病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】がん患者指導管理料イ|算定要件の見直しと2つの変更点

令和8年度診療報酬改定で、がん患者指導管理料イの算定要件が見直されました。ポイントは2つです。1つは、病状の変化で診療方針を話し合う必要が生じた場合に「更に1回」算定できるようになったこと。もう1つは、末期がん患者について「入院中の患者以外」という制限が撤廃されたことです。本記事では、この2つの変更点と背景に加え、医療機関に求められる実務対応を整理します。

令和8年度改定の変更点は2つ|早わかり比較表

まず、何がどう変わったのかを表で確認します。今回の見直しは、算定回数と対象患者の2点に及びます。

項目 改定前 改定後
算定回数 患者1人につき1回のみ 病状変化時は更に1回(最大2回)
末期がん患者の対象 入院中の患者以外に限る 制限撤廃(入院中も可)
制度の狙い 意思決定支援と心理的不安の軽減の推進

この2つの変更を貫く狙いは、診療方針に関する意思決定支援と、患者の心理的不安を軽減する指導の推進です。以下、変更点を1つずつ見ていきます。

変更点①:病状変化時に「更に1回」算定できる

1つ目の変更は、算定回数を柔軟にした点です。改定前は、がん患者指導管理料イを患者1人につき1回しか算定できませんでした。改定後は、これに加えて更に1回算定できます。条件は、病状の変化に伴って診療方針の変更等について話し合いが必要となった場合です。

想定されるのは、治療の途中で生じる重要な意思決定の局面です。たとえば、根治を目的とした治療の後に転移や再発が判明し、根治が困難な状況となったケースが該当します。こうした局面ごとに患者への支援を評価できるため、診断時の1回では拾えなかった継続的な関わりが、診療報酬として認められることになります。

変更点②:末期がん患者の「入院中の患者以外」制限を撤廃

2つ目の変更は、末期がん患者への対象範囲を広げた点です。改定前は、末期の悪性腫瘍の患者への意思決定支援は「入院中の患者以外」に限られていました。改定後は、この「入院中の患者以外」という文言が削除されます。これにより、入院中の末期がん患者に対する意思決定支援も算定の対象となります。

意義は、療養の場を問わず支援を評価できるようになる点にあります。終末期は、精神的な支援や意思決定支援が最も求められる時期です。従来はこの支援を、入院患者には算定できませんでした。制限の撤廃によって、自宅でも病院のベッドでも、必要な支援を制度が取りこぼさずに評価できるようになります。

改定の背景:がんの意思決定は診断時の1回だけではない

見直しの背景には、がん医療の実態と制度の乖離があります。がん治療は、診断時から一直線に進むものではありません。病期の進行や治療効果の変化に伴い、診療方針の変更を検討する局面が繰り返し訪れます。それにもかかわらず、改定前は患者1人につき1回しか算定できず、再発や転移といった重要な局面が評価されていませんでした。

末期がん患者についても、同じ構図がありました。従来、末期の悪性腫瘍の患者への意思決定支援は「入院中の患者以外」に限られていました。そのため、病院で最も不安を抱える入院患者への手厚い支援が、診療報酬として評価されにくい状況にありました。今回の改定は、この2つの乖離を埋め、支援を「点」から「線」へと広げるものです。

医療機関に求められる実務対応

医療機関は、従来の算定要件を満たしたうえで、新しい取扱いを押さえる必要があります。がん患者指導管理料イの算定には、施設基準の届出、医師と看護師の共同、患者の同意、話し合いの内容の文書等による提供といった要件があります。これらは改定後も変わりません。

そのうえで、「更に1回」を算定する際は、算定の根拠を明確にしておくことが大切です。病状の変化と、診療方針の変更等について話し合いが必要となった経緯が後からわかるよう、診療録等に記録しておくと安心です。なお、算定回数の調整規定など細かな取扱いは、今後示される通知や事務連絡で最終的な内容を確認してください。

まとめ

令和8年度改定によるがん患者指導管理料イの見直しは、意思決定支援と心理的不安の軽減を推進するものです。病状変化時の「更に1回」の算定追加と、末期がん患者の「入院中の患者以外」制限の撤廃により、がん治療の複数の局面で必要となる患者支援が、制度として評価されるようになります。医療機関には、これらの要件を正しく理解し、質の高いがん医療および緩和ケアの提供につなげることが求められます。

よくある質問(FAQ)

がん患者指導管理料イは何回まで算定できますか?
原則は患者1人につき1回です。令和8年度改定により、病状の変化に伴って診療方針の変更等の話し合いが必要となった場合は、更に1回に限り算定できます。条件を満たせば、1人につき最大2回まで算定可能です。
入院中の末期がん患者にもがん患者指導管理料イは算定できますか?
令和8年度改定で算定できるようになりました。従来は「入院中の患者以外」に限られていましたが、この制限が撤廃されました。療養の場を問わず、入院中の末期の悪性腫瘍の患者に対する意思決定支援も算定の対象です。
「更に1回」算定できるのはどのような場合ですか?
病状の変化に伴い、診療方針の変更等について患者と話し合う必要が生じた場合です。例えば、根治を目的とした治療の後に転移や再発が判明し、根治が困難な状況となったケースが該当します。

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