令和8年度診療報酬改定で、服用薬剤調整支援料2が1,000点になります。現行の90点・110点から、およそ9倍から11倍の引き上げです。ただし、点数だけを見て算定計画を立てると、実務で行き詰まります。算定できる薬剤師が研修修了者に限られ、回数にも二重の上限がかかるためです。
この記事では、薬局の管理者と医療機関の連携担当者に向けて、「誰が」「何をすれば」「どれだけ」算定できるのかを順に整理します。あわせて、令和9年6月1日の施行までに動かすべき準備も示します。
- 服用薬剤調整支援料2は何がどう変わるのか
- なぜ1,000点なのか|評価軸が「減薬数」から「質」へ移った理由
- 誰が算定できるのか|研修を修了したかかりつけ薬剤師に限定
- 何をすれば算定できるのか|6つの実施事項と算定の起点
- いくら増えるのか|月4回・6月に1回の上限が意味すること
- 令和9年6月1日までに準備すべき3つのこと
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
服用薬剤調整支援料2は何がどう変わるのか
変更点は9項目あります。矢印の左が現行、右が改定案です。
- 点数:イ110点・ロ90点 → 1,000点に一本化
- 実施者:保険薬剤師 → かかりつけ薬剤師(研修修了者に限る)
- 対象患者:複数医療機関から6種類以上の内服薬が処方されていたもの → 複数医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者
- 算定の起点:患者又はその家族等の求め → 変更なし
- 把握の方法:一元的に把握 → 継続的及び一元的に把握
- 提案の前提:重複投薬等が確認された場合 → 服用中の薬剤の調整を必要と認め、必要な評価等を実施した場合
- 提案の内容:重複投薬等の解消に係る提案 → 服用中の薬剤の調整に係る提案
- 算定回数:3月に1回 → 同一患者につき6月に1回、かつかかりつけ薬剤師1人につき月4回まで
- 施設基準:重複投薬等の解消に係る実績 → 削除
なお、調剤基本料の注2に規定する別に厚生労働大臣が定める保険薬局で算定できない点は、現行から変わりません。
なぜ1,000点なのか|評価軸が「減薬数」から「質」へ移った理由
厚生労働省は見直しの理由を、「必ずしも服用薬剤数の削減によらない服用薬剤調整支援の手法が策定されている状況を踏まえ」たものと説明しています。何種類減らしたかを問う評価から、どのように薬物治療を適正化したかを問う評価へ、軸が移ったということです。
背景には、減薬中心の評価が抱えた限界があります。中医協の資料によれば、服用薬剤調整支援料等の算定回数は経時的に増加してきました。それにもかかわらず、令和2年時点で75歳以上であった患者の服用薬剤数を5年間追跡すると、増加傾向を示していました。算定件数が伸びても、多剤服用そのものは減っていなかったことになります。
一方で、質に着目した手法は具体化しています。高齢者医薬品適正使用検討会は、「服薬簡素化提言」に基づく服薬の集約化を紹介しました。あわせて、「日本版抗コリン薬リスクスケール」のように、抗コリン作用を持つ薬剤の負荷を評価してリスクを下げる手法も示しています。いずれも、薬剤数を無理に減らさずに薬物治療の安全性を高める考え方です。
誰が算定できるのか|研修を修了したかかりつけ薬剤師に限定
算定できるのは、患者の服薬状況等に係る総合的な管理及び評価を行うために必要な研修を受けた、かかりつけ薬剤師だけです。現行のように、保険薬剤師であれば誰でも算定できるわけではありません。
研修の水準は、留意事項通知で規定される予定です。示されている内容は、相当程度の保険薬局勤務年数を持ち、極めて高度な水準の専門性を有する薬剤師であって、ポリファーマシー対策に関する十分な時間の研修を受講した者、というものです。
この限定と引き換えに、薬局単位の実績要件は不要になります。現行では、重複投薬等の解消に係る実績を持つ薬局が110点、それ以外が90点でした。改定後は、この施設基準(十一の二)が削除されます。評価の単位が、薬局という「場所」から薬剤師という「個人」へ移った、と読み取れます。
何をすれば算定できるのか|6つの実施事項と算定の起点
算定に必要な実施事項として、6項目が示される予定です。留意事項通知で規定されるもので、現時点では確定した要件ではありません。
