病院事務長 岡大徳の実務・制度ナビ|診療報酬改定・施設基準・医療DX

急性期から回復期まで幅広い医療機関で実務を経験し、現在は病院事務長として現場を支える岡大徳が、複雑な制度や専門用語を実務家の視点でわかりやすく解説します。より深い時事考察や最新ニュースはSubstackにて配信中。

【令和8年度診療報酬改定】リハビリテーション総合計画評価料の見直し|書類簡素化の裏にある実質的な点数引き下げ

令和8年度診療報酬改定で、リハビリテーション総合計画評価料が見直されます。この見直しは「書類の簡素化」を軸に、計画書様式の統一、目標設定等支援・管理料の廃止、減算規定の廃止という3つの変更を行うものです。本稿では、これら3つの変更点を整理したうえで、メルマガでは触れていない「医療機関の経営への影響」と「施行に向けた実務対応」に焦点を当てて解説します。

改定の背景:書類簡素化という大義名分

リハビリテーションの現場では、患者ごとに複数の計画書を作成する必要がありました。この複数の計画書が、医療従事者の事務負担を重くしてきたことが課題です。今回の見直しは、計画書の様式を統一し、作成の手間を減らすことを目的としています。

ただし、注意すべき点があります。手続きの簡素化と同時に、評価料の算定要件も大きく変更されています。資料が示す趣旨はあくまで「書類の簡素化」ですが、算定できる点数という観点では、医療機関にとって実質的な引き下げと受け取れる側面があります。簡素化のメリットだけでなく、この収益面の変化を見落とさないことが重要です。

3つの変更点を整理する

今回の改定は、大きく3つの変更で構成されます。いずれも、脳血管疾患等・廃用症候群・運動器の3つのリハビリテーション料すべてに共通して適用されます。順に見ていきます。

変更1:計画書様式の統一と評価料の区分新設

1つ目の変更は、計画書様式の統一と評価料の区分新設です。複数の計画書の様式が統一され、書類作成の負担が軽減されます。あわせて評価料には、これまでなかった「初回」と「2回目以降」の区分が新設されました。

点数は、次のとおり変更されます。

  • リハビリテーション総合計画評価料1:現行の一律300点から、初回300点・2回目以降240点へ(2回目以降は60点減)。
  • リハビリテーション総合計画評価料2:現行の一律240点から、初回240点・2回目以降196点へ(2回目以降は44点減)。

評価料1・2ともに、初回の点数は据え置かれます。一方で、2回目以降の点数だけが引き下げられます。資料上、この区分新設の理由は明示されていません。ただし結果として、2回目以降を算定するほど、現行より得られる点数が少なくなる構造です。

変更2:目標設定等支援・管理料の廃止

2つ目の変更は、目標設定等支援・管理料の廃止です。この管理料は、介護保険によるサービスの利用が必要と思われる患者に対し、リハビリの目標設定を支援するものでした。今回の改定で、この区分そのものが削除されます。

現行では、要介護被保険者等の患者に対し、3月に1回に限り、初回250点・2回目以降100点が算定できていました。改定後は、これらの点数を一切算定できなくなります。長期にわたるリハビリを提供している医療機関ほど、収益への影響が大きくなる部分です。

変更3:減算規定の廃止

3つ目の変更は、減算規定の廃止です。管理料の廃止に伴い、同管理料を算定していない患者への減算規定もなくなります。

現行の減算規定は、要介護被保険者等の患者を対象としていました。具体的には、発症・手術・急性増悪・最初の診断から60日を経過した後も引き続きリハビリを行う場合に適用されます。このとき過去3月以内に管理料を算定していなければ、所定点数が100分の90に減算される仕組みでした。改定後はこの判定がなくなり、60日経過後もそのままリハビリテーション料を算定できます。算定プロセスが簡素になり、ペナルティの進捗管理から解放されます。

経営への影響:メリットと代償

今回の見直しは、現場にメリットと代償の両方をもたらします。メリットは、事務負担の軽減です。計画書作成の工数が減り、減算ペナルティの進捗管理も不要になります。一方の代償は、算定できる点数の純減です。2回目以降の評価料引き下げと、管理料の喪失が同時に起こります。

特に影響が大きいのは、長期リハビリを多く提供する医療機関です。2回目以降の算定が積み重なるほど評価料の引き下げが効いてきます。さらに、要介護被保険者等への管理料がなくなることで、月次の収益にも下押し圧力がかかります。簡素化によって浮いた事務工数を、別の収益機会へどう振り向けるか。提供体制そのものを見直す視点が求められます。

施行に向けた3つの実務対応

施行に向けて、医療機関が準備すべき実務対応は3つあります。早めに着手することで、施行後の混乱と減収を抑えられます。

  1. レセコン・電子カルテの改修:評価料の「初回」と「2回目以降」を自動で振り分ける設定を、施行前に完了させます。
  2. 既存患者リストの監査:管理料の消失による自院の月次減収インパクトを、患者リストをもとに正確に試算します。
  3. 収益モデルの再構築:算定回数や人員配置を見直し、令和8年度の施行に向けて経営戦略をアップデートします。

まとめ

今回の見直しは、書類の簡素化で事務負担を軽くする一方、2回目以降の評価料引き下げと管理料の廃止により、算定できる点数のパイが縮小する内容です。減算規定の撤廃で手続きの自由度は上がりますが、経営的には、これまでの収益をどう補うかという課題が残ります。あわせて、この簡素化が患者へのリハビリの質や時間にどう影響するのかも、今後注視すべき論点です。

よくある質問(FAQ)

リハビリテーション総合計画評価料は、結局いくら下がるのですか?
初回の点数は据え置きで、下がるのは2回目以降です。評価料1は一律300点から2回目以降240点へ60点の引き下げ、評価料2は一律240点から2回目以降196点へ44点の引き下げとなります。初回は評価料1が300点、評価料2が240点で現行どおりです。
目標設定等支援・管理料の廃止は、どの患者が対象ですか?
介護保険によるサービスの利用が必要と思われる要介護被保険者等が対象です。現行では3月に1回に限り初回250点・2回目以降100点を算定できましたが、改定後はこの区分が削除され算定できなくなります。脳血管疾患等・廃用症候群・運動器の3つのリハビリテーション料すべてに共通する変更です。
減算規定の廃止で、現場の手続きはどう変わりますか?
発症等から60日経過後に「過去3月以内に管理料を算定したか」を確認する必要がなくなります。現行では未算定の場合に所定点数が100分の90に減算されましたが、管理料そのものが廃止されたためこの判定は不要になり、60日経過後もそのままリハビリテーション料を算定できます。

本件のより詳細な解説や、政策の裏側にある意図の読み解きについては、以下のポッドキャストでも深掘りしています。ぜひお聴きください。

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