病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】新生児特定集中治療室管理料2の見直し|実績基準が年30件から25件へ緩和

令和8年度診療報酬改定では、地域の周産期医療体制を維持する観点から、新生児特定集中治療室管理料の見直しが行われます。本記事は、制度の要点に加えて、医療機関の実務・経営の視点から、対象の見極め方と対応のポイントまで踏み込んで解説します。

なお、本記事の内容はポッドキャスト番組でも解説しています。音声で確認したい方は、LISTENのエピソードをお聴きください。

1. 結論:管理料2の実績基準が「30件→25件」に緩和

今回の改定は、新生児特定集中治療室管理料2の実績基準を緩和する内容です。新生児特定集中治療室管理料は、NICU(新生児集中治療室)で新生児を管理した場合に医療機関へ支払われる診療報酬です。この管理料は、施設基準の要件によって管理料1と管理料2に分かれます。今回見直されるのは、このうち管理料2です。

管理料2の緩和は、対象施設が限定されます。対象となるのは、総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センターです。これらの施設に限り、低出生体重児の新規入院患者数の実績基準が、年30件以上から年25件以上に引き下げられます。

2. なぜ緩和するのか:低出生体重児の減少と経営リスク

緩和の背景には、低出生体重児の入院数の減少があります。NICUを有する病院では、出生体重2,500グラム未満の新生児、いわゆる低出生体重児の入院数が減少しています。入院数が減れば、実績基準を満たせない医療機関が生じます。実績基準を満たせなければ、その医療機関は管理料2を算定できなくなります。

管理料2を算定できない状態は、NICUの経営を直接圧迫します。NICUは、高度な医療機器と24時間体制のスタッフを必要とします。この体制を管理料で支えられなくなれば、NICUの維持は難しくなります。中核的なNICUが縮小すれば、地域の周産期医療体制そのものが揺らぎます。そこで、体制を適切に維持する観点から、実態に即した基準への見直しが行われました。

3. 誰が対象か:緩和されるのは周産期母子医療センターだけ

緩和の対象は、地域の中核を担う周産期母子医療センターに限られます。今回の緩和は、すべての医療機関に適用されるわけではありません。対象は、都道府県が整備する2種類の施設だけです。1つは総合周産期母子医療センターです。もう1つは地域周産期母子医療センターです。

これらのセンターは、地域の周産期医療の中核を担います。一般の産科やクリニックでは対応が難しい、重症の妊婦や新生児を受け入れる施設だからです。なお、対象を中核施設に絞った理由は、公表資料には明示されていません。症例を集約して医療の質を保つ狙いがある、という見方もできます。

対象施設の根拠は、通知に定められています。都道府県は、「疾病・事業及び在宅医療に係る医療提供体制について」(令和5年3月31日付け医政地発0331第14号)に基づき、これらのセンターを整備しています。

4. 何が変わるのか:30件と25件、2つの選択肢

改定により、対象施設は30件と25件の2つの基準から選べるようになります。従来の基準は、単一でした。すべての施設が、直近1年間の低出生体重児の新規入院患者数について、30件以上を満たす必要がありました。

改定後は、この基準が2つの選択肢に分かれます。1つ目の選択肢は、従来どおり新規入院患者数が30件以上であることです。2つ目の選択肢は新設で、対象施設に限り、新規入院患者数が25件以上であればよいというものです。対象施設は、この2つの選択肢のいずれかを満たせば構いません。

なお、ここでの新規入院患者数は、いずれも直近1年間の出生体重2,500グラム未満の新生児の数を指します。25件という水準を導いた具体的な根拠は、公表資料には示されていません。

5. 実務のポイント:自院が対象になるかを確認する

実務では、自院がセンター指定を受けているかを最初に確認します。対象になるかどうかは、施設の指定状況で決まるからです。まず、自院が都道府県から総合または地域の周産期母子医療センターの指定を受けているかを確認します。指定を受けていなければ、緩和の対象外です。この場合は、従来どおり30件以上の基準が適用されます。

指定を受けている場合は、直近1年間の低出生体重児の新規入院患者数を確認します。患者数が25件以上であれば、新しい選択肢で基準を満たせます。30件に届かず算定の継続が難しかった施設ほど、この緩和の効果は大きくなります。経営層と実務担当者は、自院の患者数の推移を早めに把握しておくことが重要です。

よくある質問(FAQ)

新生児特定集中治療室管理料2の実績基準は、どのように変わりますか?
対象施設に限り、低出生体重児の新規入院患者数の基準が緩和されます。従来は、すべての施設が直近1年間で30件以上を満たす必要がありました。改定後は、総合・地域の周産期母子医療センターに限り、25件以上でも基準を満たせる選択肢が新設されます。
どの医療機関が緩和の対象になりますか?
都道府県が整備する総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センターが対象です。これらの指定を受けていない一般の産科やNICU設置病院は対象外で、従来どおり30件以上の基準が適用されます。
25件以上でも30件以上でも、どちらでも基準を満たせるのですか?
はい。対象施設は、30件以上と25件以上のいずれかを選んで満たせば構いません。30件以上を満たしていれば従来どおり基準を満たし、30件に届かなくても25件以上あれば新しい選択肢で基準を満たせます。

6. まとめ

今回の改定は、新生児特定集中治療室管理料2の実績基準を30件から25件へ緩和する内容です。緩和の背景には、低出生体重児の入院数の減少があります。緩和の対象は、総合・地域の周産期母子医療センターに限られます。これらの施設は、新規入院患者数が25件以上であれば基準を満たせます。低出生体重児の減少という実態に合わせ、地域の中核施設へ資源を集約することで、周産期医療体制の維持が図られます。

医療機関の経営層と実務担当者におかれては、自院の立ち位置と新たな選択肢を正確に把握し、早めに体制整備を進めることが求められます。