令和8年度診療報酬改定では、歯科疾患管理料が90点に一本化され、SPTとP重防が「歯周病継続支援治療」へ統合され、かかりつけ薬剤師指導料が廃止されます。本稿では、個別改定項目「Ⅱ-3 かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価」のうち、歯科・薬局に関わる⑥⑦⑧の3項目について、変更の要点と背景を整理します。
- 令和8年度改定の3つの背景課題
- 【⑥】歯科疾患管理料・口腔機能管理料の見直し
- 【⑦】SPT・P重防統合と医科歯科連携の強化
- 【⑧】かかりつけ薬剤師の評価体系の再構築
- 3項目を貫く改定思想:シンプル化・対象拡大・連携強化
- まとめ:歯科診療所・保険薬局が準備すべきこと
令和8年度改定の3つの背景課題
第1に、歯科領域においては、複雑な算定要件が課題となっていました。口腔機能発達不全症や口腔機能低下症と診断されながらも、算定要件を満たさず管理料を算定できない患者が多数存在していたためです。具体的には、口腔機能発達不全症の病名で歯科疾患管理料のみを算定している患者が約13万件、口腔機能低下症で同様の状況にある患者が約7.7万件にのぼります。
第2に、歯周病治療においては、従来のSPT(歯周病安定期治療)とP重防(歯周病重症化予防治療)の提供内容が類似しており、評価体系のシンプル化が長年の論点でした。さらに、非外科的な歯周病治療が糖尿病患者のHbA1c値を平均0.30%改善するというメタアナリシスの結果に基づき、医科歯科連携の強化が必要とされていました。
第3に、薬局領域においては、従来のかかりつけ薬剤師指導料等が、意図せずして業務のノルマ化やチェック作業の目的化を招きやすい構造的な課題を抱えていました。患者によるかかりつけ薬剤師の選択という本来の趣旨が浸透していないことも、見直しの契機となっています。
【⑥】歯科疾患管理料・口腔機能管理料の見直し
歯科疾患管理料等の見直しは、3つの管理料の構造変更を伴います。歯科疾患管理料は初診月の80/100減額規定が廃止され、初診月・再診月を問わず一律90点に一本化されます。
小児口腔機能管理料は、現行の一律60点から2区分に細分化されます。口腔機能の評価項目において3項目以上に該当する患者は管理料1(90点)、2項目該当の患者は管理料2(50点)で算定する仕組みです。これにより、従来は管理料を算定できなかった2項目該当の患者にも、口腔機能に特化した管理が提供できるようになります。
口腔機能管理料も同じく、現行の一律60点から2区分に細分化されます。口腔細菌定量検査や咀嚼能力検査等を実施した患者は管理料1(90点)、検査未実施の患者は管理料2(50点)で算定します。これまで定期管理の枠から漏れていた患者への予防ケアの提供が期待されます。
詳細はこちらの記事で解説しています:【令和8年度改定】歯科疾患管理料・口腔機能管理料の3つの変更点を解説
【⑦】SPT・P重防統合と医科歯科連携の強化
継続的・効果的な歯周病治療の推進は、2つの構造変更で実現されます。1つ目は評価体系の統合、2つ目は医科歯科連携の要件化です。
評価体系の統合では、従来のSPTとP重防が「歯周病継続支援治療」として一本化されます。歯数に応じた3段階の点数構造となり、1歯以上10歯未満が170点、10歯以上20歯未満が200点、20歯以上が350点で算定されます。算定対象は「一連の歯周病治療終了後、継続支援が必要な患者」へ拡張され、歯周組織の状態による区分は撤廃されます。
医科歯科連携の要件化では、従来の「歯周病ハイリスク患者加算(80点)」が「重症化予防連携強化加算(100点)」へと再編されます。点数の引き上げと同時に、医科医療機関への診療情報提供が新たな算定要件として追加されます。歯科から治療結果や口腔内状況を医科にフィードバックする双方向の連携プロセスが、算定の前提となります。
詳細はこちらの記事で解説しています:【令和8年度改定】歯周病SPTとP重防が統合|新設「歯周病継続支援治療」の全要点
【⑧】かかりつけ薬剤師の評価体系の再構築
かかりつけ薬剤師の推進は、3つの観点から評価体系が組み替えられます。
第1に、廃止です。従来のかかりつけ薬剤師指導料(76点)と包括管理料(291点)は廃止され、服薬管理指導料へ統合されます。現行で認められている服薬管理指導料の特例(59点算定)も同時に削除されます。
第2に、新設です。かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(3月に1回50点)と、かかりつけ薬剤師訪問加算(6月に1回230点)が創設されます。フォローアップ加算は前回調剤後からの継続的な服薬状況確認に対する評価、訪問加算は患者または家族の求めに応じた患家訪問と情報提供に対する評価です。
第3に、施設基準の再構成です。薬剤師個人の勤務時間要件は週32時間以上から週31時間以上に、在籍期間要件は1年以上から6か月以上に緩和されます。一方で薬局全体の要件として、常勤保険薬剤師の平均在籍期間が1年以上、または管理薬剤師が継続して3年以上在籍していることのいずれかを満たす必要があります。組織としての継続性が新たに担保される構造です。
詳細はこちらの記事で解説しています:【令和8年度改定】かかりつけ薬剤師の評価体系を抜本見直し|指導料廃止・新加算創設・施設基準再編
3項目を貫く改定思想:シンプル化・対象拡大・連携強化
⑥⑦⑧は別々の項目ですが、3つを並べると共通する改定思想が見えてきます。
第1の思想は、構造のシンプル化です。歯科疾患管理料の段階評価が廃止され、SPTとP重防が統合され、複雑なかかりつけ薬剤師指導料が服薬管理指導料へ吸収されます。いずれも「複雑な要件を満たす評価」から「実態と点数を直結させる評価」への転換と読み取れます。
第2の思想は、対象患者の拡大です。算定要件を満たさず管理料を算定できなかった口腔機能発達不全症患者(約13万件)や口腔機能低下症患者(約7.7万件)が、新区分の対象となります。歯周病継続支援治療も、対象が「継続支援が必要な患者」へ拡張されました。
第3の思想は、医科・地域への連携です。歯周病治療ではHbA1cデータを軸とした医科歯科連携が要件化され、薬局ではフォローアップ・訪問という地域への能動的なアプローチが評価されます。
「行為の複雑さ」から「結果のシンプルさ」へ。これが、令和8年度改定を貫く深層の思想です。
まとめ:歯科診療所・保険薬局が準備すべきこと
令和8年度改定におけるかかりつけ歯科医・薬剤師機能の見直しは、個別の処置や形式的な要件から、継続的な管理と組織的なケアの質を評価する方向へと大きく舵を切りました。
歯科診療所においては、口腔機能検査の実施体制の整備、レセコンおよびカルテ記載における残存歯数ベースの管理への移行、医科医療機関との情報提供フォーマットの確立が、当面の優先課題となります。
保険薬局においては、廃止される指導料・包括管理料からのソフトランディング、3ヶ月・6ヶ月という新たな算定サイクルを組み込んだ業務設計、組織定着率を担保する人事・リテンション戦略の見直しが求められます。
新たな算定要件と施設基準を踏まえた診療体制および業務フローの再整備が、2026年4月の施行に向けた喫緊の課題です。
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