病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度改定】後発医薬品調剤体制加算の廃止と新加算27点|85%でも算定不可の落とし穴

令和8年度診療報酬改定では、後発医薬品に関する評価の軸が大きく見直されます。これまでの「後発医薬品調剤体制加算」が廃止され、新たに「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が新設されます。評価の対象が、後発医薬品の「使用割合の達成」から、地域における医薬品の「安定供給体制の維持」へと転換します。

ただし、この見直しは加算の単純な置き換えではありません。後発医薬品の調剤割合が85%以上であっても、新加算を算定できない薬局が生じます。本記事では、自局が算定できるかどうかを判断するために必要な情報を整理します。

後発医薬品調剤体制加算はなぜ廃止されるのか

廃止の背景には、後発医薬品をめぐる2つの現状があります。

第1に、使用促進という目的がほぼ達成されました。薬局における後発医薬品の使用割合は、すでに9割を超えています。加算によって割合を引き上げるインセンティブは、その役割を終えたと判断されました。

第2に、供給不安が現場の業務量を押し上げています。在庫が切れた医薬品を入手するため、薬局は複数の卸売販売業者へ問い合わせを行います。それでも入手できない場合は、他の薬局から融通してもらいます。こうした業務は患者への薬剤交付そのものには表れませんが、地域の医薬品供給を支える不可欠な作業です。この見えにくい業務を診療報酬で下支えすることが、今回の改定の狙いです。

廃止される加算と新設される加算27点

新旧の内容を比較すると、次のようになります。

比較項目 旧:後発医薬品調剤体制加算 新:地域支援・医薬品供給対応体制加算1
評価の対象 後発医薬品の使用割合 安定供給体制と使用割合(85%)
加算の位置づけ 調剤基本料の独立した加算 地域支援体制加算そのものを改称
前提条件 割合を満たせば単独で算定可能 地域支援体制加算の要件が必須

旧加算は、調剤基本料の「注7」に規定された3区分です。調剤割合80%以上で21点、85%以上で28点、90%以上で30点でした。この注7が丸ごと削除され、3区分すべてが廃止されます。

新加算は、地域支援体制加算に安定供給の評価を組み込み、あわせて名称を「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へ変更するものです。医薬品供給の拠点機能を担うことを、名称で明示する形になります。加算1の点数は27点で、調剤基本料への加算として算定します。特別調剤基本料Aを算定する薬局は100分の10に相当する点数となり、調剤基本料の注2に規定する薬局は算定の対象外です。

ここで点数の読み方に注意が必要です。27点は、地域支援体制加算に上乗せされる新しい加算ではありません。改称後の地域支援体制加算そのものの点数です。したがって、廃止される21点・28点・30点と27点を直接引き算しても、増減は求められません。実際の影響額は、地域支援体制加算の点数体系がどう再編されるかによって決まります。この点は別の改定項目(Ⅲ-8-③)で示されるため、あわせて確認してください。

「85%達成でも算定できない」新加算の落とし穴

新加算でもっとも注意すべき点は、旧加算からの単純な置き換えではないことです。

旧加算は、独立した加算でした。調剤割合さえ満たしていれば、地域支援体制加算の届出がなくても算定できました。これに対して新加算は、地域支援体制加算の枠組みの中にあります。したがって、地域支援体制加算に係る要件を満たさない薬局は、新加算を算定できません。

つまり、後発医薬品の調剤割合が85%以上であっても、土台となる要件をクリアできなければ27点は算定できないことになります。この場合、廃止された旧加算の分がそのまま減収となります。自局が地域支援体制加算の枠組みに乗れるかどうかを、まず確認してください。

なお、地域支援体制加算そのものも、別の改定項目で要件が見直される予定です。実績要件の詳細は、あわせて確認が必要です。

新加算の施設基準|通知で示された主な取組

告示の施設基準は、地域における医薬品の安定供給を確保するために必要な体制を有すること、および後発医薬品の調剤割合が85%以上であることの2つです。この「必要な体制」は、通知で10項目に具体化されています。主なものは次のとおりです。

