病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】歯科技工士連携加算の変更点4つ|対象拡大と施設基準の厳格化

令和8年度診療報酬改定で、歯科技工士連携加算が大きく変わります。変更点は、対象範囲の拡大、併算定ルールの転換、施設基準の厳格化、技工料の取扱いの明確化という4つです。ひとことで言えば、算定できる場面を広げる代わりに、その評価が歯科技工士へ届いているかを問う内容になりました。

本記事では、この4つの変更点を確認したうえで、歯科医院が届出前に確認すべき実務対応をチェックリストとFAQで整理します。音声での解説もご用意していますので、記事末尾のリンクからあわせてご利用ください。

見直しの背景|「連携する時間がない」と人材確保の2つの課題

見直しの背景には、連携が評価される場面の狭さと、歯科技工士の人材確保という2つの課題があります。

連携が評価される場面は、これまで補綴物の製作工程の一部に限られていました。対象は印象採得、咬合採得、仮床試適の3工程であり、設計や材料を決める補綴時診断は対象外です。連携が最も効果を発揮する上流工程が、評価から外れていました。加えて、同一の補綴物では1回しか算定できず、複数の工程で連携しても評価は最初の1回で打ち止めでした。

人材確保の効果も、見えにくい状態が続いていました。令和7年度の検証調査では、この加算が歯科技工士の人材定着・確保に寄与したかという問いに対し、「現時点ではわからない」という回答が54.3%を占めています。算定していない理由としては、「従来の技工指示等で対応できるため必要性を感じない」「歯科医師と歯科技工士が連携を行う時間の調整が難しい」が上位に挙がりました。

変更点1|対象範囲の拡大と点数(補綴時診断料・印象採得・光学印象)

対象範囲は、3つの区分で広がります。いずれも、対面による連携を歯科技工士連携加算1(60点)、情報通信機器による連携を歯科技工士連携加算2(80点)として評価する形に統一されました。

区分 現行 改定案
補綴時診断料 対象外 加算1:60点/加算2:80点(新設)
印象採得 レジン前装金属冠(M011)、レジン前装チタン冠(M011-2)、CAD/CAM冠(M015-2)の3種 前歯部の歯冠補綴物またはブリッジへ拡大
光学印象 50点・対面のみ・CAD/CAMインレー(M015-3)のみ 加算1:60点/加算2:80点、CAD/CAM冠(M015-2)を追加
咬合採得・仮床試適 加算1・加算2を算定可 点数の見直しはなく、併算定ルールのみ変更

最大の目玉が、補綴時診断料への新設です。対象となるのは、高強度硬質レジンブリッジ(M017-2)、チタンブリッジ(M017-3)、3次元プリント有床義歯(M018-2)を製作する場合に限られます。このうち3次元プリント有床義歯は、令和8年度改定で新たに評価される項目です。なお同時に2以上の新たな欠損補綴について説明した場合でも、算定は1回にとどまります。

印象採得で拡大されたのは、補綴物の種類です。前歯部の印象採得を行う場合という前提は現行と変わらず、歯科技工士とともに色調採得や口腔内の確認を行うという要件も同じです。

光学印象は、評価そのものが組み替えられます。独立した「光学印象歯科技工士連携加算」が加算1・2に統合され、これまで対面のみだった連携に情報通信機器を用いた算定が加わりました。デジタル機器を導入している医院ほど、影響が大きい変更です。

変更点2|併算定ルールは「1装置につき1回」から「工程ごと」へ

併算定のルールは、算定機会を増やす方向へ転換します。実務への影響が最も大きい変更です。

現行では、印象採得で加算を算定すると、同じ補綴物について咬合採得や仮床試適の加算は算定できません。改定案では「同日に行った場合を除き、別に算定する」と規定され、工程ごとの算定が可能になります。有床義歯のように補綴時診断から装着まで4回程度の来院を要する治療では、来院日ごとの連携が評価されます。

ただし、2つの制限があります。1つは、同日に複数の工程を行った場合には重複して算定できないことです。もう1つは、各工程で算定できるのが加算1か加算2のいずれか1つに限られることです。同じ工程で対面と情報通信機器を併用しても、算定は一方のみとなります。

なお条文上、この規定は補綴時診断料と印象採得、印象採得と咬合採得、咬合採得と仮床試適という隣接する工程の間に置かれています。どの組み合わせでも自由に算定できるという意味ではないため、実際の運用は告示・通知でご確認ください。

