病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】救急外来医学管理料の新設|体制に応じた3段階評価とは

令和8年度診療報酬改定で、救急外来医療の評価は大きく再編されました。柱となるのが、新設された「救急外来医学管理料」です。今回の改定を一言でいえば、評価の軸が「対応した結果」への一律の支払いから、「いつでも受け入れられる備え」そのものへの評価へと移ったことにあります。本記事では、この再編の全体像と、医療機関に求められる実務対応を、初めての方にもわかるように整理します。

なぜ救急外来の評価が再編されたのか|改定の背景

今回の再編の出発点は、従来の評価体系が抱えていた2つの課題です。

1つ目は、24時間体制を支えるコストが点数に反映されていなかったことです。従来の夜間休日救急搬送医学管理料は、体制の厚さにかかわらず一律600点でした。しかし、夜間や休日に救急を受け入れるには、医師・看護師や高度な検査機器を常に待機させておく必要があります。この「待機のコスト」が、評価に十分に織り込まれていませんでした。

2つ目は、評価の軸を「個別の行為」から「体制そのもの」へ移す必要があったことです。1件ごとの処置を積み上げて評価するのではなく、質の高い救急医療をいつでも提供できる仕組みを常設しているか。国はこの「備え」を評価する方向へ舵を切りました。

救急外来医学管理料とは|2つの区分と対象患者

新設された救急外来医学管理料は、患者の来院経路によって2つの区分に分かれます。この区分が、今回の評価体系の土台になります。

1つ目は、救急車などで緊急搬送された患者を対象とする「救急搬送医学管理料」です。従来の夜間休日救急搬送医学管理料を抜本的に見直したものにあたります。

2つ目は、救急車によらず夜間・休日に自ら受診した患者を対象とする「夜間休日救急医学管理料」です。ここが大きな変化で、これまで評価が薄かった「歩いて来院する救急患者(ウォークイン)」への対応も、正式な評価対象に加わりました。

施設基準に応じた3段階評価と点数

2つの区分は、それぞれ施設基準の充足度に応じて1から3の3段階に分かれます。段階が上がるほど、求められる人員・設備・実績の水準は高くなります。

段階 主な施設基準 救急搬送
医学管理料
夜間休日救急
医学管理料
1
(最高評価)
経験5年以上を含む専任医師2名以上・専任看護師の常時勤務、血液検査・CT・MRIの常時実施、救急搬送 年1,500件以上(一部地域1,200件以上) 800点 600点
2
(中間評価)
応需時間帯の専任医師・看護師、血液検査・CTの実施体制、救急搬送 年800件以上(一部地域640件以上) 600点 400点
3
(基本評価)
救急病院・救急診療所としての認定 200点 50点

注目すべきは、従来の一律600点との差です。体制の手厚い段階1は従来を上回る一方、段階3は大きく下回ります。つまり、体制を強化するほど収益に直結する構造へと変わりました。

なお、施設基準のうち「地域の救急医療に関する取組」の要件には経過措置があります。届出を行えば、令和8年12月31日までは要件を満たしたものとみなされます。

加算体系の再編|新設・廃止・組み替え

今回の改定では、加算も大きく整理されました。新設だけでなく、廃止や組み替えもあるため、あわせて確認が必要です。

新設された3つの加算

  • 救急外来緊急検査対応加算:24時間の検査体制を評価する加算です。出血・凝固検査や血液化学検査、CT・MRIなどを実施した場合に、施設基準に応じて300点(1)または200点(2)を加算します。
  • 救急時医療情報取得加算:医療DXの活用を評価する加算です。意識障害の患者に対し、救急時医療情報閲覧機能や電子処方箋システムで診療情報を取得した場合に、月1回50点を加算します。
  • 時間外救急搬送加算:時間外対応の負担を評価する加算です。救急搬送医学管理料の算定時に、時間帯に応じて200点〜300点を加算します。

廃止・存続する加算

一方で、現行の救急搬送看護体制加算(400点/200点)は廃止されました。新設の話題だけを追うと見落としやすいため、注意してください。なお、精神科疾患患者等受入加算(400点)は変更なく存続します。

院内トリアージ実施料は「体制加算」へ

院内トリアージ実施料も見直されました。従来は患者1人ごとに算定する独立した300点でしたが、これが「院内トリアージ実施体制加算」50点として、ベースの点数に上乗せする形へ組み替えられました。トリアージを「その都度の行為」ではなく、「常に実施できる体制」として評価する方針への転換です。

医療機関に求められる実務対応

最後に、実務担当者が取るべき対応を整理します。ポイントは、自院の「現在地」を正確に把握することです。

まず、自院の救急搬送件数・人員配置・検査体制を照合し、1から3のどの段階に該当するかを確認します。次に、段階を1つ上げる余地があるかを検討します。人員や検査体制の増強が、上位段階の算定につながる可能性があるためです。あわせて、新設加算の算定要件(検査体制、医療DXの基盤など)を満たしているかを点検し、必要な届出を進めます。

よくある質問(FAQ)

救急外来医学管理料は、これまでの夜間休日救急搬送医学管理料とどう違うのですか?
従来の夜間休日救急搬送医学管理料は、体制にかかわらず一律600点でした。令和8年度改定では、これを見直して救急外来医学管理料を新設し、救急搬送と夜間休日受診の2区分に分けたうえで、施設基準に応じて1から3の3段階で評価する仕組みに変わりました。搬送患者だけでなく、自ら受診した患者も評価の対象に加わった点も大きな違いです。
自院がどの段階(1〜3)で算定できるかは、何を確認すればよいですか?
主に「人員体制」「検査・設備」「年間実績」の3つを確認します。最高評価の段階1は、経験5年以上を含む専任医師2名以上と専任看護師の常時勤務、血液検査・CT・MRIの常時実施体制、救急搬送 年1,500件以上(一部地域1,200件以上)が必要です。中間の段階2は要件がやや緩やかで、基本の段階3は救急病院・救急診療所としての認定で算定できます。
院内トリアージ実施料は、今回の改定で算定できなくなったのですか?
独立した点数としての院内トリアージ実施料(300点)は廃止されました。代わりに、院内トリアージ実施体制加算(50点)として、夜間休日救急医学管理料に上乗せする形へ組み替えられています。トリアージを都度の行為ではなく、常に実施できる体制として評価する方針への転換です。

まとめ

今回の再編は、24時間の救急外来提供体制を評価する救急外来医学管理料の新設が柱です。評価の軸は、「対応した結果」から「いつでも受け入れられる備え」へと移りました。医療機関には、自院の体制がどの段階に該当するかを精査し、適切な届出と運用を行うことが求められます。

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