令和8年度診療報酬改定で、「心不全再入院予防継続管理料」が新設されました。心不全は、退院後に再入院をくり返しやすい疾患です。本管理料は、急性心不全の入院から退院後の外来までを、一貫して評価します。本記事では、点数の逐条的な確認よりも、なぜこの管理料が必要とされたのかという背景と、医療機関が整えるべき多職種連携の体制に焦点をあてて解説します。
なぜ新設されたのか|心不全「再入院の連鎖」を断つ
本管理料の新設には、再入院予防を地域全体で推進する狙いがあります。その背景は、大きく2つに整理できます。
退院後の継続ケアが患者の心機能を守る
1つ目の背景は、退院後の継続的なケアの必要性です。急性心不全で入院した患者は、退院後に再入院しやすい状態にあります。再入院をくり返すほど、心機能の回復は難しくなります。この「再入院の連鎖」を断つには、退院後も切れ目なくケアを続けることが欠かせません。
多職種による生活指導を「評価」する仕組みへ
2つ目の背景は、多職種連携を支える仕組みの不足です。心不全の管理には、薬物治療だけでなく、療養指導・食事指導・運動指導が欠かせません。しかし従来は、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士が職種を超えて外来患者の生活に介入しても、その取組が評価されにくい状況でした。本管理料は、こうした多職種チームによる生活密着型のサポートを、診療報酬として正当に評価します。
算定の全体像|「イ・ロ・ハ」3区分の要点
本管理料は、入院中の「イ」と退院後の「ロ・ハ」の3区分で構成されます。いずれも、関係学会の「心不全診療ガイドライン」に基づく評価が前提です。具体的には、心機能の評価・原因精査・リスク評価を行います。
入院中の早期介入を評価する「イ」(1,000点)
「イ」は、入院中に1回だけ算定する区分です。点数は1,000点です。対象は、慢性心不全の急性増悪を含む急性心不全で入院した患者です。算定には、入院中の運動療法の実施が要件となります。あわせて、療養指導・食事指導・運動指導を、必要に応じて個別に実施します。対象となる病棟は、一般病棟入院基本料の届出病棟です。または、特定機能病院・専門病院における7対1・10対1入院基本料の届出病棟に限られます。
退院後の継続管理を評価する「ロ・ハ」
「ロ」と「ハ」は、退院後の外来で算定する区分です。いずれも、入院中に「イ」を算定した患者が対象です。算定は、初回算定月から1年を限度に、月1回行います。「ロ」は、多職種の共同による評価と治療を行う区分です。点数は、6回目まで700点、7回目以降225点です。「ハ」は、継続した評価と治療を行う区分です。点数は、6回目まで400点、7回目以降225点です。
併算定の制限とレセプト上の注意点
算定にあたっては、併算定の制限にも注意が必要です。心不全を主病とする特定疾患療養管理料は、本管理料と併算定できません。地域包括診療料も、原則として併算定できません。ただし、慢性心不全以外の慢性疾患もあわせて持つ患者について算定する場合は、地域包括診療料を併算定できます。さらに「ロ」については、外来栄養食事指導料・集団栄養食事指導料・在宅療養指導管理料・心大血管疾患リハビリテーション料を、同一日に算定できません。
算定の前提となる施設基準と体制づくり
施設基準では、多職種の配置と地域連携の体制が求められます。まず、心不全の診療を行う十分な体制が必要です。この体制では、医師・看護師または保健師・薬剤師・管理栄養士を適切に配置します。これらの職種が共同して、心不全の管理にあたります。本管理料を算定するには、こうした院内の多職種連携と、退院後を見すえた地域連携の体制を、あらかじめ整えておくことが重要です。
まとめ|多職種・地域連携の再構築がカギ
心不全再入院予防継続管理料の新設により、患者は入院中の早期介入から退院後の継続管理まで、一貫したケアを受けられるようになります。医療機関にとっては、多職種チームによる介入がシステムとして評価される点が、大きな意味を持ちます。制度のメリットを最大限に活かすには、院内の多職種連携と地域連携の体制を、いま一度見直すことが欠かせません。
本改定の背景や現場の視点については、LISTENのエピソードでも解説しています。あわせてご視聴ください。