令和8年度診療報酬改定では、医療DXの評価が「導入」から「活用」へと大きく舵を切ります。本記事では、外来・入院・調剤・歯科にわたる「医療DX推進体制整備加算等の見直し」を、廃止される加算と新設される加算を軸に整理します。あわせて、現場が押さえるべき実務ポイントと、よくある質問もまとめました。
改定の背景:医療DXは「導入」から「活用」へ
今回の見直しの出発点は、評価の軸足が「導入」から「活用」へ移ることです。オンライン資格確認や電子処方箋は、すでに多くの医療機関へ普及しました。普及が一巡した今、評価されるのは、システムを「入れたこと」ではなく、他機関とデータを「連携・活用すること」です。必要なタイミングで患者の診療情報を取得し、診療に活かす行動が、加算の対象となります。
見直しの3つのポイント
今回の見直しは、評価体系の再編が柱です。要点は、外来・入院の加算再編、診療録管理体制加算の見直し、調剤報酬の改称と要件化の3つです。順に見ていきます。
① 外来・入院の再編:電子的診療情報連携体制整備加算の新設
外来・入院では、2つの加算が廃止され、1つの新加算へ再編されます。廃止されるのは「医療情報取得加算」と「医療DX推進体制整備加算」です。これらに代わり、「電子的診療情報連携体制整備加算」が、初診料・再診料・外来診療料・入院料加算として新設されます。
外来は、月1回を限度に算定します。初診料は施設基準の区分に応じて、加算1が15点、加算2が9点、加算3が4点です。再診料と外来診療料は、いずれも一律2点です。
入院は、入院料加算として入院初日にのみ算定します。点数は加算1が160点、加算2が80点と、外来より高い点数が設定されています(ただし算定は入院初日の1回のみで、外来の月1回とは算定単位が異なります)。入院初日という重要な場面で、患者の過去の診療データが揃っていることが重視されるためです。
歯科でも、同じ考え方で「電子的歯科診療情報連携体制整備加算」が新設されます。初診料は加算1が9点・加算2が4点、再診料は2点です。なお、診療所が初診料・再診料でこの加算を算定する場合、明細書発行体制等加算とは併算定できない点に注意してください。
② 診療録管理体制加算:サイバー要件の移管と区分整理
診療録管理体制加算は、サイバーセキュリティ要件の見直しと、区分整理の2点で変わります。これまで加算1の施設基準にあった「非常時における対応体制」の要件は削除され、新設の電子的診療情報連携体制整備加算(入院)の施設基準へ移されます。セキュリティ体制は、診療録管理体制加算の要件から外れ、新設の入院加算を算定するための要件として位置づけ直されます。
区分も整理されます。現行の3区分は2区分になり、加算1は140点から100点へ、加算2は100点から30点へ引き下げられます。現行の加算3(30点)は廃止されます。
③ 調剤報酬:改称と重複投薬チェックの要件化
調剤報酬では、加算の廃止・改称と、新たな要件の追加が行われます。「医療情報取得加算」は廃止されます。「医療DX推進体制整備加算」は「電子的調剤情報連携体制整備加算」へ改称され、現行の3区分は1区分に統合されて月1回8点となります。さらに、電子処方箋システムによる重複投薬等のチェック体制を有することが、施設基準に追加されます。成分の重複や不適切な飲み合わせをシステムで照合できるため、安全性の向上が期待されます。
経過措置:電子カルテ情報共有サービスは「当面の間」延長
電子カルテ情報共有サービスに係る要件には、経過措置が設けられています。在宅医療DX情報活用加算と電子的調剤情報連携体制整備加算では、当該要件を「当面の間」満たしているものとみなします。ただし、国などが全国で運用を開始した後は、速やかに導入するよう努めることとされています。
現場が押さえるべき実務ポイント
医療機関がまず確認すべきは、自院がどの区分の施設基準を満たせるかです。電子的診療情報連携体制整備加算は、加算1から加算3まで求められる体制が異なります。特に入院では、非常時の対応体制が新加算を算定するための要件となるため、セキュリティ体制の確実な整備が欠かせません。調剤では、電子処方箋システムによる重複投薬チェック体制の有無が、算定可否を分けます。経過措置の対象であっても、全国運用の開始後は速やかな導入が求められるため、早めの準備が安心です。
よくある質問(FAQ)
- 医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算は廃止されるのですか?
- はい。令和8年度診療報酬改定で両加算とも廃止され、新設の電子的診療情報連携体制整備加算へ再編されます。外来では初診料・再診料・外来診療料、入院では入院料加算として算定し、歯科にも同様の電子的歯科診療情報連携体制整備加算が新設されます。
- 電子的診療情報連携体制整備加算は何点算定できますか?
- 外来は月1回を限度に、初診料が加算1で15点・加算2で9点・加算3で4点、再診料と外来診療料は一律2点です。入院は入院初日に限り、加算1で160点・加算2で80点を算定します。歯科は初診料が加算1で9点・加算2で4点、再診料が2点です。
- 診療録管理体制加算のサイバーセキュリティ要件はどう変わりますか?
- 現行の加算1にあった「非常時における対応体制」の要件が削除され、新設の電子的診療情報連携体制整備加算(入院)の施設基準へ移されます。あわせて区分が3区分から2区分へ整理され、加算1は100点・加算2は30点となり、現行の加算3(30点)は廃止されます。
まとめ
今回の改定は、データを「連携・活用」する体制を評価へ組み込む、構造的なシフトです。外来・入院・歯科は電子的診療情報連携体制整備加算へ再編され、診療録管理体制加算は区分が整理され、調剤は改称と重複投薬チェックの要件化が行われます。各医療機関には、新しい施設基準への速やかな対応と、セキュリティ体制の確実な構築が求められます。
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