病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】医科連携訪問加算500点の新設|算定要件・施設基準・併算定の注意点を解説

令和8年度診療報酬改定では、入院患者の口腔管理を充実させる観点から、医科歯科連携に関する新たな評価として「医科連携訪問加算」(500点)が新設されました。この見直しは、歯科診療を行っていない保険医療機関(病院・有床診療所)に入院中の患者に対して、連携する歯科医療機関が歯科訪問診療を行った場合を評価するものです。本稿では、この加算の背景、算定要件、施設基準、および運用上の注意点を解説します。

医科連携訪問加算が新設された背景:入院中の医科歯科連携の停滞

医科連携訪問加算が新設された背景には、入院患者に対する医科歯科連携の停滞があります。

第1に、NDBデータによれば、退院後の歯科受診率は加算算定の有無にかかわらず約9%にとどまっており、多くの入院患者の口腔の課題が十分に対応されないまま退院している現状が浮き彫りになりました。

第2に、歯科診療を行っていない医療機関における体制の不足が挙げられます。これまで、歯科のない医療機関では、入院中の患者に口腔の課題が見つかっても、外部の歯科医療機関に診療を依頼する仕組みや経済的なインセンティブが十分に整備されていませんでした。口腔衛生状態の不良は、術後の感染症リスクを高め、経口摂取に支障をきたすなど、医科の治療そのものに悪影響を及ぼします。こうした課題を解消するため、入院中の口腔管理を歯科訪問診療で担う場合の評価が新設されました。

医科連携訪問加算の算定要件・施設基準・運用上の注意点

医科連携訪問加算を算定するためには、以下の要件と施設基準を満たすことが求められます。

第1に、算定の前提として、歯科診療以外の診療のみを行う保険医療機関からの依頼が必要です。対象となるのは、単に口腔に問題があるだけでなく、口腔状態の課題により医科における治療上の支障が生じている入院患者に限定されます。連携する歯科医療機関の歯科医師が当該病院に出向き、歯科訪問診療を実施した場合に、歯科訪問診療料の所定点数に500点が加算されます。

第2に、施設基準として「連携体制の構築」と「情報共有の体制整備」が求められます。歯科医療機関は、歯科のない医療機関からの依頼に基づき対応する連携体制を構築し、患者の診療情報や口腔状態に関する情報を適切にやり取りできる仕組みを整える必要があります。

第3に、運用上の注意点として、周術期等口腔機能管理料や回復期等口腔機能管理料との併算定はできません。これは評価の重複を防ぐためであり、既存の管理体系に該当しないものの、口腔の課題が医科の治療に影響している入院患者に対するセーフティーネットとして位置づけられています。

まとめ:医科連携訪問加算を活用するために

令和8年度改定で新設された医科連携訪問加算は、歯科診療を行っていない医療機関の入院患者に対する口腔管理を推進し、医科歯科連携を推進するための評価です。対象患者の整理と、地域の医療機関との連携体制・情報共有の仕組みを構築することが、本加算を活用する第一歩となります。これにより、口腔内の健康も含めた全身医療の提供が期待されます。

本件に関する詳細な解説や議論の背景については、LISTENのポッドキャストエピソードでも詳しくお話ししていますので、ぜひお聴きください。