令和8年度診療報酬改定で、近視進行抑制薬を投与している患者の眼科学的検査に、新しい算定ルールが設けられました。ポイントは「年2回まで・1回の受診で2種類まで」です。この記事では、ルールの中身に加えて、窓口やレセプトで実際にどう確認すればよいか、現場目線で整理します。体系的な解説は別途メルマガにまとめているため、ここでは実務と「よくある疑問」に重心を置きます。
なぜ今このルールができたのか
きっかけは、小児の近視治療に使う新しい点眼薬の登場です。令和6年12月27日に、近視の進行抑制を効能・効果とする医薬品(一般名:アトロピン硫酸塩水和物、販売名:リジュセアミニ点眼液0.025%)が薬事承認されました。1日1回、就寝前に1滴を点眼する低濃度アトロピン点眼薬です。
この薬は薬価収載されておらず、選定療養への追加が提案されています。選定療養とは、保険のきかない薬や治療を、保険診療と併用できる仕組みです。仮にこの枠組みが認められると、薬そのものの費用は患者の自己負担になります。一方で、診察や検査といった保険診療の部分は、別途定められた算定要件の範囲で保険が使えます。
その「検査の部分」のルールが、これまで曖昧でした。関係学会の指針では、治療中は3〜6か月ごとに近視の進行状況を確認するとされ、屈折検査(D261)や矯正視力検査(D263)などが行われます。臨床上は必要な検査がある一方で、近視進行抑制薬の処方に係る検査として、算定上の取り扱いは定められていませんでした。今回の改定は、この一連の検査を適切に評価するため、専用の算定要件を新設したものです。
新しい算定要件は「対象・回数・種類」の3つ
改定後は、眼科学的検査の通則に項目が加わり、3つの要件が明確になります。
ひとつ目は対象です。近視の進行抑制を目的として診療を行い、近視進行抑制薬を投与している患者が対象になります。ふたつ目は回数で、対象患者への眼科学的検査は年2回の受診に限り算定できます。この上限は、学会指針の定期観察の頻度に沿って設定されたものです。みっつ目は種類で、1回の受診で複数の検査を行った場合でも、算定できるのは2種類までとなります。
注意したいのは、これが「検査を制限する」ルールではなく、「算定の枠を新たに設ける」ルールだという点です。臨床判断で必要な検査は従来どおり実施できます。変わるのは、保険請求できる回数と種類の上限が定められた、という部分です。
現場での確認は3ステップ
実際のレセプト業務では、次の順で確認するとミスを防げます。
最初に、対象患者かどうかを確認します。近視進行抑制薬を処方されていなければ、これまでどおり通常のルールで算定します。次に、その年にすでに眼科学的検査を2回算定していないかを確認します。すでに2回算定済みなら、今回の検査は算定できません。最後に、同じ受診日に3種類以上の検査を行った場合は、算定する2種類を選んで請求します。
この3ステップを院内で共有しておくと、上限超過による返戻を防げます。医師が必要と判断して実施した検査と、保険請求できる検査の範囲がずれる場面があるため、医師と事務の間で「どの検査を算定するか」を決める手順を決めておくと安心です。
よくある疑問(FAQ)
Q. 対象はどんな患者ですか。 近視の進行抑制を目的に近視進行抑制薬を投与している患者です。それ以外の患者の眼科学的検査は、従来どおりの算定になります。
Q. 年2回を超えて検査したらどうなりますか。 保険請求できるのは年2回までです。3回目以降の検査を臨床判断で行うこと自体は妨げられませんが、その分の眼科学的検査は算定できません。
Q. 同じ日に検査を3種類以上行ったら。 算定できるのは2種類が限度です。実施した検査のうち、どの2種類を算定するかを整理して請求します。
Q. 薬代は保険でまかなえますか。 選定療養の枠組みでは、薬そのものは自己負担となる見込みです。診察や検査は、今回の算定要件の範囲で保険が適用されます。なお、選定療養への追加は提案・検討の段階である点に留意してください。
Q. いつから適用されますか。 令和8年度診療報酬改定での対応です。
まとめ
令和8年度診療報酬改定では、近視進行抑制薬を投与している患者の眼科学的検査について、「年2回・2種類まで」という算定要件が新設されました。新しい治療を保険制度のなかに位置づけるための、ルールの明確化といえます。医療機関では、対象患者かどうかの確認を起点に、回数と種類の上限を超えない請求管理が求められます。施行までに、院内のレセプト入力フローと、医師・事務間の連携手順を見直しておきましょう。
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