- ア 薬物治療に関する患者又はその家族等からの主観的情報の聴取
- イ 検査値等の薬物治療に必要な客観的情報の収集
- ウ 服薬支援に必要な患者の生活状況及び意向に関する情報の聴取
- エ 各服用薬剤がもたらす治療効果及び有害事象の評価
- オ 解決すべき薬剤関連問題の特定及び整理
- カ 服用薬剤調整後の観察計画及び対応案の立案
医療機関との連携という観点で重い意味を持つのが、イの検査値です。患者から提供を受けるか、処方元と情報を共有する仕組みがなければ、収集は簡単ではありません。カの観察計画も、調整後の経過をどう共有するかという運用設計を伴います。1,000点という評価は、こうした手間を含んだものと考えられます。
見落としやすいのが、算定の起点です。改定後も、患者又はその家族等の求めに応じて実施することが要件です。薬局側が対象患者を見つけて働きかけただけでは、算定できません。
いくら増えるのか|月4回・6月に1回の上限が意味すること
算定回数には、患者単位と薬剤師単位の二重の上限がかかります。同一患者に対しては6月に1回まで、かかりつけ薬剤師1人につき月4回までです。
この2つを掛け合わせると、増収の上限が見えてきます。1人の薬剤師が算定できるのは月4回までですから、上限は月4,000点です。1点10円で換算すると、薬剤師1人あたり月4万円、年間48万円が理論上の最大値になります。実際には、患者側からの求めが起点である以上、毎月4件を安定して確保できるとは限りません。
なお、この上限は薬剤師1人あたりの数字です。要件を満たすかかりつけ薬剤師が複数いれば、薬局全体の上限はその人数分になります。
点数が高いからといって、算定を積み上げて収益を伸ばせる構造にはなっていません。この項目は、収益源というより、薬剤師の専門性に対する評価と位置づけて準備するのが現実的です。
令和9年6月1日までに準備すべき3つのこと
適用日は令和9年6月1日です。今回改定の多くの項目が令和8年6月に適用される見込みであるのに対し、本項目の適用は約1年後ろ倒しされます。資料に理由の記載はありませんが、研修の受講が要件である以上、体制整備の期間を確保したものと考えられます。
第1に、対象となる薬剤師の選定と研修受講の計画です。第2に、かかりつけ薬剤師として関与する患者のうち、複数医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者の抽出です。第3に、医療機関から検査値を入手する流れの構築と、調整後の観察計画を記録する様式の整備です。
ただし、研修の実施主体も時間数も、現時点では示されていません。詳細の確定を待ちながら、動かせるところから着手する必要があります。
よくある質問(FAQ)
- 服用薬剤調整支援料1も見直されるのですか。
- 今回の個別改定項目が見直しの対象としているのは、服用薬剤調整支援料2のみです。服用薬剤調整支援料1については、改定案にも現行欄にも記載がありません。ただし他の改定項目や告示全体での取扱いは別途確認が必要です。
- 研修はどこで受けられますか。
- 研修の実施主体や時間数は、現時点では示されていません。厚生労働省は、相当程度の保険薬局勤務年数と極めて高度な水準の専門性を持つ薬剤師であって、ポリファーマシー対策に関する十分な時間の研修を受講した者に限る旨を、留意事項通知で規定する予定としています。詳細は通知の発出を待つ必要があります。
- 薬剤数を減らさなくても算定できますか。
- 改定案では、提案の内容が「重複投薬等の解消に係る提案」から「服用中の薬剤の調整に係る提案」に変わります。見直しの基本的な考え方も、必ずしも服用薬剤数の削減によらない支援手法を踏まえたものとされています。減薬の実施が算定の絶対条件と読める規定はありませんが、具体的な取扱いは留意事項通知で確認してください。
まとめ
服用薬剤調整支援料2の1,000点は、薬局の実績ではなく薬剤師個人の専門性に対する評価です。研修修了者に限定され、月4回という上限がかかるため、収益インパクトは点数比ほど大きくありません。それでも、検査値などの客観的情報を集め、調整後の経過まで見届ける業務が制度上評価された意味は小さくないと考えます。令和9年6月1日までの1年をどう使うかが、算定の可否を分けます。
本件に関する詳細な議論や背景については、LISTENのポッドキャストエピソードでも解説しています。併せてご活用ください。