病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】腹膜透析の医療機関間連携|管理料2(1,500点)の新設

令和8年度診療報酬改定で、在宅自己腹膜灌流指導管理料が「管理料1」と「管理料2」の2つに分かれます。新設された管理料2(1,500点)により、かかりつけ医からの依頼を受けた基幹病院が、専門的な指導管理を行った場合に評価されるようになりました。この記事では、何がどう変わり、算定にあたって医療機関が何に注意すべきかを、実務の視点で整理します。

改定の要点|「管理料1」と「管理料2」の役割分担

今回の改定の核心は、報酬枠を分割して基幹病院とかかりつけ医の役割分担を明確にした点にあります。改定前、在宅自己腹膜灌流指導管理料は4,000点の一本立てでした。改定後は、患者を継続的に管理するかかりつけ医が「管理料1(4,000点)」を算定し、その求めに応じて指導管理を行う基幹病院が「管理料2(1,500点)」を算定します。詳細は令和8年度診療報酬改定の資料もあわせてご確認ください。

両者の違いを一覧にすると、次のとおりです。

項目 管理料1(従来通り) 管理料2(新設)
算定主体 かかりつけ医 連携先の基幹病院
点数 4,000点 1,500点
算定のきっかけ 継続的な指導管理 かかりつけ医からの求め(依頼)
対象患者 CAPDを行う患者 頻回な指導管理が必要なCAPD患者
回数制限 同一月内に月2回まで(※例外あり) 一連の治療につき2回まで

この役割分担により、患者は普段は身近なかかりつけ医に通院し、状態の変化など必要なタイミングでのみ基幹病院の専門的な管理を受けられます。

なぜ見直されたのか|腹膜透析管理の地域格差

見直しの背景には、腹膜透析を管理できる医療機関の偏在があります。腹膜透析、なかでもCAPD(在宅自己連続携行式腹膜灌流)は、患者自身が自宅で透析液を交換するため、通院回数が少なく生活の自由度が高い治療法です。その一方で、感染症や合併症を防ぐための専門的な指導管理が欠かせません。

この専門的な管理を担う基幹病院は、都市部に集中しています。腹膜透析を管理できる医療機関が乏しい二次医療圏は多く、そうした地域の患者は頻繁な遠距離通院が難しいのが実情でした。結果として、適切な管理を受けにくいという医療アクセスの課題が生じていました。今回の改定は、かかりつけ医と基幹病院の連携を診療報酬上で評価することで、この課題に対応するものです。

管理料2の算定要件|施設基準の届出と回数制限

新設された管理料2の算定には、2つの要件が伴います。実務上は、この要件を満たしているかの確認が出発点になります。

1つ目は、施設基準の届出です。管理料2を算定する医療機関は、「腹膜透析患者に対する診療を行うにつき必要な体制が整備されていること」という施設基準を満たし、地方厚生局長等へ事前に届け出る必要があります。

2つ目は、算定回数の上限です。管理料2は、一連の治療につき2回までしか算定できません。これは過剰な介入を防ぎ、連携を「患者にとって真に必要な範囲」に保つための制限です。

実務で間違えやすい「2つの2回」と算定対象

算定にあたって特に注意したいのが、「2回」という回数の数え方です。管理料1と管理料2では、カウントの単位がまったく異なります。

管理料1の頻回指導は、期間の単位が「1か月」です。頻回に指導管理を行う場合、同一月内の2回目以降は1回2,000点を月2回まで算定でき、月が変わればリセットされます。ただし、同一月内に人工腎臓(J038)または腹膜灌流の1(J042)を算定する場合、この2回目以降の費用は算定できません。これは現行から変わらないルールです。

一方、管理料2は、期間の単位が「一連の治療」、つまりひとつの治療エピソードです。月をまたぐかどうかに関係なく、一連の治療につき2回までが上限になります。両者は対象も期間も異なるため、算定エラーを防ぐうえで混同しないよう注意が必要です。

あわせて、算定対象にも限定があります。これらの管理料が算定できるのは、CAPDを行う入院中以外の患者です。外来・在宅の患者が対象であり、入院中の患者には算定できません。

まとめ|地域を問わない質の高い腹膜透析へ

今回の改定により、腹膜透析を導入する基幹病院とかかりつけ医の役割分担が明確になり、報酬の再設計を通じて医療機関間連携が推進されます。施設基準の届出や「一連の治療につき2回まで」といった要件を正しく理解し、適切に運用することが求められます。専門医が不足する地域でも、患者が身近なかかりつけ医のもとで質の高い管理を受けられる体制づくりが期待されます。

本記事の内容は、ポッドキャスト番組でも詳しく解説しています。音声での解説は、LISTENのエピソードからお聴きいただけます。

よくある質問(FAQ)

在宅自己腹膜灌流指導管理料2は、誰がどのような場合に算定できますか?
管理料2は、連携先の基幹病院が算定します。管理料1を算定するかかりつけ医の求め(依頼)に応じて、頻回な指導管理が必要なCAPD患者に対して指導管理を行った場合が対象です。算定には施設基準の届出が必要で、回数は一連の治療につき2回までに限られます。
管理料1の「月2回まで」と管理料2の「一連の治療につき2回まで」は何が違いますか?
数える期間の単位が異なります。管理料1の頻回指導は同一月内で2回までで、月が変わればリセットされます。一方、管理料2は一連の治療(ひとつの治療エピソード)につき2回までで、月をまたいでも通算します。混同すると算定エラーにつながるため注意が必要です。
管理料2は入院中の患者にも算定できますか?
いいえ。算定対象はCAPD(在宅自己連続携行式腹膜灌流)を行う入院中以外の患者に限られます。外来や在宅の患者が対象で、入院中の患者には算定できません。