令和8年度診療報酬改定では、調剤管理料の重複投薬・相互作用等防止加算と、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料が廃止されます。代わって新設されるのが、調剤時残薬調整加算と薬学的有害事象等防止加算です。本稿では、どの場面で50点を算定でき、どの場面で30点にとどまるのかという判断軸から、この見直しを整理します。
押さえるべき変更点は3つです。第1に、外来用と在宅用に項目が分かれる仕組みがなくなり、介入の目的によって加算が分かれます。第2に、点数は4段階に階層化され、在宅対応とかかりつけ薬剤師の関与が50点、それ以外が30点となります。第3に、残薬調整には「7日分以上相当の調剤日数の変更」という新しい閾値が設けられます。
- 改定の背景|評価の軸が「場所」から「目的と人」へ移る
- 新設2加算の点数区分|50点と30点を分ける4つの条件
- 新設2加算の算定要件
- 見落とし注意|手帳の活用実績による除外規定
- 実務対応|算定漏れを防ぐ3つの準備
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
改定の背景|評価の軸が「場所」から「目的と人」へ移る
今回の見直しは、現行の評価体系が抱えていた2つの課題に対応するものです。
第1の課題は、患者のいる場所で評価が分断されていた点です。現行では、外来患者に重複投薬・相互作用等防止加算、在宅患者に在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料が用意されていました。点数はいずれも、残薬調整に係るものを20点、それ以外を40点とする一律の設定です。
第2の課題は、介入の深さが点数に反映されない点です。服用薬剤を継続的・一元的に把握したうえでの薬剤調整も、単発の確認作業も、同じ点数で評価されていました。今回の再編では、限られた診療報酬の財源を、患者に深く関わる薬剤師へ重点的に配分する意図が読み取れます。
新設2加算の点数区分|50点と30点を分ける4つの条件
新設される2加算の点数は、イからニまでの4区分で共通します。区分を決めるのは、患者の状態と、関与した薬剤師の立場です。
- イ:50点 在宅患者へ処方箋が交付される前に処方内容を処方医へ相談し、その提案が反映された処方箋を受け付けた場合
- ロ:50点 在宅患者について変更が行われた場合(イを除く)
- ハ:50点 服薬管理指導料の注1に規定するかかりつけ薬剤師の対応で変更が行われた場合(イ・ロを除く)
- ニ:30点 イからハまで以外の場合
この4区分により、点数は引き上げと引き下げの両方向に動きます。残薬調整に係るものは、20点から30点以上へ引き上げられます。残薬調整に係るもの以外も、イ・ロ・ハに該当すれば40点から50点へ上がります。しかし、在宅患者にもかかりつけ薬剤師にも該当しない場合は、40点から30点へ引き下げられます。外来で日常的に行う照会のうち、残薬調整以外のものが、この引き下げの対象になります。
なお、イとロにいう「在宅患者」は、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する患者に限りません。施設基準により、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、居宅療養管理指導費、介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者も含まれます。ただし、後半2つは薬局の薬剤師が行う場合に限られます。
新設2加算の算定要件
2つの加算は、介入の目的によって使い分けます。残薬に基づく調剤日数の変更なら調剤時残薬調整加算、それ以外の処方変更なら薬学的有害事象等防止加算です。いずれも、調剤管理料を算定する患者が対象となります。
調剤時残薬調整加算|7日分以上の調剤日数変更が原則
調剤時残薬調整加算は、患者や家族から収集した情報等に基づき、残薬が確認された患者を対象とします。原則の要件は、処方医の指示または処方医への照会の結果に基づく、7日分以上相当の調剤日数の変更です。
ただし、6日分以下相当の変更でも算定できる例外があります。保険薬剤師が患者の服薬状況等により必要性があると判断した場合です。この場合は、その理由を調剤報酬明細書に記載してください。記載を欠くと算定できません。
薬学的有害事象等防止加算|処方変更という結果が要件
薬学的有害事象等防止加算は、処方医に確認すべき点がある処方箋が交付された患者を対象とします。残薬に係るものは除かれます。算定の根拠として、薬剤服用歴に加え、電磁的記録をもって作成された処方箋の仕組み、いわゆる電子処方箋を用いた重複投薬の確認等が明記されました。
要件は、照会の結果として処方に変更が行われたことです。照会を行っただけでは算定できません。この点は現行の加算と変わりません。
見落とし注意|手帳の活用実績による除外規定
新設される2加算には、算定そのものを封じる除外規定が置かれています。条文の「別に厚生労働大臣が定める保険薬局において行われた場合を除く」という括弧書きがそれにあたります。
除外の対象は、施設基準に示された「適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局」です。つまり、手帳の活用実績が乏しい薬局は、要件を満たしても算定できません。
同じ趣旨の規定は現行の重複投薬・相互作用等防止加算にもあります。一方、廃止される在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料には、この規定がありませんでした。在宅を中心に対応してきた薬局ほど、確認が必要です。
実務対応|算定漏れを防ぐ3つの準備
告示や通知を待たずに着手できる準備が3つあります。
第1に、自局の手帳の活用状況を確認します。除外規定に該当するおそれがあれば、実績の積み上げが最優先です。
第2に、記録の様式を見直します。誰からどのように残薬を確認したのかという経緯、変更した調剤日数、6日分以下の場合の理由。この3点を残せる形に整えます。
第3に、50点を算定できる体制を整えます。かかりつけ薬剤師の育成と、処方箋交付前の処方提案を含む在宅対応の運用です。1回あたり20点の差は、件数を重ねるほど大きくなります。
よくある質問(FAQ)
- 外来で行う一般的な疑義照会は、点数が下がるのですか。
- 残薬調整以外の照会で、在宅患者にもかかりつけ薬剤師にも該当しない場合は、現行の40点から30点へ引き下げられます。一方、残薬調整に係るものは現行20点から30点以上へ引き上げられるため、すべての照会が減点になるわけではありません。
- 残薬を確認しても、調剤日数の変更が6日分以下だと算定できませんか。
- 算定できる場合があります。保険薬剤師が患者の服薬状況等により必要性があると判断し、処方医の指示または照会の結果に基づいて変更した場合は、その理由を調剤報酬明細書に記載することで算定できます。原則は7日分以上相当の変更です。
- お薬手帳の活用実績が少ない薬局でも算定できますか。
- 算定できません。新設される2加算には、適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局を除外する規定が置かれています。廃止される在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料にはこの規定がなかったため、在宅中心の薬局は特に注意が必要です。
まとめ
令和8年度改定における重複投薬・相互作用等防止加算等の見直しは、評価の軸を「何をしたか」から「誰がどう関わったか」へ移すものです。同じ照会でも、かかりつけ薬剤師や在宅対応であれば50点、それ以外は30点となります。まずは手帳の活用実績を確認し、残薬の記録運用を整えるところから着手してください。
新旧の点数を1枚ずつ図解した資料はドクセルのスライドで公開しています。改定の裏側や、薬局のシステムがどう変わっていくかについての議論は、LISTENのエピソードでお話ししています。ぜひあわせてご覧ください。