変更点3|施設基準の厳格化|処遇改善体制とウェブ掲載が要件に

施設基準は、要件が実質的に厳しくなります。歯科技工士連携加算1には、次の3項目が追加されました。

  • 歯科技工士の負担の軽減および処遇の改善に資する体制の整備
  • 連携体制に関する事項の院内掲示
  • 掲示事項の原則ウェブサイト掲載

従来からの要件である、歯科技工士の配置または他の歯科技工所との連携体制の確保は維持されます。そのうえで、加算2の算定には加算1の要件をすべて満たすことが前提となり、さらに情報通信機器を用いた歯科診療に十分な体制の整備が必要です。現行では加算1と加算2の要件が並列でしたが、積み上げ型へ整理されました。施設基準の項番も、現行の「二の二」から「三の二」へ変わります。

経過措置の有無は個別改定項目に示されていません。届出済みの医院も、今後の告示・通知で対応期限を必ず確認してください。

変更点4|技工料の取扱いの明確化|相互の連携に基づく費用決定

歯冠修復および欠損補綴の通則についても、取扱いが明確化されます。算定留意事項は現行の5が削除され、新たに9が設けられました。

新設される内容は、歯科技工の委託にあたり、製作技工に要する費用および製作管理に要する費用の決定を、保険医療機関と歯科技工所の相互の連携に基づいて行う、というものです。委託先と協議のうえで費用を決める運用が、留意事項として明文化されました。

背景にあるのは、歯科技工所で働く方々の賃上げの議論です。歯科技工所への支払いは歯科医療機関を経由するため、評価の効果が現場に届く仕組みが課題とされてきました。ただし賃上げそのものへの対応は別の項目で措置されるため、本項目は費用の決定過程を明確にする位置づけと理解するのが適切です。

歯科医院が確認すべき実務チェックリスト

届出と算定に向けて、次の5点を確認してください。

  • 自院サイトの記載:連携体制に関する事項を掲載するページがあるか。なければ院内掲示とあわせて準備する
  • 処遇改善体制の整理:歯科技工士の負担軽減と処遇改善について、説明できる形で体制を整理しているか
  • 来院日ごとの連携設計:補綴時診断から仮床試適まで、どの来院日にどの工程で連携するかを決めているか
  • 対面とICTの使い分け:工程ごとに加算1と加算2のどちらで算定するかを事前に決めているか
  • 技工所との事前協議:技工料および製作管理費について、委託先と協議の場を設けているか

特に3つ目と4つ目は、併算定ルールの転換によって新たに生じた検討事項です。工程ごとに算定できる以上、当日の判断ではなく、治療計画の段階で設計しておく価値があります。

よくある質問(FAQ)

補綴時診断料の歯科技工士連携加算は、どの補綴物が対象ですか。
高強度硬質レジンブリッジ(M017-2)、チタンブリッジ(M017-3)、3次元プリント有床義歯(M018-2)を製作する場合が対象です。歯科医師が歯科技工士に意見を求め、その内容を踏まえて補綴時診断を行った場合に算定します。点数は、対面による連携が歯科技工士連携加算1で60点、情報通信機器による連携が歯科技工士連携加算2で80点です。同時に2以上の新たな欠損補綴について説明を行った場合でも、算定は1回にとどまります。
同じ補綴物について、複数の工程で歯科技工士連携加算を算定できますか。
令和8年度改定後は、同日に行った場合を除き、工程ごとに別に算定できます。現行は1つの補綴物につき1回で打ち止めでしたが、来院日ごとの連携が評価される形に改まります。ただし各工程で算定できるのは歯科技工士連携加算1か加算2のいずれか1つのみで、対面と情報通信機器の併用による重複算定はできません。またこの規定は、補綴時診断料と印象採得、印象採得と咬合採得、咬合採得と仮床試適という隣接する工程の間に置かれているため、実際の運用は告示・通知の確認が必要です。
すでに歯科技工士連携加算を届け出ていますが、追加の対応は必要ですか。
必要です。令和8年度改定では、歯科技工士の負担の軽減および処遇の改善に資する体制の整備、連携体制に関する事項の院内掲示、掲示事項の原則ウェブサイト掲載という3項目が施設基準に追加されます。加算2を算定する場合は、これら加算1の要件をすべて満たしたうえで、情報通信機器を用いた歯科診療に十分な体制の整備も求められます。なお経過措置の有無は個別改定項目に示されていないため、対応期限は今後の告示・通知で確認してください。

まとめ

令和8年度改定は、歯科技工士連携加算の対象を広げる一方で、算定する医院に体制整備と情報公開を求めます。補綴時診断料への新設と印象採得・光学印象の拡大により算定機会が増え、併算定ルールの転換で工程ごとの評価が可能になります。同時に、処遇改善体制と掲示・ウェブ掲載が施設基準に加わり、技工料は歯科技工所との相互の連携に基づいて決定する旨が明記されました。

まずは自院サイトの記載と、委託先技工所との協議から着手することをおすすめします。

本記事の内容は、音声でも解説しています。

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