病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】調剤管理料の再編|28日分で60点と10点に二分

令和8年度診療報酬改定で、内服薬の調剤管理料が4区分から2区分へ再編されます。焦点は「28日分」という1本の線です。この線を境に、評価は60点と10点へ二分されます。

本記事では、なぜこの再編が行われるのか、そして薬局の何が変わるのかを解説します。音声で聴きたい方は、ポッドキャスト番組LISTENのエピソードもあわせてご活用ください。

調剤管理料が4区分から2区分へ再編される理由

再編の理由は、調剤管理料が抱えてきた「看板と中身のねじれ」にあります。

調剤管理料は、令和4年度改定で新設された項目です。それまでの調剤料を再編し、対人業務である薬学的管理を評価する目的で設けられました。ところが新設にあたっては、激変緩和の観点から、旧・調剤料の調剤日数区分がそのまま点数の刻みとして引き継がれています。看板は対人業務、中身は日数の刻み。このねじれが、4年間そのままになっていました。

今回の見直しは、このねじれを解消するものです。改定資料は見直しの趣旨を「対人業務である薬学的管理の質を適切に評価する観点から」と説明しています。日数の細かな刻みを廃し、長期処方かどうかという1本の線へ整理する。これが2区分化の狙いです。

【点数一覧】調剤管理料の点数はどう変わるか

内服薬の調剤管理料は、長期処方(28日分以上)60点と、それ以外(27日分以下)10点の2区分になります。日数区分ごとの変動は次のとおりです。

  • 内服薬 7日分以下:4点 → 10点(+6点)
  • 内服薬 8日分以上14日分以下:28点 → 10点(▲18点)
  • 内服薬 15日分以上27日分以下:50点 → 10点(▲40点)
  • 内服薬 28日分:50点 → 60点(+10点)
  • 内服薬 29日分以上:60点 → 60点(増減なし)
  • 1以外の場合(屯服薬、外用薬など):4点 → 10点(+6点)

ここで注意したいのは、「日数が短いほど下がる」という単純な図式ではない点です。増点となるのは、7日分以下と「1以外の場合」の2つ。減点となるのは、8日分以上27日分以下です。なかでも15日分以上27日分以下の40点減が、最も大きな変動幅になります。

長期処方に該当する29日分以上は、現行も改定案も60点で変わりません。つまり今回の再編は、長期処方の点数を引き上げる改定ではなく、長期処方に該当しない部分を10点へ揃える改定です。28日分が10点増えるのも、点数が引き上げられたからではなく、長期処方の側へ移ったためだと理解すると整理しやすくなります。

28日分の境界移動が生む「50点差」

長期処方の境界は、現行の「29日分以上」から「28日分以上」へ1日前倒しされます。この1日の移動が、現行の点数表に思わぬ亀裂を入れます。

現行の「15日分以上28日分以下」は、一律50点の区分です。この区分が、改定後には2つに割れます。28日分ちょうどの剤は長期処方の60点へ移り、15日分以上27日分以下の剤は10点へ下がります。改定前まで同じ50点だった剤が、施行後には50点差の別区分へ振り分けられるわけです。

自局の収益がどちらへ動くかは、この区分の内訳で決まります。28日分ちょうどの比率が高い薬局は境界移動の恩恵を受け、15日分から27日分が多い薬局は減点の影響を受けます。同じ処方箋枚数でも、日数分布が違えば結果は正反対になります。

調剤管理加算はなぜ廃止されるのか

調剤管理加算も、今回の改定で廃止されます。この加算は、複数の保険医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者に対し、服薬状況を一元的に把握して薬学的管理を行った場合の評価でした。点数は、初回持参時が3点、2回目以降の処方変更時が3点です。

廃止の背景には、構造的な指摘があります。服用薬剤数が多い患者ほど算定機会が生じる仕組みは、減薬を進めるポリファーマシー対策と矛盾するのではないか。この指摘は、令和4年度の新設当初から支払側委員より示されていました。新設時点で算定対象が初回来局時と処方内容の変更時に限定されたのも、この指摘を踏まえた措置です。今回、加算そのものが廃止され、議論に決着がついた形になります。

