資料は「以下の内容等を規定する予定」として6項目を示しました。いずれも「地域医療への貢献に係る体制及び実績」の規定であるため、対象は加算2から加算5までであり、加算1だけを算定する薬局には及びません。

体制については、3項目が示されています。令和8年6月以降に開設する薬局、または改築もしくは増築する薬局が、面積16平方メートル以上の調剤室を有すること。セルフメディケーション関連機器を設置していること。薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを販売または提供していないこと。この3つです。

実績についても、3項目が示されています。調剤時の薬剤一元管理による疑義照会や残薬調整に係る評価項目を一定程度算定していること。かかりつけ薬剤師による服薬指導を一定程度実施していること、具体的には服薬管理指導料1のイを算定していることです。そして服用薬剤調整支援料2の見直しに伴い、実績要件の項目から服用薬剤調整支援料が削除されます。

これら6項目のうち、調剤室の面積要件だけは対象が限られます。適用されるのは令和8年6月以降に開設・改築・増築する薬局であり、既存の薬局はそのままでは対象になりません。残る5項目は既存の薬局にも及ぶため、届出内容の点検が必要です。なお、いずれも確定した通知ではありません。今後発出される内容を必ずご確認ください。

よくある質問(FAQ)

現在、地域支援体制加算3を算定しています。改定後はどの区分になりますか。
改定後は地域支援・医薬品供給対応体制加算4(37点)が対応する区分です。点数は現行の10点から27点上がりますが、体制面の要件が「地域医療への貢献に係る必要な体制」から「十分な体制」へ引き上げられる点に注意が必要です。この水準は調剤基本料1の薬局に適用される加算2と同じであるため、現行のまま届出を継続できるとは限りません。
後発医薬品の数量割合が85%に届いていません。改定後は加算を算定できないのでしょうか。
令和8年3月31日の時点で後発医薬品調剤体制加算1、2または3の届出を行っていれば、令和9年5月31日までの間は85%要件を満たすものとみなされます。この期間中は加算2から加算5までを算定できます。ただしみなしの対象は85%要件だけであり、加算1のもう一方の要件である医薬品の安定供給体制は対象外です。また経過措置の終了後に85%を下回っていると、加算2から加算5を算定できなくなります。
調剤室16平方メートル以上という要件は、既存の薬局にも適用されますか。
適用されるのは、令和8年6月以降に開設する薬局、または改築もしくは増築する薬局です。既存の薬局はそのままでは対象になりません。ただし、セルフメディケーション関連機器の設置や、薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを販売または提供していないことなど、他の要件は既存の薬局にも及びます。なお、これらはいずれも施設基準通知で規定される予定の内容であり、確定した要件ではありません。

まとめ|自局の移行先を確認し、経過措置の期限から逆算する

令和8年度診療報酬改定における地域支援体制加算の見直しは、薬局の評価軸を立地や規模から医薬品の供給機能へと移す再編です。押さえるべき変更点は3つでした。区分が5つに再編され、現行の区分番号が1つずつ後ろにずれること。新設の加算1(27点)が全区分の土台となり、既存の区分は一律27点上乗せされること。そして後発医薬品85%要件と新たな体制・実績要件が加わることです。

まず取り組んでいただきたいのは、自局の現在の区分がどこへ移るのかの確認です。そのうえで後発医薬品の数量割合を点検し、85%に届いていなければ令和9年5月31日から逆算した達成計画を立ててください。施設基準の具体的な水準は、今後発出される告示・通知でご確認いただく必要があります。

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