病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】健診後の初診料・再診料はどう算定?通則13〜17を実務目線で解説

健診を受けた患者がその場で異常を指摘され、保険診療に切り替わるケース。よくある場面ですが、「初診料は取れる?取れない?」「再診料はどうなる?」と請求時に迷ったことはないでしょうか。

令和8年度診療報酬改定では、健康診断・検診・予防接種等(以下「健診等」)の受診後における初診料・再診料・外来診療料(以下「初再診料等」)の算定ルールが、通則13〜17の新設により明確化されます。本記事では、この改定内容を早見表・4つの実例・FAQの3ステップで、実務目線でわかりやすく整理します。

一目でわかる|算定可否の早見表

まず全体像を整理します。改定後のルールは次のとおりです。

ケース 初診料 再診料・外来診療料 根拠
健診と同日・1回の受診で保険診療 × × 通則14前段
健診後、別の受診として保険診療 × 通則14後段
健診後の検査(計画外と客観的に明らか) 保険給付対象 通則16
健診後の治療開始 保険給付対象 通則17

「同日1回受診」か「別の受診」かが、算定可否を分ける最大のポイントです。

なぜ今、明確化が必要だったのか

現行の通則では、健診後に保険診療を行う際の初再診料等の算定ルールが明文化されていませんでした。このため、現場の請求業務では判断に迷うケースが多く、医療機関ごとに取扱いが異なる状況が生じていました。

自費の健診と公的保険の治療が混在する場面では、患者への請求の透明性も課題となります。今回の明確化は、基本料金の重複請求を防ぐとともに、医療機関と患者の双方にとって公平な制度運用を実現する狙いがあります。

具体的な4ケースで考える算定ルール

ケース1|健診当日、その場で治療を開始した場合

健診を実施した医療機関で、同一日に1回の受診として健診関連疾病の保険診療を行うケースです。例えば、定期健康診断で高血圧を指摘され、そのまま降圧薬の処方を受ける場面が該当します。

このケースでは、初診料・再診料・外来診療料のいずれも算定できません(通則14前段)。すでに健診で患者を診察している状態であり、保険診療として新たな基本料金を算定する余地がないためです。

ただし、検査・画像診断・投薬・注射・リハビリテーション・処置・手術・麻酔・放射線治療・病理診断を保険診療として実施した場合、これらの費用は算定可能です(通則15ただし書き)。基本診療料は取れないが、実施した医療行為そのものの費用は保険でカバーされる、というイメージで押さえておきましょう。

ケース2|健診後、後日改めて受診した場合

健診結果の説明や治療開始のために、患者が日を改めて来院するケースです。健診を実施した医療機関で、健診等とは別の受診機会として保険診療を行う場面が該当します。

このケースでは、初診料は算定できませんが、A001再診料またはA002外来診療料を算定できます(通則14後段)。健診時にすでに患者の基本情報やカルテが作成されているため、初診の要件は満たしません。一方で、改めて医師の診察という独立した時間と労力が発生するため、再診料等は算定対象となります。

ケース3|健診結果を受けて精密検査を実施する場合

健診で疾病の疑いが指摘され、治療方針を確立するために追加の検査を行うケースです。健診後に別途実施される精密検査がこれに該当します。

このケースでは、当該検査が健診等の一環としてあらかじめ計画・予定されていたものではないことが客観的に明らかな場合に限り、医療保険給付の対象として診療報酬を算定できます(通則16)。健診費用に含まれるべき検査と、保険診療として実施する検査を明確に区別する趣旨です。「健診の一環なのか、保険診療なのか」が判断の分かれ目になります。

ケース4|健診結果を受けて治療を開始する場合

健診結果から治療の必要性を認め、治療を開始するケースです。治療継続に必要な薬剤や処置などが該当します。

このケースでは、当該治療に係る費用について、医療保険給付の対象として診療報酬を算定できます(通則17)。ただし、通則14・15により算定できないとされる費用は対象外となる点に注意が必要です。

実務担当者向け|よくある疑問FAQ

Q1. 健診当日に治療を開始した場合、検査や投薬の費用も一切請求できないのですか? 基本診療料(初再診料等)は算定できませんが、保険診療として実施した検査・投薬・処置等の費用は算定可能です。基本料金と医療行為の費用を分けて考えることがポイントです。

Q2. 「別の受診」とは具体的にどのような場合を指しますか? 典型例は別日の受診です。健診結果の説明日や治療開始日を改めて設定した場合が該当します。

Q3. 通則15の「ただし書き」に含まれない費用はありますか? ただし書きで算定可能とされているのは、第3部検査・第4部画像診断・第5部投薬・第6部注射・第7部リハビリテーション・第9部処置・第10部手術・第11部麻酔・第12部放射線治療・第13部病理診断です。これら以外は通則15本文により算定できません。

Q4. 歯科でも同じルールが適用されますか? はい、本改定は歯科においても同様に適用されます。医科・歯科を問わず、新ルールへの対応が必要です。

まとめ|現場が押さえるべき3つのポイント

本改定により、健診後の保険診療における初再診料等の算定ルールが整理されました。実務担当者が押さえるべきポイントは次の3点です。第一に、健診と同日1回の受診では初再診料等を算定できないこと。第二に、別受診であれば再診料・外来診療料を算定できること。第三に、健診後の検査や治療の費用は所定の要件を満たせば保険給付の対象となること。歯科にも同様に適用されるため、医科・歯科を問わず、請求担当者は新ルールの正しい理解が求められます。

なお、本改定の背景や現場への影響については、LISTENのポッドキャストエピソードでも詳しく解説しています。あわせてお聴きください。