  • 在庫管理:医薬品の安定供給に向けた計画的な調達と在庫管理を行うこと。重要供給確保医薬品のうち内用薬と外用薬について、1か月分程度を備蓄するよう努めること(努力義務)。卸売販売業者に在庫を確保させているだけでは、備蓄に該当しません。
  • 薬局間の連携:他の保険薬局へ医薬品を分譲した実績を持つこと。ただし、同一グループの薬局への分譲は実績に含まれません。
  • 入手困難時の対応:在庫を持つ薬局を探して事前に在庫を確認し、別紙様式を用いて患者へ案内する、処方医へ処方内容の変更可否を照会するなど、適切に対応すること。
  • 卸売販売業者との取引:原則としてすべての品目を単品単価交渉とすること。常に適正な在庫量を維持し、頻回配送・休日夜間配送・急配への過度な依頼を慎むこと。厳格な温度管理を要する医薬品や、在庫調整を目的とした医薬品については返品を慎むこと。
  • 掲示:後発医薬品の調剤を積極的に行っている旨を、薬局の内側と外側の見えやすい場所に掲示すること。

このうち卸売販売業者との取引に関する項目は、流通改善ガイドラインの内容を診療報酬の要件に落とし込んだものです。これまで商慣行として続けてきた発注や価格交渉の方法が、そのまま要件に抵触する可能性があります。

改定施行までに点検すべき4項目

届出に向けて、次の4点を点検してください。

  1. 分譲実績の記録:同一グループ以外の薬局への分譲について、日付・品目・相手薬局名を記録する運用を整える。
  2. 備蓄品目の洗い出し:重要供給確保医薬品の該当品目を特定し、自局の棚にある数量を基準に1か月分程度を確保できているか確認する。
  3. 卸との取引方法の見直し:単品単価交渉になっていない品目を改め、急配や頻回配送に依存しない発注タイミングへ整理する。
  4. 掲示の点検:後発医薬品に関する掲示物が、薬局の内側と外側の両方で見えやすい位置にあるか確認する。

いずれも短期間では整わない項目です。特に分譲実績は、記録の運用が定着していなければ後から作れません。早めの着手をおすすめします。

よくある質問(FAQ)

後発医薬品の調剤割合が85%以上あれば、新加算は算定できますか。
算定できるとは限りません。85%以上は施設基準のひとつにすぎないためです。新加算は地域支援体制加算の枠組みの中に置かれるため、地域支援体制加算に係る要件を満たさない薬局は算定できません。この場合、廃止された後発医薬品調剤体制加算の分がそのまま減収となります。
卸売販売業者に在庫を取り置きしてもらえば、備蓄の要件を満たしますか。
満たしません。通知は備蓄を「当該保険薬局に現に医薬品の在庫を保有していること」と定義しており、卸売販売業者が代わりに在庫を確保している状態は備蓄に該当しないと明記しているためです。重要供給確保医薬品のうち内用薬と外用薬について、自局の棚にある数量を基準に1か月分程度を確保するよう努めてください。
同一グループ内の薬局への医薬品の分譲は、実績に含められますか。
含められません。通知は「同一グループの保険薬局への医薬品の分譲は、当該実績に含めない」と明記しているためです。要件を満たすには、グループ外の保険薬局へ分譲した実績が必要です。日付・品目・相手薬局名を残す記録運用を、改定施行までに整えてください。

まとめ

令和8年度診療報酬改定は、後発医薬品に関する評価の軸を、使用割合の達成から安定供給体制の維持へ転換します。後発医薬品調剤体制加算(21点・28点・30点)は廃止され、地域支援体制加算の枠組みの中に「地域支援・医薬品供給対応体制加算1」27点が新設されます。

重要なのは、これが単純な置き換えではないという点です。調剤割合85%以上を維持していても、地域支援体制加算の要件を満たさない薬局は27点を算定できません。また27点は上乗せの新加算ではなく、改称後の地域支援体制加算そのものの点数です。旧加算の点数と直接比較しても、影響額は求められません。同一グループ内での融通だけでは分譲実績にならず、卸への取り置きも備蓄には該当しません。要件はいずれも、地域全体での連携と自局の実在庫を求める内容になっています。

自局が算定できる位置にいるかどうかを、まず確認してください。そのうえで、分譲実績の記録、備蓄品目の洗い出し、取引方法の見直し、掲示の点検に着手することをおすすめします。

本記事の内容は、ポッドキャスト番組でも詳しく解説しています。ぜひ以下のリンクからお聴きください。

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