病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】周術期等・回復期等の口腔機能管理|150点の新区分と歯周病管理の対象拡大

令和8年度診療報酬改定では、周術期等及び回復期等の口腔機能管理の評価が見直されます。今回の見直しで新設されるのが、管理計画を作り直した場合を評価する150点の区分です。あわせて、歯周病の継続管理につなぐルートも広がります。この記事では、個別改定項目「⑦ 周術期及び回復期等の口腔機能管理の推進」の内容を、算定要件と実務対応の観点から整理します。

令和8年度改定の要点は3つ

今回の改定内容は、次の3点に整理できます。

  1. 周術期等口腔機能管理計画策定料が、1(300点)と2(150点)の2区分になる
  2. 回復期等口腔機能管理計画策定料も、同じく1(300点)と2(150点)の2区分になる
  3. 歯周病継続支援治療の算定要件に、周術期等口腔機能管理料又は回復期等口腔機能管理料を算定した場合が追加される

3点に共通する狙いは、資料の「基本的な考え方」に示されたとおり、医科歯科連携の推進です。

なぜ「計画変更」が評価されるのか

新区分が設けられた理由は、現行制度と現場の実態にズレがあったためです。

入院患者の状態は、治療の経過とともに変わります。たとえば、回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者では、リハビリテーションの進展に伴って嚥下機能が変化することがあります。この変化に合わせて口腔機能の管理計画を組み直す作業は、歯科チームにとって初回策定に劣らない負担です。

ところが現行の点数表には、この計画変更を算定できる区分がありません。労力は発生しているのに、評価される仕組みがない状態でした。令和8年度改定は、ここに150点の区分を新設します。

周術期等口腔機能管理計画策定料|1と2の違い

周術期等口腔機能管理計画策定料は、1と2の2区分になります。両者の違いは、次のとおりです。

策定料1 策定料2(新設)
点数 300点 150点
評価の対象 初回の管理計画の策定 状態の変化等に伴う治療計画の変更
主な要件 医科からの文書による依頼、患者又は家族の同意、口腔機能の評価と計画策定、計画の文書提供 注1に規定する管理計画を策定した患者について、状態の変化等により治療計画を変更
算定回数 当該手術等に係る一連の治療を通じて1回 患者1人につき1回

とくに注意したいのが、最下段の算定回数です。策定料1が「一連の治療を通じて1回」であるのに対し、策定料2は「患者1人につき1回」と規定されています。同じ患者について複数回の計画変更があっても、算定できるのは1回です。

なお、策定料1の対象は、がん等に係る手術、放射線治療、化学療法、集中治療室における治療、緩和ケアを受ける患者です。歯科疾患に係る手術については、入院期間が2日を超えるものに限られます。

回復期等口腔機能管理計画策定料|対象病棟と2区分の構造

回復期等口腔機能管理計画策定料も、周術期等とまったく同じ構造で1と2に分かれます。1が300点、2が150点です。策定料2の要件と算定回数も、周術期等と同じ内容です。

対象となる患者は、医科点数表の次の入院料を算定する患者です。

  • 療養病棟入院基本料(A101)
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料(A308)
  • 地域包括ケア病棟入院料(A308-3)

算定の起点も周術期等と共通しています。歯科診療を実施している保険医療機関が、リハビリテーション等を行う保険医療機関から文書による依頼を受けること。ここから始まります。

歯周病継続支援治療|対象患者に新ルートが追加

3つ目の見直しが、歯周病の継続管理です。今回の資料では、現行の「歯周病安定期治療」が「歯周病継続支援治療」として示されています。

改定されるのは、他の管理料の算定患者を対象に含める留意事項通知(2)の規定です。現行のこの規定は、歯科特定疾患療養管理料(B002)の算定患者だけを対象としていました。改定案では、ここに次の管理料の算定患者が追加されます。

  • 周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)(B000-6)
  • 周術期等口腔機能管理料(Ⅱ)(B000-7)
  • 周術期等口腔機能管理料(Ⅲ)(B000-8)
  • 周術期等口腔機能管理料(Ⅳ)(B000-9)
  • 回復期等口腔機能管理料(B000-11)

ただし、これらを算定していれば自動的に歯周病継続支援治療を算定できるわけではありません。各区分に規定する治療計画に歯周病に関する管理計画が含まれ、かつ、留意事項通知(1)と同様の状態にあることが条件です。

この追加により、病院での口腔機能管理から地域の歯科医院での歯周病管理へと、患者を引き継ぐ道筋が算定要件のうえで明確になります。

実務チェックリスト

ここからは、算定要件から導かれる実務上の備えです。資料に明記された要件ではありませんが、運用を整えるうえで確認しておきたい項目を挙げます。

  • 策定料2を算定する前に、同じ患者への算定履歴を確認したか(患者1人につき1回のため)
  • 変更前と変更後の計画内容の差分を記録したか
  • 計画を変更するに至った患者の状態変化を、具体的に記録したか
  • 初回の計画策定時に、歯周病に関する管理計画を含めるかどうかを判断したか
  • 医科からの文書による依頼を受領し、保管しているか

とくに4番目が、退院後の歯周病継続支援治療につながるかどうかの分かれ目になります。初回の計画づくりの段階で歯周病管理の要否を判断しておけば、その後の移行がスムーズです。

よくある質問(FAQ)

周術期等口腔機能管理計画策定料2は、同じ患者に複数回算定できますか?
算定できません。策定料2は「患者1人につき1回に限り算定する」と規定されています。策定料1が「当該手術等に係る一連の治療を通じて1回」であるのに対し、策定料2は患者単位で1回です。同じ患者について計画変更が複数回あっても、算定できるのは1回のみとなります。
周術期等口腔機能管理料を算定している患者は、必ず歯周病継続支援治療を算定できますか?
必ず算定できるわけではありません。今回追加されたのは、周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)〜(Ⅳ)又は回復期等口腔機能管理料を算定している患者を、留意事項通知(2)の対象に含める規定です。算定するには、各区分に規定する治療計画に歯周病に関する管理計画が含まれ、かつ留意事項通知(1)と同様の状態にあることが必要です。
回復期等口腔機能管理計画策定料の対象となる入院料は何ですか?
医科点数表の療養病棟入院基本料(A101)、回復期リハビリテーション病棟入院料(A308)、地域包括ケア病棟入院料(A308-3)の3つです。加えて、リハビリテーション等を行う保険医療機関からの文書による依頼に基づくことが、算定の起点となります。

まとめ

令和8年度診療報酬改定における周術期等及び回復期等の口腔機能管理の見直しは、計画変更を評価する150点の新区分と、歯周病継続支援治療の対象拡大が要点です。計画変更の記録や初回計画での歯周病管理の判断は、一見すると事務作業の追加に見えます。しかし、これらは退院後の歯科医院へ患者を確実に引き継ぐための手順でもあります。入院中の治療と退院後の口腔管理をつなぐ医科歯科連携が、点数として後押しされる改定だといえます。

本記事の内容は、ポッドキャスト番組でも解説しています。制度設計の意図や現場での受け止めについては、LISTENのエピソードをお聴きください。