もう一つの後押しは、簡素化の要請です。答申書附帯意見は、診療報酬体系の複雑化と医療DXの推進を踏まえ、関係者にとって分かりやすい体系となるよう検討を求めています。4区分から2区分への集約も、加算の廃止も、この流れの上にあります。

薬局が施行前に確認すべき2つのこと

薬局が施行前に手を打つべき点は、大きく2つあります。処方日数の分布把握と、レセプトコンピュータの設定変更です。

処方日数の分布を、28日分を境に把握します。 特に、現行の「15日分以上28日分以下」で算定している分について、28日分ちょうどと27日分以下の内訳を出してください。この内訳が分からないうちは、改定後の増減を試算できません。なお、集計は処方箋の枚数ではなく剤数で行う必要があります。調剤管理料は1剤につき算定する点数だからです。

レセプトコンピュータの境界設定を更新します。 長期処方の境界が28日分へ移るため、この設定を29日分のまま運用すると、28日分の剤が本来の60点ではなく10点で算定されます。1剤あたり50点、金額にして500円の差が、設定を見直すまで発生し続けます。改定対応のアップデート後は、28日分の処方で正しく算定されているかを実際のデータで確認してください。

処方日数そのものは動くのか

最後に、今回の再編が処方日数に影響するのかを考えます。結論から言えば、薬局側の点数構造が処方日数を直接動かす関係にはありません。

処方日数を決めるのは、患者の病態を診た医師です。調剤管理料は保険薬局に支払われる点数であり、処方元の医療機関の収入とは連動しません。したがって、28日分の処方が制度的に誘導される仕組みにはなっていません。薬局側が点数を理由に日数変更を働きかけることも、当然ながら適切ではありません。

とはいえ、28日分と27日分のあいだに50点の断層ができることは事実です。長期処方のあり方は、中医協でも継続的な論点となってきました。令和8年度改定でも、長期処方及びリフィル処方箋による処方を適切に推進する観点から、医学管理料の要件と処方箋様式の見直しが行われます。施行後、日数分布に変化が生じるのかどうかは、次の改定に向けたデータとして注視すべきポイントになります。

よくある質問(FAQ)

28日分ちょうどの処方は、長期処方に含まれますか?
含まれます。改定案では「28日分以上」が長期処方に該当し、60点を算定します。現行は「29日分以上」が60点で、28日分は50点の区分でした。したがって28日分ちょうどの剤は、改定により10点の増加となります。
調剤管理料は、処方箋1枚につき算定するのですか?
いいえ、1剤につき算定します。服用時点が同一の内服薬は、投与日数にかかわらず1剤として扱います。また、4剤以上の部分は算定できません。このため、改定による収益変動を試算する際は、処方箋の枚数ではなく剤数で集計する必要があります。
調剤管理加算が廃止されると、多剤併用への対応は評価されなくなるのですか?
調剤管理加算は廃止されますが、多剤併用への対応が評価されなくなるわけではありません。同加算の施設基準は、過去1年間に服用薬剤調整支援料を1回以上算定した実績でした。この服用薬剤調整支援料は存続し、令和8年度改定で要件と評価の見直し対象となっています。

まとめ

令和8年度改定における調剤管理料の再編は、調剤日数の刻みに依存した評価からの脱却を意味します。28日分を境に点数が二分されるため、自局の処方日数分布を知らないまま改定を迎えれば、経営への影響把握が後手に回ります。

まずは、現行の「15日分以上28日分以下」の内訳を剤数で出すこと。次に、レセプトコンピュータの境界設定を28日分へ更新すること。この2つを施行日までに終えておけば、改定後の混乱は避けられます。

なお、算定要件の詳細は、告示・通知の発出後に必ずご確認ください。