令和8年度診療報酬改定では、母体・胎児集中治療室(以下、MFICU)を評価する母体・胎児集中治療室管理料の要件が見直されます。この見直しは、地域の実情と現行要件との乖離を解消し、周産期医療の体制構築を適切に評価することを目的とします。本記事は、医療機関の経営層と実務担当者に向けて、改定への対応に必要な3つの変更点を整理します。
医療機関は、3つの変更点に沿って、自院の体制と実績を点検する必要があります。第1に、医師配置要件の緩和が、6床以下の施設に新たな選択肢を広げます。第2に、新設される実績要件が、算定の継続に一定の分娩・搬送実績を求めます。第3に、算定対象の拡大が、産科異常出血への対応を新たに評価します。
- 改定の背景:地域周産期医療の持続可能性
- 変更点1:医師配置要件の緩和(6床以下)
- 変更点2:実績要件の新設(4指標中3つ)
- 変更点3:算定対象への産科異常出血の追加
- 経過措置:既存施設の猶予期間
- まとめ:3つの見直しと医療機関の対応
- よくある質問(FAQ)
改定の背景:地域周産期医療の持続可能性
今回の改定の背景には、現行の医師配置要件と地域の実情との乖離があります。地方の小規模施設にとって、産科医を常時複数配置し続けることは大きな負担です。この負担が続けば、施設はMFICUの維持を断念しかねません。MFICUが失われれば、その地域は母体救急搬送の受け皿を失います。そこで今回の改定は、オンコール体制の評価と、実績に基づく機能評価へ軸足を移します。この転換が、地域の周産期医療の持続可能性を支えます。
変更点1:医師配置要件の緩和(6床以下)
第1の変更点は、6床以下の施設における医師配置要件の緩和です。この緩和を理解するには、まず現行の要件を確認します。現行の医師配置要件は、2つの選択肢のいずれかを満たすことを求めています。1つ目の選択肢は、専任の医師が常時、治療室内に勤務することです。2つ目の選択肢は、産婦人科または産科の医師が常時2名以上、院内に勤務することです。
今回の緩和は、この2つ目の選択肢を対象とします。届出病床数が6床以下の施設に限り、2名以上の配置を1名以上に緩めます。ただし1名以上への緩和には、条件があります。その条件は、別の産科医が緊急呼出し当番により、30分以内に治療室で診療を開始できる体制の確保です。自院が6床以下であれば、このオンコール体制の整備が、緩和適用の鍵となります。
変更点2:実績要件の新設(4指標中3つ)
第2の変更点は、実績要件の新設です。この実績要件は、6床以下かどうかを問わず、母体・胎児集中治療室管理料を算定するすべての施設に適用されます。医師配置を柔軟にする一方で、改定は医療の質を実績で担保します。具体的には、次の4つの指標のうち、3つ以上を満たすことを求めます。
- 救急用の自動車または救急医療用ヘリコプターによる妊産婦の搬送受入件数が、年間10件以上であること
- 多胎妊娠の分娩件数が、年間10件以上であること
- 帝王切開術による分娩件数が、年間50件以上であること
- 分娩時の妊娠週数が22週以上34週未満である分娩件数が、年間10件以上であること
これら4つの指標は、地域周産期医療における救急対応力と外科的対応力を測るものです。医療機関は、自院の年間実績を4指標で棚卸しする必要があります。3つ以上を満たせない場合は、達成可能な指標を見極め、体制を整えることが求められます。
変更点3:算定対象への産科異常出血の追加
第3の変更点は、算定対象への産科異常出血の追加です。現行の算定対象は、高リスク妊娠と認められる妊産婦でした。改定後は、この妊産婦に加えて、分娩時または分娩後に重篤な合併症を来した者も対象に含みます。あわせて、算定対象となる状態に産科異常出血が加わります。
産科異常出血が追加される理由は、その発生の予測しにくさにあります。産科異常出血は、分娩前のリスク因子にかかわらず生じうるものです。このため産科異常出血は、その状態に応じて、産後からのMFICU管理を必要とします。今回の追加は、こうした予測困難な事態への集中治療を新たに評価します。
経過措置:既存施設の猶予期間
新設される実績要件には、既存の届出施設に対する経過措置があります。令和8年3月31日の時点で総合周産期特定集中治療室管理料を届け出ている施設は、経過措置の対象です。この施設は、令和9年5月31日までの間、実績要件を満たしているものとみなされます。令和9年6月1日以降も算定を続けるには、この猶予期間内に4指標中3つを満たす体制の構築が求められます。
まとめ:3つの見直しと医療機関の対応
令和8年度改定は、母体・胎児集中治療室管理料の要件を3つの点で見直します。第1に、6床以下の施設で医師配置要件を緩和します。第2に、4指標中3つの達成を求める実績要件を新設します。第3に、算定対象に産科異常出血を追加します。医療機関は、自院の病床数、実績、対象患者を照らし合わせ、新要件への対応を早めに進める必要があります。
よくある質問(FAQ)
- 6床を超える施設でも、医師配置要件の緩和は受けられますか?
- いいえ。医師配置要件の緩和は、母体・胎児集中治療室の届出病床数が6床以下の医療機関に限られます。6床を超える施設は、従来どおり、専任医1名の治療室内常時勤務、または産科医2名以上の院内勤務のいずれかを満たす必要があります。
- 新設される実績要件は、4つの指標をすべて満たす必要がありますか?
- いいえ。実績要件は、母体搬送の受入(年間10件以上)、多胎妊娠の分娩(年間10件以上)、帝王切開術による分娩(年間50件以上)、22週以上34週未満の分娩(年間10件以上)の4指標のうち、3つ以上を満たせば充足します。
- 既存の届出施設は、いつまでに実績要件を満たす必要がありますか?
- 令和8年3月31日時点で総合周産期特定集中治療室管理料を届け出ている施設は、令和9年5月31日までの間、実績要件を満たしているものとみなされます。令和9年6月1日以降も算定を続けるには、この猶予期間内に4指標中3つを満たす体制を整える必要があります。
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