令和8年度診療報酬改定で、看護師が患者のそばに付き添い、医師が離れた場所からオンラインで診療する「D to P with N」の評価が明確化されます。これまで「訪問看護中にオンライン診療をしたら算定できるのか」「看護師の訪問費用は誰が請求するのか」といった点が曖昧で、現場では算定の判断に迷う場面がありました。本記事では、この改定で整理された3つの算定ルールを、医療機関・訪問看護ステーションそれぞれの立場から、迷いやすいポイントを中心に解説します。
- なぜD to P with Nの算定ルールが見直されたのか
- 柱1:訪問看護と一体のオンライン診療は併算定できる
- 柱2:単独訪問には「訪問看護遠隔診療補助料」を新設
- 柱3:検査・注射・処置には「看護師等遠隔診療実施料」を新設
- まとめ
- よくある質問(FAQ)
なぜD to P with Nの算定ルールが見直されたのか
見直しの背景には、D to P with Nにおける算定ルールの不明確さがありました。看護職員が患者宅を訪問してオンライン診療を補助したとき、その訪問や、実施した検査・処置の費用をどう請求するのかが明確でなく、現場の事務手続きで混乱が生じていたのです。この事務負担が、在宅医療やへき地医療で期待される新しい診療形態の普及を妨げる一因にもなっていました。
こうした課題は、令和7年6月の規制改革実行計画でも指摘されました。これを受けて令和8年度診療報酬改定では、算定要件の明文化と、新たな評価の新設という形で整理が図られることになりました。具体的には、次の3つの柱で構成されています。
柱1:訪問看護と一体のオンライン診療は併算定できる
1つ目は、訪問看護・指導と一体的にオンライン診療を行う場合の併算定が明文化された点です。訪問看護・指導の実施時に、同一医療機関の保険医がオンライン診療を行った場合、在宅患者訪問看護・指導料(C005)および同一建物居住者訪問看護・指導料(C005-1-2)を算定できます。看護師の訪問看護と医師のオンライン診療を同じ時間帯に予定する形態が、算定対象として整理されたわけです。
ここで注意したいのは、あくまで訪問看護・指導が「主」であるという点です。オンライン診療を併せて行う場合でも、訪問看護・指導そのものの実施時間を十分に確保し、その質を落としてはなりません。
柱2:単独訪問には「訪問看護遠隔診療補助料」を新設
2つ目は、訪問看護を伴わずに看護職員が単独で訪問する場合の評価として、訪問看護遠隔診療補助料が新設された点です。医師がオンライン診療の際に看護師等の同席が必要と判断した場合に算定します。この補助料は、訪問する看護職員の所属によって、点数区分と要件が完全に二分される点が最大のポイントです。
医療機関に所属する場合:C005-1-3(265点)
医療機関に所属する看護職員が訪問する場合は、医科点数表のC005-1-3「訪問看護遠隔診療補助料」として、1日につき265点(月1回まで)を算定します。対象は、在宅で療養する患者、または緊急に診療を要する通院困難な患者です。算定にあたっては、オンライン指針の遵守、患者の同意、訪問の必要性を診療録と摘要欄に記載すること、そして初診の場合は診療前相談の実施が必要です。
緊急ケースには特例があります。患者や家族から緊急に診療を直接求められ、可及的速やかに訪問した場合に限り算定でき、定期的・計画的なオンライン診療は緊急ケースとしては算定できません。また、同一建物で2人以上の患者の診療補助を行った場合、2人目以降は原則として補助料を算定せず初診料・再診料等のみとなりますが、診療時間が1時間を超えた場合は摘要欄への記載で算定できます。
訪問看護ステーションに所属する場合:07(2,650円)
訪問看護ステーションに所属する看護職員が訪問する場合は、訪問看護療養費の07「訪問看護遠隔診療補助料」として、1日につき2,650円(月1回まで)を算定します。対象は、主治医から交付された訪問看護指示書の有効期間内にある利用者です。こちらは緊急時に限定され、緊急に診療を要すると判断した主治医の指示を受けて訪問した場合のみ算定できます。1人の利用者につき、算定できるのは1つの訪問看護ステーションのみです。
なお、同一の利用者について医療機関がC005-1-3を算定した場合、訪問看護ステーションは07を算定できません。両者は併用できないため、どちらが算定するかを事前に整理しておく必要があります。
柱3:検査・注射・処置には「看護師等遠隔診療実施料」を新設
3つ目は、D to P with Nのもとで行う検査・注射・処置の評価として、看護師等遠隔診療実施料が新設された点です。これは通常の所定点数に「代えて」、1日につき算定します。行為ごとに細かく積み上げるのではなく、まとめて評価する仕組みです。
- 看護師等遠隔診療検査実施料:1種類100点、2種類以上150点
- 看護師等遠隔診療注射実施料:1日につき100点
- 看護師等遠隔診療処置実施料:1種類100点、2種類以上150点
注射には注意点があります。処置実施料の「ロ」を算定する場合や、在宅患者訪問点滴注射管理指導料(C005-2)を算定する場合には、注射の実施料は算定できません。
まとめ
令和8年度診療報酬改定により、D to P with Nの算定ルールが体系化されました。訪問看護と一体で行う場合の併算定の明文化、単独訪問を評価する補助料の新設、そして検査・処置をまとめて評価する実施料の導入により、医療機関や訪問看護ステーションが安心してこの診療形態に取り組める環境が整います。算定にあたっては、看護師の所属や訪問形態、緊急性の有無によって取扱いが変わるため、各要件の確実な把握が欠かせません。なお、実際の算定の際は、厚生労働省の最新の告示・通知を必ずご確認ください。
本件のより詳しい解説は、ポッドキャストのエピソード令和8年度改定|D to P with N オンライン診療の評価明確化を徹底解説でもお届けしています。ぜひ合わせてお聴きください。
よくある質問(FAQ)
- D to P with Nで、医療機関の看護師が訪問する場合と訪問看護ステーションの看護師が訪問する場合で、算定はどう違いますか?
- 所属によって算定する区分が分かれます。医療機関に所属する看護職員が訪問する場合はC005-1-3(265点)を算定し、定期・緊急どちらのケースも対象です。訪問看護ステーションに所属する看護職員が訪問する場合は07(2,650円)を算定し、主治医が緊急と判断した場合のみが対象となります。同一の利用者について医療機関がC005-1-3を算定したときは、訪問看護ステーションは07を算定できません。
- 訪問看護の最中にオンライン診療を行った場合、訪問看護・指導料は算定できますか?
- 算定できます。令和8年度改定で、訪問看護・指導の実施時に同一医療機関の保険医がオンライン診療を行った場合、在宅患者訪問看護・指導料(C005)および同一建物居住者訪問看護・指導料(C005-1-2)を併算定できることが明文化されました。ただし訪問看護・指導が主であり、その実施時間を十分に確保し質を落とさないことが条件です。
- D to P with Nで検査や処置を行った場合、通常どおりの点数を算定できますか?
- 通常の所定点数ではなく、新設された看護師等遠隔診療実施料を所定点数に代えて算定します。検査は1種類100点・2種類以上150点、注射は100点、処置は1種類100点・2種類以上150点で、いずれも1日につきの算定です。なお注射は、処置実施料の「ロ」や在宅患者訪問点滴注射管理指導料(C005-2)を算定する場合には算定できません。